日弁連などが開いたシンポジウム「いま司法は国民の期待にこたえているか」(6月20日)には、大学教授や経営者、政治家など各界の論者が登壇して、それぞれが考える「民事司法の課題」を語った。
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日本労働組合総連合会(連合)の新谷信幸・総合労働局長は、労働紛争を解決する有力な手段として、2006年にスタートした「労働審判」システムを紹介。「司法制度改革の最大のヒット商品」と高く評価した。一方で、「弁護士が入ると解決率が上がるが、費用の負担感という問題がある」と、利用にまつわる課題を指摘した。
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今日は労働者の立場から見た現状報告をします。連合は労働組合のナショナルセンターでして、産業別52の組織と、全国47の連合会を組織しています。680万人の組合員がいます。今日は、組合に入っていない方々も含めて、すべての労働者の立場でお話をさせていただきます。
たくさんの労働紛争が起こっています。連合は47都道府県で無料の労働相談電話を開設しており、たくさんの相談が寄せられています。たとえば、新入社員でずっと働いているけれど残業代が全然出ないとか、退職勧奨の話だとか、切迫流産した課長職の女性が職場に戻ったら、就業規則にもない降格を受けたという話もありました。
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我が国の人口は1億2700万人ですが、このうち職業を持っている就業者が6200万人です。自営業とか農林水産業の方もいますが、雇用労働者は5300万人います。その中で紛争が起こっています。
では、個別の労働紛争に対して、どういう解決システムがあるのか。労働行政のシステムや、都道府県の労働委員会による紛争解決システムも動いていますが、いま一番評価が高く、活用が増えているのが、裁判所における「労働審判」というシステムです。
労働審判の一番のメリットは、解決率が非常に高いということです。労働行政や労働委員会に比べて非常に解決率が高く、短期間に結論が出るということで好評です。2006年にできた制度で、司法制度改革の中から生まれた制度です。司法制度改革の中でも最大のヒット商品だと思っています。利用者が急増しています。
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労働審判では、労働紛争が起こったときに裁判所に申し立てをして、裁判官と労使から選ばれた労働審判員の3人で構成される労働審判委員会が、3回の審理で事案の処理を行います。通常訴訟に比べて手数料も安いですし、迅速に結論が出るということで人気が出ています。
件数は、2006年に制度ができた時は900件、2007年が1500件。その後は、リーマンショックによる労働紛争の増加もあるかもしれませんが、件数が増えています。労働審判がなければ、労働者は泣き寝入りしていたかもしれないことが、解決できたと考えています。
ただ、制度にはいろいろな課題もあります。弁護士が入ると、申立人(労働者)も相手方(使用者)も「解決率が上がる」というアンケート調査の結果が出ていて、代理人の果たす役割は重要なのですが、費用の負担感という問題があります。
(弁護士ドットコム トピックス)
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