3Dプリンターを利用して製造した殺傷能力のある拳銃を所持していたとして、大学職員が銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)違反(所持)容疑で逮捕されました。
銃刀法は、殺傷能力を有する「銃砲」の所持を禁止しており、この大学職員が製造した拳銃が、そのような能力を有するのであれば、逮捕の妥当性は認められるでしょう。
今回の事件から「3Dプリンターは危険」「法制度が追いついておらず、規制すべき」という一部報道がなされ、古屋国家公安委員長も3Dプリンターの販売時のルール作りや法規制の必要性を検討する考えを示したとのことです。
拳銃の製造が可能な機械を法規制するというのであれば、金属加工工場の機械類も全て対象とする必要もありそうですが、3Dプリンターは、特殊な加工技術が無くても、3Dプリンター用の「銃の設計図」を入手して入力すれば誰でも同様のものが作れるという特殊性があるため、何らかの規制をしなければ3Dプリンター製の拳銃が蔓延してしまうという危機意識が規制の検討という議論になっているのだと思います。
このニュースを初めて知ったときの感想は、「樹脂製で本当に殺傷能力のある銃が作れるのか?」ということだったのですが、1発だけであれば銃弾を発射できるようです(ただし,その1発で銃の内部が破壊されてしまうので2発目は発射できないし、1発目でも拳銃の暴発の危険があるということです)。いわば、その程度の銃の製造をすることが可能というだけで3Dプリンター自体を規制することは、率直に言って全くナンセンスで、このような議論が起きること自体が不思議な感じがします。
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拳銃の製造に関しては、武器等製造法や銃刀法といった法律によって殺傷能力のある銃の製造や所持が規制されているので、その前の段階の3Dプリンター取得等に規制をかける必要性は認められません。また、前述の「銃の設計図」を配布するような行為も、武器等製造法違反の幇助罪として処罰することは可能でしょうから、「銃の設計図」が無限定に拡散される恐れもないと考えて良いでしょう。
実際に本件でも現行法の規定によって検挙ができたのですから、危険物の製造が容易にできるという観点で3Dプリンターに法規制をするだけの立法事実が存在するとはいえないと思います。
私たちの社会は個人の行動の「自由」が前提にあって、それを放置すると社会や他者に何らかの害悪を及ぼすという場合に初めて規制をすることが認められるというのが法律の原則です。その視点から考えても、3Dプリンター取得の時点で何らかの法規制を行うということは、自由に対する過剰な規制と言わざるを得ないでしょう。
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