小渕経産相「後援会の観劇会」めぐり辞任 「法的責任」が生じるボーダーラインとは?

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2014年10月20日 21:01  弁護士ドットコム

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「政治とカネ」の問題をめぐり10月20日、小渕優子・経済産業大臣が辞任した。関連政治団体の小渕優子後援会と自民党群馬県ふるさと振興支部が開いた「観劇会」をめぐって、政治資金収支報告書の食い違いなどが指摘されていた。


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小渕氏の辞任会見での説明によると、観劇会は、小渕氏の後援会2団体が1998年から毎年行っている恒例行事だった。公演を貸し切って開き、参加者は1回1000人程度。年2回開くので、およそ年2000人が参加していたという。



小渕氏は観劇会の参加費について、「2008年以降は、一人あたり12000円の会費を徴収していた。料金には入場料、食事代、バス代が含まれている」と説明した。さらに続けて、「本来なら毎年2400万円の収入が計上されていなければならないはずだが、2010年は372万円、2011年は369万円しか記載がなく、2012年は収入・支出が全く記載されていない。これは、大きな疑念があると言わざるを得ない」と話した。



なお、2008年の観劇会については、小渕氏が代表を務める資金管理団体「未来産業研究会」が290万円を支出していたという報道もある。



関連政治団体である後援会の収支報告が実際と食い違っていた点について、法的にはどのような問題があるのだろうか。小渕氏に「法的責任」が生じるとしたら、そのボーダーラインはどこにあるのか。秋山直人弁護士に聞いた。



●収支報告書に記載する義務は「誰」にあるのか?


「まず、小渕氏が会見で認めた事実関係の範囲内でどういう問題があるかを見ましょう」



このように、秋山弁護士は切り出した。



「政治団体の収支報告書に、本来記載すべき収入や支出を記載しなかったという場合、収支報告書の記載義務違反(政治資金規正法25条1項2号、同法12条)が問題になります。



収支報告書を提出する義務を、直接的に負っているのは、その政治団体の『会計責任者』です。したがって、記載義務違反について、直接の責任を問われるのは、会計責任者となります。



記載義務違反の罰則は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくはその両方です。故意に限らず、重過失でも処罰の対象となります。さらに、公民権も一定期間停止されます(同法25条1項2号、27条、28条)」



さらに、政治団体の「代表者」も責任を問われることがあるという。



「政治団体の代表者についても、会計責任者の選任・監督について相当の注意を怠ったとされると、罰則(50万円以下の罰金、同法25条2項)の適用があります。そして、罰金に処せられると、一定期間の公民権停止の制裁があります(同法28条1項)。



『選任・監督についての相当の注意』というのは抽象的ですが、会計責任者を選任する際、その人柄や能力の調査を怠らなかったか、選任後は通常期待される程度の業務の監督を怠らなかったかが問題となります」



公民権が停止されるということは、選挙権や被選挙権が停止されるということだ。そして、国会議員は、被選挙権を失うと失職する。小渕氏がそういう事態に追い込まれる可能性はあるのだろうか?



「今回観劇会を実施していた後援会(政治団体)については、小渕氏は『会計責任者』や『代表者』ではありませんので、記載義務違反について、直接的な法的責任を問われる立場ではありません」



すると今回、小渕氏が認めた範囲内では、小渕氏自身に「法的責任が及ぶ」ことはないようだ。



「小渕氏が直接認めた範囲内では、そうですね。



一方、これは会見で小渕氏が認めた範囲を超えますが、もし『小渕氏が代表を務める資金管理団体』が、収支報告書に不適切な記載をしていたのであれば、小渕氏に法的責任が及ぶ可能性はあります。



政治資金規正法違反は、形式的な犯罪と見られることもありますが、今回のケースのように、観劇会の参加者から集めた会費を収入に計上していなかったとなると、それが裏金になったのではといった疑惑を招きかねないといえ、軽視することはできないでしょう」



●「事実解明」が待たれる


「また、こちらも小渕氏が会見では認めていないことですが、今回の件については、観劇会に要する支出よりも、参加者から集めた会費が少なく、その差額を後援会が補填していたのではないか、との疑念も持たれています。



もしそのようなことがあると、有権者に対する買収・利害誘導または有権者への寄付として、より重大な公職選挙法違反の責任を問われる可能性もあります。



小渕氏は、第三者の弁護士や公認会計士による調査を実施するとのことですので、こうした点については、事実関係の解明を待つ必要があろうかと思います」



秋山弁護士はこのように述べていた。



実際にお金の動きがどうなっていたのかについて、小渕氏はしっかりと調査して、その実態を明らかにする政治責任がある。第三者による調査の進捗に期待したい。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.org/



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