東大院教授が受験生から「100万円」もらって解雇!「収賄罪」にならないの?

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2014年05月02日 11:30  弁護士ドットコム

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東京大学大学院の男性教授が、大学院の入試をめぐり、大学の名誉・信用を著しく傷つける行為をしたとして、諭旨解雇された。大学によると、元教授は2010年、教授就任のご祝儀として、知人から100万円を受け取った。その後、知人が東大の大学院を受験すると知ったが、100万円を返還しなかったという。


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元教授はこの知人に対し、2011年の同大学院入試で「何らかの優遇を受けられるかのように思わせる態度」をとっていた。しかし、試験の出願時期になると、態度をひるがえして、院生として受け入れるのは難しいと告げた。知人が受験した際には、口述試験の試験委員として質問し、採点にも関与したという。



不合格となった知人が、学内のハラスメント防止委員会に訴えて発覚した。大学側は「入試で便宜を図っていない」として、元教授を刑事告発しない方針というが、この行為は何の犯罪にもならないのだろうか。刑事事件にくわしい神尾尊礼弁護士に聞いた。



●便宜を図っていなくても「収賄罪」は成立する


「賄賂を受け取る犯罪の中で、基本となるのが『単純収賄罪』です。



単純収賄罪は、(1)公務員が、(2)その職務に関して、(3)賄賂を要求したり受け取ったりなどすることで成立します」



大学によると、教授は入試で便宜を図っていないので「刑事告発しない」ということだが・・・?



「この元教授は、実際に便宜を図ってはいないようです。しかし、先に述べた条件に『便宜を図った』ことは含まれていません。



つまり、便宜を図っていなくても、条件を満たせば、単純収賄罪が成立する可能性があるのです。



なお、仮に便宜を図ったとしたら、『加重収賄罪』という、単純収賄罪よりも重い罪が成立する可能性があります」



●元教授の行為は「3つの条件」を満たす?


元教授の行為は、単純収賄罪の(1)〜(3)の条件を満たすのだろうか?



「まず、国立大学教授は公務員ではありませんが、「みなし公務員」として、収賄罪の適用を受けます」



条件(1)はクリアされるようだ。



「次に(2)職務関連性ですが、職務と全く関係のないところで公務員がお金をもらっても、公正や信頼を害することにはならないので、賄賂にはなりません。したがって、収賄罪が成立するには、職務と関連していることが必要です。



ただ裁判上、職務関連性はかなり広く認められています。一般的抽象的な権限があれば足りますし、本来の権限ではなくても密接に関連していれば職務関連性が認められます。



本件では、具体的な内部の権限分配は分かりませんが、口述試験の試験委員として関わっているなどの事情からすれば、職務関連性は認められる可能性はあります」



(3)はどうだろうか。名目は「ご祝儀」だったようだが・・・。



「賄賂性については、社交儀礼の範囲内であれば、賄賂ではないとする説が有力です。



ただ、教授就任の『ご祝儀』としても、100万円はかなりの大金であり、賄賂性は否定しにくいと思われます。



このように考えると、元教授に単純収賄罪が成立する可能性はあるといえるでしょう」



そうなると、なぜ大学が告発をしなかったのかが気になるが・・・。



神尾弁護士は「大学が刑事告発しない方針を出したのは、元教授をすでに解雇したことや、便宜を図っていないことなどを、総合的に判断した結果だろうと思われます」と推測していた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
神尾 尊礼(かみお・たかひろ)弁護士
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。刑事事件から家事事件、一般民事事件や企業法務まで幅広く担当し、「何かあったら何でもとりあえず相談できる」事務所を目指している。
事務所名:彩の街法律事務所
事務所URL:http://www.sainomachi-lo.com/index.html



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