「治療」と称して性行為した医師が逮捕された・・・「準強姦罪」ってどんな罪?

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2014年05月18日 14:10  弁護士ドットコム

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「あなたの治療には性行為が必要だ」――。そんな言葉で女性患者を信用させ、性的暴行を加えたとして、東京都内にある病院の救急科に勤める男性医師がこのほど、逮捕された。


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報道によると、この医師は3月上旬、女性宅へ訪問診療を行った際、治療と称して性的暴行をした疑いが持たれている。警察の調べに対し、医師は「医療行為として合意の上でやった」と話し、容疑を否認しているという。



今回の逮捕容疑は「準強姦罪」だというが、これはどのような犯罪なのだろうか。一般の「強姦罪」とは、どう違うのか。長谷川裕雅弁護士に聞いた。



●強姦罪は「レイプ」のこと


「『強姦罪』は、暴行・脅迫を用いて、女性を姦淫した場合に成立します。いわゆるレイプがこれに当たります。



また、13歳未満の少女を姦淫すると、暴行・脅迫なしでも、つまり、相手の同意があったとしても強姦罪となります」



この場合の「姦淫」とは、いわゆる性交のことだ。



●準強姦罪になる条件とは?


それでは、準強姦罪とは何だろうか。



「『準強姦罪』は、女性の心神喪失や抗拒不能に乗じて姦淫した場合、または、女性を心神喪失・抗拒不能にさせて姦淫した場合に成立します」



難しい言葉が出てきたが、それぞれどういう意味だろうか。



「まず、『心神喪失』は、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態のことです。



次に、『抗拒不能』とは、抵抗ができない状態、もしくは抵抗するのが著しく困難な状態をいいます」



それぞれ具体的にはどんな状態なのだろうか?



「『心神喪失』はたとえば、泥酔状態にある場合ですね。女性が正常な判断力を失った状態といえるからです。



一方、『抗拒不能』はさまざまな状況が当てはまり、物理的・身体的な意味だけではなく、心理的・精神的な意味で抵抗できない場合も含みます」



●「強姦罪」と「準強姦罪」――罪の重さは同じ


それでは、医師が「治療に必要だ」と患者に信じ込ませて、性行為を行った場合はどうなるのだろうか。



「被害者が『治療に必要だ』という医師の言葉を誤って信じ、それが治療行為だと思い込んだとしたら、医師の行為を拒むことは心理的にも物理的にも著しく困難な状況といえるでしょう」



そういった状態は「抗拒不能」といえるということだ。では、今回報道されているような医師の行為が犯罪とされるかどうかのポイントは、どのような点だろうか?



「報じられている医師の行為が準強姦罪にあたるかどうかは、次のような事情を総合的に考慮して、判断されることになるでしょう。



(1)姦淫行為に付随する行為が治療としての意味を持つのか


(2)被害者と医師との関係


(3)被害者が医療行為と誤信した理由やその相当性


(4)医師の具体的行為


(5)被害者が不信感を抱いたかどうか」



なお、準強姦罪は、名前に『準』という言葉が含まれているため、強姦よりも程度が軽いようにも思えるが、罪の重さに違いはないのだという。



長谷川弁護士は「強姦罪・準強姦罪どちらも法定刑は3年以上の有期懲役です。強姦・準強姦のいずれに該当するかは程度の問題ではなく、暴行・脅迫の手段を用いたかどうかで区別されているのです」と話していた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
長谷川 裕雅(はせがわ・ひろまさ)弁護士
早稲田大学卒業後、朝日新聞記者。男女間のトラブルを幅広く取り扱う。テレビ・新聞・雑誌の事件解説多数。著書に「なぜ酔った女性を口説くのは『非常に危険』なのか?」(プレジデント社刊)など。
事務所名:東京弁護士法律事務所
事務所URL:http://danjotrouble-bengo.com/



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