「車にしがみついた男」振り落とし殺人容疑で逮捕 「正当防衛」にならないの?

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2014年11月12日 17:41  弁護士ドットコム

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車のドアにしがみついた大学生(23)を、急発進で振り落としたとして、車を運転していた東京都内の会社員男性(45)が、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。男性は警察の調べに対し、「すごい剣幕でドアにしがみついてきた。怖くなって急発進させた」と話しているという。


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報道によると、逮捕された男性は11月5日午後3時50分ごろ、町田市の路上で、市内に住む大学生の男性と車の進路をめぐって口論になった。大学生が車のドアにしがみつくと、急発進して振り落とした疑いが持たれている。大学生が頭などを強く打ち、搬送先の病院で死亡したため、容疑は殺人に切り替えられたという。



このニュースに対し、ネット上では「ドアにしがみつくなんて危害加える気満々なんだし、殺人じゃなくて正当防衛」「本当に命の危機を感じるような迫り方なら無罪でいい」など、納得できないという見方が少なくない。今回のようなケースで、正当防衛は認められないのだろうか。中島宏樹弁護士に聞いた。



●正当防衛にも限度がある


「正当防衛というのは、差し迫った危険から自分や他人の権利を守るため、『やむを得ずにした行為』のことです。



正当防衛が成立すれば、違法性がないとして、無罪になります。



今回のポイントは『やむを得ずにした行為』だったかどうかです。そう言えるためには、防衛行為が必要かつ相当でなくてはなりません」



ざっくりいうと、いくら防衛といっても限度がある。やり過ぎはよくない、ということだろう。



●大ケガを負わせる可能性があった


それでは、すごい剣幕でドアにしがみいてきた大学生に恐怖を感じ、車を急発進させたというのは、どうだろうか?



「人がドアにしがみついた状態の車を急発進させれば、その人を振り落したり、車輪に巻き込んだりして、大きなケガを負わせる可能性があります。事実、大学生は車から振り落とされて頭などを打ち、搬送先で亡くなっています。



大学生は車外にいたのですから、会社員男性が身を守るためには、ゆっくりと車を発進させたり、クラクションを鳴らして警告するなど、より危険性の低い手段をとることもできたはずです。



そう考えると、いくら恐怖を感じていたといっても、『やむを得ずにした行為』というのは難しいように思えます」



たとえ、差し迫った危険があり、身を守るためにしたことでも、防衛の範囲を超えたらダメということだろう。



中島弁護士は「なお、差し迫った危険があって、防衛のためにやったことだけれども、防衛の程度を超えてしまった場合を『過剰防衛』といいます。過剰防衛は、情状により、刑が減免される可能性があります」とつけ加えていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中島 宏樹(なかじま・ひろき)弁護士
弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所を経て現在に至る
京都弁護士会所属
京都弁護士会:刑事委員会(裁判員部会)、民暴・非弁取締委員会、法教育委員会
日本弁護士連合会:貧困問題対策本部
事務所名:弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所
事務所URL:http://www.keihan-towa.com/



このニュースに関するつぶやき

  • 車対丸腰であることと相手の殺意の有無且つ相手が死んでしまった以上、過剰防衛になるんじゃないか。正当防衛は意外と幅が狭いからな〜。
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