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AKB48のシングルCDを歌うメンバーを決める「AKB選抜総選挙」。その開票が6月7日に迫っている。第6回となる今回は、HKT48の指原莉乃(さしはら・りの)さんが史上初めて連覇を果たすかどうかが注目されている。指原さんは5月21日の速報(中間発表)では1位となっている。
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そんな指原さんだが、ツイッター上の匿名アカウントから、「おい、ブス原!てめえなんか生きてる価値ねぇんだよ! 味の素スタジアムで死んでください!」という暴言ツイートを受けた。それに対し指原さんは「そんなこといったらあなたの推しメンは悲しいよ」と返信した。
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暴言を吐いたアカウントはすでに削除されているが、こうした騒動はツイッター上で頻繁におきている。このように匿名アカウントからあまりにもひどい中傷を受けた場合、法的な手段でやめさせることはできるのだろうか。ネットの中傷問題にくわしい石井邦尚弁護士に聞いた。
「単に投稿を削除してほしいだけなら、投稿をした人よりも、サービス提供者に対して削除を求めるほうが、簡単で早いケースが多いと思います」
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このように石井弁護士は切り出した。
「最近のSNSや掲示板サービスだと、ユーザーが違法な投稿等について報告し、運営側に削除を求めることができる仕組みを設けているものも多くなっています。まずは、その仕組みを利用するのが一番簡単です。
ただ、この仕組みだと、実際に削除するかどうかは、あくまでもサービス運営者が自ら判断する形なので、法的な強制力はありません」
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では、法的に「要求する」ことはできるのだろうか?
「サービス運営者に対して法的強制力がある手続きとしては、投稿等の削除を求める『仮処分』を申請したり、訴訟をおこすことになりますね。こうした削除要求は、過去にも認められた例があります」
それでは、投稿者の責任を直接問う場合は?
「名誉毀損やプライバシー権侵害にあたる違法な投稿に対しては、民法上の不法行為責任(民法709条)に基づいて、削除や損害賠償を請求することになるでしょう。
同じ人物から何度も悪質な投稿が繰り返されている場合や、たとえ1回でもあまりに悪質な投稿の場合などは、将来も繰り返される可能性等を考えると、投稿者本人に対する請求を行わざるを得ないこともあります」
そのような請求をするには、どうすればいいのだろう。
「投稿者に対し訴訟をおこす場合には、投稿者本人を『特定』することが必要になります。手間と時間をかけても100%特定できるとは限りませんが、プロバイダ責任制限法を適切に活用するなどすれば、投稿者本人を特定できる可能性は十分にあります。一般に思われているほど、インターネットの匿名性は高くないのです」
今回、指原さんが受けたような中傷表現は、削除や損害賠償の対象になるのだろうか?
「今回のような誹謗中傷の場合、典型的には名誉毀損が問題となります。名誉毀損は、人の客観的な社会的評価を低下させる行為です。今回の投稿は、たしかに下品な中傷ですが、これを誰かが読むことによって、指原さんの社会的評価が低下するかは微妙です。
『性格ブス』『人格チビ』といった記載で、名誉毀損が認められた裁判例もありますが、限界的な事例です。今回の投稿が裁判などで名誉毀損に該当すると判断されるかはわかりません」
「一方で、本人のプライドや自尊心などは、法律用語で『名誉感情』と呼びますが、これを傷つけた場合にも、不法行為責任が認められることがあります。
表現の自由との兼ね合いもあるため、少しでも名誉感情が害されれば直ちに損害賠償というわけではありませんが、名誉感情侵害が許容限度を超えたとして、不法行為責任を認めた裁判例はあります。
はっきり断言はできませんが、話題の投稿について、もしも裁判が起こされた場合、名誉感情侵害による不法行為責任が認められる可能性はあると思います」
石井弁護士はこのように結論付けていた。
攻撃的な表現が限度をこえて、脅迫や名誉毀損にあたるとされれば、場合によっては刑事責任を問われるケースも出てくる。ツイッターでの発言には、ふだんから十分に気をつけたほうがいいだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石井 邦尚(いしい・くにひさ)弁護士
1972年生まれ。専門は企業法務。
小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられず、IT好きがこうじて、IT関連の法務を特に専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。東京大学法学部卒、コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒
事務所名:カクイ法律事務所
事務所URL:http://www.kakuilaw.jp
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