今年のサマソニで注目すべきアクトは? 小野島大が35組の洋楽アーティストを解説

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2014年07月12日 15:20  リアルサウンド

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リアルサウンド

『SUMMER SONIC 2014』公式HP

 フジロックのタイムテーブルが発表されましたね。「アレとコレがだぶっている」「だぶってはいないけど移動時間を考えたらどっちかを断念せざるをえない」など、それぞれ悲喜こもごもだと思いますが、タイムテーブルを片手に行動予定をあれこれ考えるのもフェスの醍醐味。先日お送りしたフジロック洋楽出演者ガイドを参考に、せいぜい悩んでください。


各アーティストの動画はこちら


 そしてフジの3週間後には、洋楽系フェスとしてフジとは双璧と言えるサマーソニックが開催されます。今年で15回目の開催となるサマーソニックは、土日の2日間開催。のべ動員数だけならフジ以上とも言われています。苗場の山の中で開催される自然共生型のフェスであるフジに対して、いわば都市型フェスであるサマーソニックは、東京(正確には千葉県幕張)と大阪の2都市同時開催で、土日で出演者がそっくり入れ替わる形になります。


 大阪の会場には行ったことがないんですが、東京会場は千葉ロッテマリーンズの本拠地である野外スタジアムのQVCマリンフィールドと、大規模イベントホールの幕張メッセを主な会場として、大小7つのステージが同時進行します。交通の便がよく、都心からでも電車で2時間かからない気軽さは貴重。交通費もかからず宿代も必要ないので、それなりにお金のかかるフジロックに対して年若い観客が多いのが特徴です。コンクリートに囲まれた会場は日中の照り返しがきつく、風情もありませんが、雨にたたられることの多いフジに対して、雨の心配をあまりしなくていいので、フジのような重装備が必要なく軽装で参加できるのは助かります。さまざまな飲食店や企業ブース、マッサージなどの店が雑然と並ぶ幕張メッセ会場は、さながら学園祭のような賑やかさでなかなか楽しい。
 
 アーティストラインナップは、欧米のポップを中心とした勢いを感じさせるもの。特に洋楽ロックの新しい才能のフックアップには熱心で、アーティストチョイスの目利きの良さ、先取りの的確さは定評のあるところです。当初は洋楽ロック系アーティストが主でしたが徐々にR&Bやヒップホップ、邦楽も増え、近年はJ-POPやアイドルなどの出演も多いですね。特に今年は「ASIAN CALLING」と称してK-POPなどアジアン・ポップのアーティストが多く出演しているのが目立ちます。反面、フジのようにアフリカや中南米、中近東などワールド・ミュージック系の出演はほとんどありません。


 さて、今年のラインナップから、アジア系を除く洋楽系で目立つものをご紹介しましょう。東京会場の日程です。


■8月15日 深夜 SONIC MANIA


フェス開幕の前夜に幕張メッセで行われるオールナイト興業が「ソニックマニア」。いわば前夜祭ですが、その割には出演者はかなり豪華なメンツが揃います。


・Kasabian


 新作『48:13』をリリースしたばかりのカサビアンも、いまや英国を代表するバンドへと成長しました。新作はこれまで以上にエネルギッシュで勢いを感じる曲が多く、ライヴの爆音で体感すると、なお凄そうです。


・Kraftwerk


 結成44年。もはやエレクトロニック・ミュージックの古典芸能と言っていいクラフトワークですが、マンネリと言われながらも、いまだ自己をアップデートし続けて新鮮なパフォーマンスを続けているのは凄いことです。日替わりで『アウトバーン』以降のアルバムを全曲再現するツアーを、去年日本でもやりましたが、今回のサマソニはその美味しいところだけを凝縮したヒット・パレードになりそう。ツアー時には観客全員に3Dメガネを配布し、サラウンド音響と一体化した3D映像で楽しませてくれましたが、どうやら今回もメガネが配布される模様。


・Mogwai


 泣く子も黙るグラスゴーのポスト・ロック大将。エレクトロニカ色を強め新境地を開拓した新作『Rave Tapes』をひっさげてのサマソニ登場です。


・2ManyDJs


 この人たちが回してフロアが盛り上がらないなんてことは、まず絶対にありえない。ロック、テクノ、ハウス、R&Bなどなんでもアリなごった煮プレイ、音楽とマッチした映像も楽しい、娯楽DJ界の王者です。



