文化庁メディア芸術祭審査委員会推奨作品。夏といえばコレ!的な大ヒットになったアニメ『あの日見た花の名前を僕達は知らない。』。主人公の幼馴染グループの一人であり、最初の理解者。学校にも通わず、10代ながらも世界中を飛び回るアクティブさを持ちながらも、常に自分に負い目を感じる男、それが“ぽっぽ”こと「久川鉄道」です。
【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】
■超平和バスターズ加入から解散まで
幼いころは体が小さくみそっかすだったぽっぽは、主人公の宿海仁太こと“じんたん”に誘われて『超平和バスターズ』に加入します。秘密基地(アジト)を作ったり、放課後に一緒に遊んだりする男女3:3の幼馴染6人組です。クラスでもオマケ状態だったぽっぽは「リーダー的で人気のあるじんたん(ジャニーズ系)が僕を仲間にしてくれた」という喜びで、当時も現在もじんたんを信用しています。しかし、メンバーのマスコット的存在だった本間芽衣子こと“めんま”の事故死により超平和バスターズは解散し、その後、仲間で集まることもなくなり、メンバーは別々の道を歩いていくことになります。
■外国語も堪能な自由人
めんまの死後、松雪集こと“ゆきあつ”と鶴見知利子こと“つるこ”は進学校へ、じんたんは受験に失敗し底辺高校に進学しますが、結局通わずじまい。安城鳴子こと“あなる”もじんたんと同じ高校に進学します。それぞれの道を行く3人と、ドロップアウトしたじんたん。そしてぽっぽは進学せず、海外放浪生活をするフリーターとなり、家を出て超平和バスターズのアジトに住んでいます。
それなりの高校生活を送る3人、立ち止まってひきこもるじんたん、そしてぽっぽは、みんなで過ごしたアジトで、まだ小学校時代の放課後をすごしているのです。容姿こそ185センチと巨大になり、複数の外国語も堪能、アルバイトで稼ぐなどそれなりに社会適応しているようにみえますが、それらは自然に習得しただけで、実は大人になることを拒否したぽっぽの、現実逃避行動なのです。
■めんまへの罪悪感とみそっかすの辛さ
幽霊のめんまも含め、ぽっぽ以外の5人は小学校時代から五角関係のラブゲームにハマっています。ぽっぽは現在も恋愛のみそっかすになってしまっており、その疎外感を常に感じ、さびしい思いをしています。「みんな」で過ごしたいぽっぽは、「みんな」でいるために、不抜けになったじんたんの代わりにめんまの希望をかなえるため、リーダーシップをとるなど大活躍します。
ぽっぽの現実逃避は、命を失い小学生のまま時が止まってしまっためんまへの罪悪感が原因です。他のメンバーもほとんどが、めんまの死は自分に要因があると考え、罪悪感にさいなまれていますが、ぽっぽは最も切実です。直接の原因では全くありませんし、体の小さなぽっぽにはどうすることもできなかったことですが、事故を目撃しながらも逃げてしまった自分が、めんまがなれなかった大人になるというのが耐えられなかったのでしょう。高校生程度に成長しためんまの幽霊が現れてすぐ信じたのも、じんたんへの信頼感だけではなく、「めんまにも成長してほしい」という思いがあったのかもしれません。
めんまのために動き、めんまの心を知ることができたぽっぽは進学の準備を始めます。新しいことを始めるのはいつでも不安がいっぱいです。辛いことを忘れるのではなく、乗り越えて進む彼の一歩は、私たちの心にも勇気を与えてくれました。
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★記者:藤原ユウ(キャラペディア公式ライター)
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