赤い公園・津野、ゲス乙女・川谷、パスピエ・成田…楽曲提供でも光る若手バンドのコンポーザーたち

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2014年09月28日 18:20  リアルサウンド

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ゲスの極み乙女。『魅力がすごいよ(初回限定魅力的なプライス盤)』(WMJ)

 若手バンドの主要コンポーザーが男性・女性アイドルに楽曲提供するケースが、ここ数年で増えてきた。


 例えばSMAPは、サカナクション・山口一郎による「Moment」「Magic Time」や、ドレスコーズ・志磨遼平が作詞、THE BAWDIESのROYが作曲を務めた「I Wanna Be Your Man」、クリープハイプ・尾崎世界観が手がけた「ハロー」といった楽曲を歌っている。山下智久も相対性理論のやくしまるえつこ、永井聖一による「愛、テキサス」や、SEKAI NO OWARIのNakajinが作曲を務めた「パレード」など、若手バンドによる楽曲が目立つ。


 女性アイドルへの楽曲提供も活発で、Base Ball Bearの小出祐介はチームしゃちほこ「colors」や、遠藤舞「Today is The Day」、アップアップガールズ(仮)の「Beautiful Dreamer」、東京女子流の「Partition Love」など、多くのアイドルソングを手掛けているほか、アイドルネッサンスのデビューシングル「17歳」は、Base Ball Bearのカバーとなっている。ももいろクローバーZは、相対性理論・やくしまるえつこによる「Z女戦争」を、PASPOはHAWAIIAN6による「妄想のハワイ」を歌うなど、アイドルとバンドマンのコラボは枚挙に暇がない。(参照:エビ中 × 村田有希生、9nine × 石井秀仁……アイドルとロックの名コラボを読み解く


 今回は、JPOPシーンを支えるクリエイターとしても活躍している、大ブレイク寸前の若手バンド・フロントマンを紹介したい。


■赤い公園・津野米咲


 若手バンドによる男性アイドルへの楽曲提供の中で、随一と呼べるほどのクオリティを誇るのは、赤い公園・津野米咲の作曲による「Joy!!」だろう。現在23歳の彼女は「KANSHAして」や「オリジナル スマイル」ーーつまり90年代のSMAP楽曲を愛聴しており、「Joy!!」はまさにその時代のSMAPを、現在のメンバーを媒介にしてもう一度呼び覚ました一曲だ。また、彼女はほかにも南波志帆「ばらばらバトル」やベイビーレイズ「ビッグ☆スター!」、遠藤舞「MUJINA」など、女性アイドルも手掛けている。クリエイターとして今後、ますます脚光を浴びそうだ。


 また、これまで赤い公園の音楽自体は、どこか歌謡ロック的なアプローチが多く見られていたが、9月24日にリリースした『猛烈リトミック』では、リードトラックの「Now on air」で津野のポップ・センスとバンドのポテンシャルが見事に合致。大躍進の予感を感じさせる一曲に仕上がっている。


■パスピエ・成田ハネダ


 2013年3月にリリースされた、山下智久のシングル『怪・セラ・セラ』を手掛けたのは、新進気鋭のポップバンド・パスピエだ。キーボード・成田ハネダによる、オリエンタルでギミックに富んだ楽曲に、「そこのけ そこのけ モノノ怪〜」という、ボーカル・大胡田なつきらしいフレーズが乗った同曲は、「山下の楽曲をパスピエが手掛けている」というよりも「パスピエの楽曲を山下が歌っている」という印象を抱かせるほど、彼らの色が濃く出ている。


 バンドはリリースの同年に1stアルバム『演出家出演』を発売してロックシーンで多数の支持を集め、2014年6月にはポピュラリティに富んだ2ndアルバム『幕の内ISM』をリリース。その後はバナナマンの単独ライブ『bananaman live 2014「Love is Gold」』に書き下ろし楽曲を提供したり、株式会社NTTドコモのスマートフォン向け定額制音楽配信サービス『dヒッツ』のCMに起用されるなど、ますます活躍の幅を広げている。


■indigo la End/ゲスの極み乙女。・川谷絵音


 先日の『ミュージックステーション』に出演して以降、その名がさらに世間に浸透した、プログレッシブ・ポップ・バンド、ゲスの極み乙女。と、切ないギターサウンドと透明感のある声が特徴的なindigo la End。この2バンドのフロントマンを務める川谷絵音は、SMAPの『Mr.S』において「あまのじゃく」「好きよ」を提供。「あまのじゃく」ではゲスの極み乙女。的なプログレッシブ・ポップに、SMAP5人による癖のあるユニゾン歌唱が上手くハマっており、1曲の中に良い意味で雑多なポップさを含んだ楽曲になっている。そして「好きよ」は、2バンドのどちらでもない、【素の川谷絵音】が書いた歌モノ。どちらも違ったアプローチで『Mr.S』というアルバムに重層的な深みと魅力を与えている。


 川谷はリアルサウンドのインタビューで「(10代の頃は)オリコンに出てくるようなJ-POPしか聴いていなかった」「一度ロックシーンに入る必要がある」といった発言をしており(参照:indigo/ゲス極のキーマン川谷絵音登場「バンドシーンを通過して、唯一の存在になりたい」)、メジャーシーン、ポップスのフィールドで活躍することを前提にアプローチをしてきたことが伺える。いまや実際に、アイドルや芸能人がこぞって名前を挙げるアーティストへと成長しており、10月29日発売のアルバム『魅力がすごいよ』では、存分にそのポップセンスを見せてくれそうだ。


■Wienners・玉屋2060%


 10月19日から、初の地上派冠番組『でんぱジャック World Wide Akihabara』(フジテレビ系)がスタートするなど、サブカルチャーのフィールドから大衆に愛されるアイドルへとそのポジションを変えているでんぱ組.inc。彼女たちのヒット曲である「でんでんぱっしょん」や「サクラあっぱれーしょん」を作曲し、ブレイクに一役買っているのはWiennersのフロントマン、玉屋2060%だ。ハードコア・ファストコアとポップスを組み合わせた異質なサウンドで、バンドシーンにおいて人気を誇っていた彼らは、でんぱ組.incへの楽曲提供をきっかけに、玉屋のポップスを作曲する才能が一気に開花。SEBASTIAN Xのメジャーデビューアルバム『イェーイ』で表題曲のリミックスを手がけたり、吉祥寺Pを名乗ってニコニコ動画にバンドの楽曲である「VIDEO GIRL」の初音ミクバージョンを投稿するなど、バンドシーンにとどまらない活躍を見せている。


 バンドは先日9月7日のライブでMAX(ボーカル・キーボード・サンプラー)とマナブシティ(ドラム)が脱退し、次の活動へ向けての準備期間に入っているが、今後の編成・活動にも要注目だ。


 近年では一般的になった「バンドとアイドルのコラボ」という試みは、アイドル側に新しい風を吹かせるとともに、バンド側にとってもアイドルという知名度の高い媒介を通すことで、自分たちの音楽性をこれまで届かなかった層へとリーチさせる手段として機能している。バンドの音楽ジャンルにこだわらず、フロントマンが上質なJPOP楽曲を書けることは、バンドがブレイクするきっかけの一つとなるのかもしれない。


(文=向原康太)



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  • 才能がある人は良いですねぇ
    • イイネ!7
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