■8月16日


◯MARINE STAGE・


・Arctic Monkeys


若い若いと言われ続けてきたアークティックも、デビューして早8年。速いピッチで作品をリリースし続け、最新作『AM』はもう5枚目のアルバムです。史上最年少&最速でサマソニのヘッドライナーに抜擢されたのは07年のこと。それから7年がたって、前回から大きく成長して堂々ヘッドライナーに戻ってきた英国の国民的バンドの勇姿を目撃しましょう。


・Robert Plant and the Sensational Space Shifters


 今回のサマソニ最大のサプライズがこれ。説明するまでもないレッド・ツェッペリンのレジェンド・ヴォーカリストです。ツェッペリンの本格再始動に頑として首を縦に振らないのがプラントだということですが、その彼が現在専念しているのがこれ。中近東やアフリカ、インドなど辺境の民俗音楽をロックやブルース、フォークと合体させた、いわばツェッペリンの名曲「カシミール」を発展させた最新型です。このツェッペリン曲のセルフ・カバーを聞けば、彼のやりたいことがわかるでしょう。ほかにもツェッペリン・ナンバーをたくさん演奏してくれるようです。


・The 1975


 80年代のMTV全盛期のキラキラ系王道ポップ/ロックに、TLCやデスチャなど90年代R&Bのグルーヴを加え、00年代のエレクトロニカのリズム・アレンジを隠し味的にまぶし、とびきり甘いメロディでコーティングを施した、スマートでソフィスティケイトされた全方位外交的ポップ・ロック。去年に続いて2回連続のサマソニ出演ですが、ファースト・アルバムを全英1位に送り込み、すっかり自信と貫禄をつけての登場です。


・Vintage Trouble


 古きよき時代のソウル/R&B/ブルースとロックンロールを融合したアナログ感覚たっぷりのレトロなサウンドですが、こういうベーシックな音楽はなぜかいつの時代でも古くさくならないですね。この人たちも2年連続登場。サマソニ主催者の「育てたい」という意思を感じます。前回以上にエネルギッシュで熱いライヴを期待しましょう。


・Reignwolf - Are You Satisfied? - Music Midtown


 カナダ出身で現在シアトル在住のジョーダン・クックのソロ・プロジェクトがレインウルフ。言ってみればジョン・スペンサーをもっともっと泥臭く垢抜けなくして100倍暑苦しくしたようなヘヴィ、ダーティ、スリージーなブルース・ロック。ベードラの上に立って演奏したり飛び降りたり、革ジャンを着込んで汗みどろの大熱演は我がギターウルフにも通じるものがありますね(実際に影響を受けているかも)。意外にスタジアムのライヴも似合いそう。


◯MOUNTAIN STAGE


幕張メッセの一番大きなステージ。この日はヘヴィ・メタル中心のラインナップです。


・Megadeth


 もはや説明の要もないスラッシュ・メタル四天王のひとつ。これはマーティ・フリードマン在籍時の代表曲です。


・Suicidal Tendencies


 ベイエリアのサーフィン/スケートボード・シーンは昔からヘヴィでブルータルな音楽が好まれますが、彼の地の不良少年たちの絶対的な支持を受け続けてきたのがスイサイダル・テンデンシーズ。オールドスクールなハードコアの良さを体現しています。このビデオを見て面白いと思ったらぜひ一度体験を。なおベースは、先頃来日してフュージョン/AOR風とエレクトロニカを融合したような洗練された音楽性を披露したサンダーキャットことスティーヴ・ブラナー。フライング・ロータスのレーベルから、流行の最先端を行くようなシャレオツな作品を出している男が、こんなドスコイなハードコアを並行して続けているのが面白いですね。


◯SONIC STAGE


・Phoenix・


フランス出身の4人組フェニックス。最新作『Bankrupt!』をひっさげての5年ぶりのサマソニ登場です。グラミーを受賞した大ヒット作『Wolfgang Amadeus Phoenix』に続く『Bankrupt!』は、前作以上にポップなメロディと緻密な音作りが際立つ作品だけにライヴも期待大です。


