「こんな注文はしていない」 認知症の客が料金の支払いを「拒否」したらどうなる?

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2014年09月26日 11:11  弁護士ドットコム

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注文に応じて庭木をきれいに手入れしたのに、依頼主から「頼んでいない」と言われたら、庭師はどうすればいいのだろうか・・・。神奈川県で造園業を営むTさんは、得意先のお年寄りから、久しぶりに庭の手入れの依頼を受けた。庭木の手入れに加え、壊れた門を直してほしいということだった。


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ところが、作業を終えたTさんが料金として30万を請求したところ、お年寄りは急に「そんな注文はしていない」と支払いを拒否してきた。周囲に聞いたところ、どうやらそのお年寄りは認知症を患っているらしい。



Tさんは、「庭で剪定作業していたときは、何も言ってこなかったのに・・・」と、やるせない思いを抱えている。こんなとき、業者はどう対応すればよいのだろうか。山下茂弁護士に話を聞いた。



●依頼主との「契約」が有効かどうか


「現実的な対応としてはまず、その方の家族に相談しましょう。たいていは、法律問題になる前に、ご家族が支払うことが多いと思います



しかし、もし話が長引きそうなときは、手入れした状態を写真撮影するなど、作業の証拠を残しておきましょう」



このように山下弁護士はアドバイスするが、もし素直に払ってもらえなかったら、法律的にはどうなるのだろうか?



「今回のケースでは、依頼主と造園業を営むTさんとの間に、庭木の手入れと壊れた門の修理を内容とする『請負契約』がなされたものと考えられます。



Tさんが依頼主に代金を請求できるかどうかのポイントは、この請負契約が『有効』なのかどうかです」



●依頼主に「意思能力」があったかどうか


契約が有効かどうかの判断は、どうやってするのだろうか?



「ポイントとなるのは、依頼主のお年寄りに『意思能力』があったかどうかです。



この『意思能力』は専門的な用語で、『行為の結果を判断するに足りるだけの精神的能力』のことだと考えられています。



契約を結んだときに、意思能力があったと認められれば、契約は有効になります。逆に意思能力がなければ、契約は無効となります。無効の場合は、請負代金の請求ができなくなります」



意思能力があるかないかは、どうやって判断されるのだろうか?



「そこはケースバイケースです。実際のところ、認知症の人の判断能力はさまざまで、意思能力があるかどうかの判断は困難です。



また、もし、依頼者が『成年後見人』のサポートを受けていたようなケースだと、契約が取り消されてしまうことも考えられます」



●タダ働きになってしまうのか?


もし契約が無効だと判断されたり、取り消されてしまった場合、Tさんはタダ働きになってしまうのだろうか?



「それは大丈夫です。



依頼主は、法律上の原因なく、庭の手入れを受け及び門の修理を受けるという利益を得ています。



そうした利益のことを『不当利得』といい、Tさんは依頼主に対して、『不当利得を返還して』という請求(民法703条)ができます」



ところで、認知症の人を相手に、訴訟ができるのだろうか?



「それも大丈夫です。実際のところ、相手の代理人を選定してもらって、その人を相手に裁判をすることになります」



このように、山下弁護士は話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
山下 茂(やました・しげる)弁護士
埼玉県東松山市で勤務弁護士4人とともに地域のあらゆる事件に対応し、地域住民に誠実・適切な法的サービスを提供中。21年間の弁護士生活のなかで、家裁の調停委員、人権擁護委員などを歴任し、膨大な相続、離婚、破産、消費者事件等の相談及び訴訟事件をこなす。
事務所名:山下法律事務所
事務所URL:http://www.ymst-law.net/



このニュースに関するつぶやき

  • けど現実は、庭師が悪い庭師で依頼されてもいないのに勝手に作業して依頼されたと言い張って30万要求したりするわけでしょ。
    • イイネ!2
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