レイプ被害「あなたは悪くないと被害者に伝えてほしい」サバイバーが語る回復への道

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2014年11月19日 11:01  弁護士ドットコム

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性暴力の被害とは何か。被害を受けた人にどんな支援ができるのか――。そんなテーマのシンポジウムが11月18日、さいたま市の埼玉県男女共同参画推進センターで開かれた。


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アメリカで15年前、レイプ被害を受けたフリーのフォトジャーナリスト大藪順子さんが登壇し、被害を受けたときの衝撃と、支援を受けて立ち直るまでの道のりを語った。



●「叫びたくても叫べませんでした」


1999年8月9日、アメリカの新聞社で写真家として働いていた大藪さんは、その日の取材を終え、1人暮らしのアパートに帰って、いつもより早い時間に眠りについた。



部屋の入り口に誰かが立っていることに気がついたのは、夜中、トイレに行こうと目を覚ましたときだったという。



「はじめは、『私、夢を見ているのかな?』と思いました。でも、その人影はどんどん近づいてきた。私は足がすくんで逃げられなくなりました。一生懸命『助けて!』と叫びましたが、気がついたら声が出ていませんでした。身体が凍り付いて、叫びたくても叫べませんでした」



事件が起きる前、「もしそんなことが自分の身の上に起こったら、戦ってやる」と、大藪さんは考えていた。しかし、実際には動くことができなかった。



その時、大藪さんが考えていたのは、「今夜死んではいけない」ということだった。「もちろんレイプしていいと許可を与えたのではありません。自分の命を守るために、その男に従おうと思ったのです」



●階下のおじさんに通報してもらった。


家のドアにはカギがかかっていた。しかし、男は裏口のドアを壊して侵入してきた。そして、そのドアから、男は去って行った。



「裏口のドアがパタンと閉まる音がしたとき、逃げるなら今だと思いました。表から降りて、1階に住んでいる顔見知りのおじさんのドアを叩いて、警察に通報してもらいました」



10分後、2人の警察官がアパートに到着した。「裏口が壊れている」「こじ開けた道具があった」と、警察官から報告を受けた。



●屈辱的だった「レイプ検査」


殴る蹴るはされておらず、ケガはしていなかったが、大藪さんは救急病院に連れて行かれた。「レイプ検査」という、加害者のDNAを検出する検査を受けるためだ。この検査が、「非常に屈辱的だった」と大藪さんは振り返る。



「本来レイプ検査は、『加害者に舐められた部分を、検査のために綿棒でなぞってもいいですか?』などと聞いて、被害者に許可を得てから行われるべきです。しかし私が受けた検査は、自分の許可なしに作業が行われました。私はこの夜、私の一番プライベートな部分を、2人の人間から無許可に触られたのです」



2〜3時間にわたった検査を、大藪さんは泣きながら耐えたという。



●「あなたのせいじゃない」という言葉


すべての検査が終わった夜中の2時ごろ、大藪さんは「レイプクライシスセンター」という、性暴力被害者のサポートをする団体の女性の訪問を受けた。そして、女性に「今夜起こったことは、あなたのせいじゃない」と言葉をかけられたという。



「正直、こう言われて逆ギレしました。『当たり前じゃない!なんでわざわざそんなこと言うの?』と思ったからです。でも、あの女性の言葉は必要だったと、今は思います」



女性にこう言ってもらえたことが、実は、大きな助けになっていたのだという。



「私は被害の後、『自分が悪かったのでは?』『男のなすがままになるのではなく、違う方法があったのでは?』と自分を責めました。



しかし、被害者が自分を責めるのはおかしいんです。性暴力は加害者の意思でしか起こりません。



もし皆さんの大好きな人が性暴力被害にあったら、真っ先に『あなたは悪くない』と言ってあげてほしい。



その言葉を誰かに言ってもらえたかどうかで、『自分の味方がいる』と思えるかどうかで、被害者のその後の人生は全く変わってきます」



加害者は事件の3日後に逮捕され、懲役20年の刑に処せられた。男は今もまだ刑務所の中にいるという。



●性暴力の「サバイバー」たち


レイプは「魂の殺人」と呼ばれる。



大藪さんは2001年、性暴力から生還した「サバイバー」たちを撮影し、紹介するプロジェクトを始めた。その中で出会ったあるサバイバーは、「加害者は、決められた刑期を終えれば刑務所から出られる。でも、被害者は終身刑を与えられる」と語ったという。



「性暴力の被害者たちが、勇気を出して警察や知り合いに相談しても、『なんでそんな服装してたの?』『注意しなかったあなたが悪いんじゃない?』と、まるで加害者であるかのようなことを言われる。そして被害者は傷つき、『自分は汚れている』と、孤立して泣き寝入りするのです」



幸いなことに、大藪さんは被害直後から手厚い支援を受けたことで、「心の回復が比較的早く進んだ」と話す。



「私には、私が受けた被害に対して一緒に怒ってくれる友人や同僚がいました。レイプ被害者の支援員から、3カ月間のカウンセリングを受けることもできました」



その後、大藪さんは結婚し、子どもにも恵まれた。



しかし、性暴力被害者の多くは、適切な支援を受けられていないという。



「被害者にすぐに支援することで、その後の人生を変えることができます。私自身が、その成功例です」



大藪さんは会場に向かって、そう訴えかけていた。


(弁護士ドットコムニュース)



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  • レイプは、行為中も行為後も裁判中も裁判後も、ずっと恐怖と恥辱が終わらない。 被害者の心を殺す、殺人に等しい行為。
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