・CIBO MATTO


 15年ぶりの新作『Hotel Valentine』も好評なチボ・マット。NY在住の日本人女性2人によるエレクトロニク・ポップ。15年前のキュートでキッチュなポップ感覚はそのままに、ぐっと大人っぽくなった新生チボのライヴ。今年すでに単独来日公演をやっていますが、サマソニの大舞台でどうなるか見物です。


・twenty one pilots


 TVCM効果でこの曲が大きな話題となり一気に知名度をあげた人たち。CM曲ばかりが取りざたされますが、実際はもっと幅広い音楽性を持ったハイブリッドなポップをやっています。2012年フジロックでの好演も記憶に新しいところ。今回はよりスケールの大きなショウをやってくれるはず。


・Jamaica


 これまたフランス出身のギターポップ2人組。セカンド・アルバム「Ventura」をひっさげての4年ぶりの来日です。新作は曲も演奏も大きく進化しナチュラルなグルーヴ感を強めた作品でした。ライヴはさらに期待できそうです。


・White Lies


 ロンドン出身の3ピース。ポスト・パンク〜ニュー・ウエイヴ、もっと言えば「ネオ・サイケデリック」と言いたいダークでメランコリックな世界を得意としています。個人的にこの音はツボなので楽しみ。


・Sky Ferreira


 ある意味で今年のサマソニで一番話題となりそうなのがこの人。ドラッグ所持や窃盗容疑で逮捕され、ヌードジャケが物議をかもし(撮影はなんとギャスパー・ノエです)、ステージにあがれば熱演のあまり60針も縫う大けがをする、挙げ句は待望のファースト・アルバム『Night Time, My Time」が、収録曲"Omanko" のタイトルが問題となってあえなく日本盤発売が延期になるというおまけまでついて(7/23に該当曲を削除、ボートラ4曲を加え発売決定)、すっかりスキャンダラスなイメージが先行していますが、80年代ポスト・パンクやニュー・ウエイヴ、シンセ・ポップやオルタナ〜シューゲイザーなど80年代以降のインディ・ロックの美味しいところだけ集めて良質なポップ・ロックに仕上げた音楽的才能とエンタテイメント精神もたいしたものです。


・TELEGRAM


 UK出身のガレージ・サイケ4人組。テンプルズとは違うタイプのレトロスペクティヴな音ですが、最近では少なくなった人力一本槍のロック・バンドらしいフィジカルなグルーヴがなかなか硬派な印象です。


・Childhood


 これまたUK出身のサイケ新鋭。甘いメロディともやっとした雰囲気、ささやくようなヴォーカルはストーン・ローゼズをちょっと思わせます。来日直前に出るというファースト・アルバムからの新曲もやってくれるはず。


・BEACH STAGE


・De La Soul


 真夏の陽光の下のビーチ・ステージはこの人たちがトリをつとめます。今更説明するまでもないニュー・スクール・ヒップホップの代表格。この曲が納められたデビュー・アルバム『3 Feet High and Rising』から今年で25年とは、時の流れの速さを感じますが、その新鮮なアイディアに満ちたサウンドは今でも十分に有効です。


・Pete Rock & C. L. Smooth


 ヒップホップのベテランが続きます。ジャジー・ヒップホップの雄ピート・ロックとC.L.スムース。その抜群に洗練されたソウルフルなトラックとスムーズなフロウは、いまだにかっこいい。


・The Pharcyde


 NYのデ・ラ・ソウルに対してLAのニュー・スクールを代表するのがファーサイド。この曲はファースト・アルバムの曲で、ジミ・ヘンドリックスの「Are You Experienced」のテープ逆回転リフを実に巧妙に使ったネタ使いの巧みさとセンスの良さは、今聞いても実に素晴らしいですね。


◯MIDNIGHT SONIC


・ANTEMASQUE



 ソニック・ステージ初日の深夜興行。元マーズ・ヴォルタのセドリックとオマー・ロドリゲス・ロペスが結成した新バンドです。なんとこれがワールド・プレミアとなる初お披露目ライヴです。


■8月17日


◯MARINE STAGE


・Queen + Adam Lambert


 アダム・ランバートをヴォーカリストに迎えたクイーンがクイーンと言えるのか、という根本的な疑問はさておき、華やかで賑々しい娯楽性たっぷりのショウが楽しめることは間違いないでしょう。アダムさん、ポール・ロジャーズよりは向いてると思うんですけどね…


