「論文撤回によって『STAP細胞はない』ということになる」(理研改革委会見・下)

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2014年06月13日 20:11  弁護士ドットコム

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理化学研究所の抜本的な組織改革を提言した外部有識者による改革委員会は、6月12日の記者会見で、「STAP細胞の有無についてどう考えるか」という質問を何度も受けた。


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科学者の委員たちは、STAP細胞の存在について懐疑的な意見を示しつつも、「STAP現象があると言った人がやっぱり何もなかったと言わない限り、決着がつかない」と、理研の再現実験によって真偽の決着がつけられることを求めた。



その一方で、岸輝雄委員長は「STAP論文2つを取り下げたら、普通の常識では『ない』ということ」と述べ、小保方晴子ユニットリーダーらが英科学誌「ネイチャー」に投稿した論文が撤回されたら、「STAP細胞は存在していない」と考えるべきだ、という見解を明らかにした。



記者会見の質疑応答のうち、STAP細胞の実験をめぐる主なやりとりは次の通り。



●「STAP細胞」はあったのか?


――理研の遠藤高帆・上級研究員が発表した解析の結果の件。この結果によって、ES細胞の混入の可能性がかなり高まって、STAP細胞の存在自体を疑うレベルと委員会は評価しているのか?



塩見美喜子委員:評価している。遠藤高帆先生はこの領域では有名な先生で、解析は信頼のおけるものであるということ。それから遠藤先生だけではなくて、東工大のあるグループ、それから東大のあるグループも同じような解析をして、同じような結果が出ているということ。それから裏がとれているということで、信ぴょう性はかなり高いと考えている。



――その流れでもう一点、このことによって、STAP細胞の有無についてまで、現時点で、もうすでに評価できるレベルだと委員会として考えているのか?



塩見委員:そのように言えるかと思う。ただ、私たちがいくら言っても仕方ないので、当事者たちが、これに関して、どのようにお考えなのかということを、私たちも聞きたいところだ。



――改革委員会は、結局、STAP細胞がなかったという見方で一致しているのか?



岸輝雄委員長:再現実験をやって「ある」と言った人が諦めるとか、あるいは「STAP現象がある」と言った人がやっぱり何もなかったと言わない限り、決着がつかない。だから、しっかり科学的にやろうという提案だ。



市川家國委員:我々は再現実験を提案している。これからいろんな事実が出てくると、小保方さんは、こちらが提供しても断るのではないかという憶測もある。



また、小保方さんがやって、もしできなかったら、彼女はたぶんこういう言い訳をするんだろうという想像もある。たとえば、「部屋の温度が違った」とか、あるいは「研究条件が悪かった」とか。「以前は成功したんだけど、今回はたまたま成功しなかった」という言い訳もありうるかもしれない。



もし本当にできたなら、科学者であれば、そういう言い訳もなきにしもあらず、ということがある。結論は必ずしもきちっと出るものではない。そこだけちょっと、みなさん覚悟してほしい。



塩見委員:ネイチャー論文2本について、著者の方たちが撤回しようという手続きをしている。ネイチャーもそれに同意して、撤回することになると思うが、そうすると、STAPというものはなくなってしまうと、考えていただければいいのではないか。そうなると、再現実験もしなくていい。ないものは再現できないのだから。



今後、何かストレスをかけることで、リプログラミングできるというのを誰かが発見したときには、STAPという名前ではなくて、その人が新しい名前を付けて発表すれば良い。STAPはじきになくなるのではないか、と私は個人的に考えている。



●実験が「200回成功した」の意味は?


――小保方さんは「(実験に)200回成功した」と言った。どう捉えているか?



市川委員:いくつかのタンパク質が表現されることを、彼女は200回だと主張したんだと思う。その程度のことは事実だと思う。STAP細胞を証明するというのは、あくまで多能性というのだから、キメラをつくって、臓器になったというところまでやるとなると、時間的に非常に難しい。



塩見委員:たとえば、テラトーマ(腫瘍)実験をやったことになっているけども、200回もやっていないだろうと考えられる。なぜかというと、たとえば、マウスの飼育室に入った回数だとか、いつ入ったかというのがモニターされていると思うし、マウスの購入記録と照らし合わせればすぐにわかることだから。想像だけど、ただ「何かをしたら光ったよ〜」ということではないかなと思う。



――STAP細胞の有無について、若山さんや遠藤さんの解析結果はある程度信頼性があって、ES細胞から生まれた可能性が高いという話もあった。そもそも「STAP細胞はなかった」という見解を全体として持っているという認識で良いか?



岸委員長:認識はそうかもしれないが、われわれは「理研がその有無をしっかり証明しろ」と、明記している。ちょっと微妙なところだ、ということをおわかりのうえで質問をされているのだろうけども。



やっぱり、どこかではっきりと、「ないなら、ない」「いやいや、ある」」と言わないと、科学としては成り立たない。それはしっかりとやっていただきたい。本人に何らかのかたちで加わってもらい、ギブアップしないと、「ない」とは言えない。また、出てくるのかもしれない。



ただ、塩見先生が言うように、STAP論文2つを取り下げたら、普通の常識では「ない」ということだ。



――論文を取り下げる理由が、そうではないかもしれない。



市川委員:ネイチャーから論文を取り下げたほうが良いとリコメンドされて、実際に取り下げた場合に、「自分たちはSTAPができたと思うが、いろいろ写真の取り違い等があったり不適切であるから、いったん取り下げる」という意味合いで、取り下げているのかもしれない。その辺は、メディアに明らかにしていただきたい。



●再現実験は中止すべき?


――今の再現実験は「いったん中断しろ」という理解でいいか?



市川委員:中断しろというわけではない。やりたければやってもいいけど、意味がないということだ。そこから出てきた結果は、不正があったかどうかを明確にするものではない。



――ということは、今回提言しているのは、今やっている再現実験と別のラインでやるべきだと?



市川委員:そういうことだ。



●刑事罰にあたる?


――市川先生はどのように?



市川委員:小保方さんがなかなか「間違っていました」と言いにくいところがあるかなと思う。遠藤先生と若山先生のデータは、何を意味するかというと、ES細胞とTS細胞を混ぜたということだ。小保方さんたちは特許を申請をしている。虚偽のデータをもとに特許を申請すると、刑事罰の対象になる。



ここから先の話は素人だが、「故意におこなったこと」が条件になっているから、「故意におこなったのではない」ということを言い続けないといけない。彼女のそういう立場もあるんじゃないか、と。彼女はこれだけいろいろ調べる方法があるということを知らなかった。



竹岡委員:刑事罰の対象になるかどうかは、市川先生の私見というかたちで、受け取っていただいたほうが良いのではないか。一般的な刑事罰の対象にならない。刑事罰の責任とは、切り離してお考えになったほうが良い。特許の話をするのであれば、特許を出願しただけで、特許化されていない。特許化するにあたって、かなりネガティブな事実が出てきたと受け止めるべきと思う。それは理研が判断することだ。



――アメリカの法律だと刑事罰にあたるのでは、という意見もあるように聞いているが、その辺は委員の中でどういう認識か?



市川委員:僕としては、アメリカのバカンティ教授にメッセージを送りたかった。



竹岡委員:この点については、委員会の中では見解が分かれていると理解していただきたい。



――具体的には?



竹岡委員:アメリカ法の刑事罰にあたる行為かどうかということに関して、認識の差がある。提言には踏み込んで書いていない。



(了)


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