・Avril Lavigne


 いきなり日本のギャル文化に大接近したこの曲(とそのPV)が文字通りの賛否両論を呼んで「炎上」したアヴリル嬢。デビューから早10年。といっても彼女に月並みなアダルト・シンガーになられても困るわけで、サマソニではまだまだやんちゃに暴れまくる彼女が見られそうです。


・Richie Sambora with Orianthi


 ボン・ジョヴィのギタリストがソロで登場。この動画はオリアンティと共演したボン・ジョヴィの代表曲のセルフ・カバーです。


◯MOUNTAIN STAGE


・Ellie Goulding


 UK出身のエレクトロニカ歌姫。近作ではEDMに大接近していますが、実はクラシカル&トラッドな持ち味の実力者で、サンディ・デニーやケイト・ブッシュやエンヤが今の時代の若者ならこんなことをやっていたかも、と馬鹿なことを考えるのも一興です。これが初来日。ライヴはたぶん相当に凄いと思います。


・Robert Glasper Experiment


 『ブラック・レディオ』でグラミー賞を獲得、ついに現代ジャズの頂点に立った鬼才、ロバート・グラスパーがR&Bに挑んだプロジェクト。ヒップホップ要素の導入も趣味が良く、抑制の効いたオトナのムードたっぷりの上質なジャジーR&Bは、今の時代にふさわしいと言えるでしょう。サマソニに登場するのはやや意外ではありますが(どちらかといえばフジロック向けという印象)、クソ暑い夏をクールダウンしてくれる演奏を期待しましょう。


・AZEALIA BANKS


 このデビュー曲が実に新鮮だったアジーリア嬢。トラックのカッティング・エッジな冴えといい、ラップ・スキルといい、パフォーマーとしてのキャラクターといい、超一級の素材であることは確かなのに、トラブル続きでリリースも思うに任せない状況が続きました。ですがこのサマソニ出演と前後してついにファースト・アルバム『Yung Rapunxel』がリリースされる予定。ライヴともども期待大です。


◯SONIC STAGE


・Pixies


 23年ぶりの新作をリリース、ついに完全復活を遂げたピクシーズ。新作は昔と変わらぬ若々しく尖った彼らと、23年の歳月分成熟した表現者となった彼らが同居する佳作でした。もちろんライヴに定評のある人たちですから、絶対に外さないステージになるはずです。


・The Horrors


大傑作の4作目『Luminous』で、完全に一皮むけた感のあるホラーズ。2年前のサマソニは深夜の「Midnight Sonic」での出演でしたが、今回は堂々トリ前の登場です。


・Ben Watt with Bernard Butler


 31年ぶりのソロアルバム『Hendra』が絶賛されたエヴリシング・バット・ザ・ガールのベン・ワットが、アルバムでもパートナーをつとめた元スウェードのバーナード・バトラーとともにサマソニに登場。フェスの騒然とした雰囲気を変えてしまうような静謐で味わい深い世界を期待しましょう。


・Metronomy


 ミッシェル・ゴンドリーが監督したこのPVがとにかく抜群に面白かったメトロノミー。アルバム全体としてもこの曲が傑出している印象でしたが、このノスタルジーと近未来が同居しているようなレトロ・フューチャーな世界観は彼らならでは。これまでの彼らの作品ではもっともライヴ向けのサウンドという印象で、期待しましょう。きゃりーぱみゅぱみゅとの並びはけっこう面白いかもしれません。


・Circa Waves


キビキビとした若々しい演奏が楽しいリバプールの4人組。リバティーンズのデビュー時を思わせる疾走感とポップ・センスが魅力です。


・The Orwells


 アメリカはイリノイのガレージ・ロック5人組。いまどき珍しいぐらいストレートで衒いのないロックンロールはなかなかに爽快。アークティック・モンキーズに気に入られ彼らの全米ツアーのサポートに抜擢されています。


 以上、駆け足ですがサマソニの洋楽アーティストを紹介しました。やはり若いアーティストに特徴のあるラインナップですね。ここで紹介しきれなかった中にも、面白い人たちはいます。公式HPをチェックしてみてください。


 ではまた次回。(小野島大)



このニュースに関するつぶやき

  • 今年はソニマニ一点集中で行こうかな。とすれば、ぷれみあむ券とやら買ってみるのも良いかな…(*´ω`*)♪
    • イイネ!2
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