孤立させたくない――「性別違和」の池田弁護士、体験もとに「性的マイノリティ」支援

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2015年01月04日 12:21  弁護士ドットコム

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「LGBT」という言葉をご存知だろうか。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとったものだが、最近、LGBTに代表される性的マイノリティを社会がどう受け入れるのかが課題になっている。自ら、「性同一性障害」(FTM、身体的には女性として生まれたが、性自認が男性)と診断され、男性として活動している弁護士の池田清美さん(33)に、自身の経験や問題解決に向けた課題を聞いた。(取材・構成/重野真)


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●スカートが大嫌いだった幼少期


幼少期から女の子らしい格好のスカートは大嫌いだったという池田さん。遊びといえば、漫画のパーマンごっこでヘルメットとマントを着けてみたり、ガンダムのプラモデルを作ったりするのが好きだった。



思春期には、男子・女子どちらのグループに入るべきか、居場所がわからなかった。男子のグループに入りたい気持ちがあっても、どのように自分を説明していいか分からない。当然ながら、周りは戸籍上の性別と思っている。自分自身も友達との接し方が分からず、自然と独りで居ることが多かった。



当時は「性別違和」などの言葉もない時代。誰にも相談できず、インターネットで調べることもできず、悶々と過ごしていた。



大学は、生物系や医薬系の企業への就職を考えていたため、理系の教養学部(前期課程)に進学したが、企業が自分の性別違和を認めて採用してくれるのか不安になり、迷った末、弁護士を目指すことに決めた。教養学部から専門の学部(後期課程)に進学するに際に、法学部を選んだ。



「弁護士は会社に所属するわけではないので、そういった懸念はないだろう」。そう考えた池田さんは、法科大学院に進み、弁護士への道を選んだのだ。



●「LGBTフレンドリー」を表明したワケ


「私はLGBTの当事者として生きてきた。当事者の悩みは、自分の経験に照らすことで良く分かる」



当事者の悩みとして多いのは、社会の中で孤立することだという。周りが自分を受け入れてくれるかどうか、不安になるのだ。学校であれば、部活やサークルに参加するのも躊躇するし、日常生活でも、医療機関にかかるときに「受付の人に変な目で見られたくない」という感情が生じる。そうすると、調子が悪くても病院に行かないということが起きてしまう。



「私が提供している法律サービスでも、同じことが起きているんじゃないかと思った」



つまり、何かの法的トラブルが起きて、いざ弁護士に相談に行こうとしても、「弁護士が自分を差別するんじゃないか」と思ってしまうと、不安になって行けないという状況になるということだ。池田さんは、不安を解消するために「LGBTフレンドリー」であることをホームページで表明している。



「いろんな『LGBTフレンドリー』が増えていけば良いと思っている。私は法律サービスを提供する者として旗を上げた」



LGBTをめぐる法律の代表例として、「性別変更の特例法」がある。「性同一性障害」の人が性別を変更する際のルールを定めたものだが、「この法律には問題がある」と、池田さんは指摘する。現在のルールでは、性別変更をするために性別適合手術が必須とされている。しかし、実際に手術を受けるには、金銭的にも時間的にも負担が大きい。もちろん身体的な負担もある。



海外では、手術を要件としないで性別変更を認める国も多い。池田さんは「リスクをすべて負わなければ、その人が自認している性別に変更できないのは、人権上とても問題だ」と法改正を主張している。



●2015年から活動の拠点を東京へ


池田さんは2014年12月まで茨城県弁護士会に所属し、水戸市を中心に活動してきたが、2015年1月から活動の拠点を東京に移した。LGBT関連のイベントや当事者の人数も大都市のほうが圧倒的に多く、「東京のほうがより多くの人と接することができ、活動として良い方向にいくのではないかと思った」と語る。



今後は法律問題だけでなく、ささいな相談からでも受け付けていくつもりだ。LGBTに関するコミュニティを作る計画も進めている。池田さんは、LGBTの悩みを抱える人たちのために、新たな一歩を踏み出そうとしている。



池田さんは「LGBTの認知はまだ過渡期。過渡期においては社会的認知を高めるために、LGBTを強調するのは仕方がない面もあるが、LGBTとLGBT以外を区別することで、どうしてもLGBTがさも特殊な人であるかのごときイメージが生まれてしまう。多様な生き方がごく自然なものとして受け止められる社会になればと願っている」と語っていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
池田 清美(いけだ・きよみ)弁護士
2009年12月弁護士登録。交通事故事件、離婚事件、少年事件、破産管財事件、その他一般民事等を担当。2014年よりLGBT支援を掲げ、2015年より独立し、通常の業務に加え、当事者の親子支援も開始。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
事務所名:池田法律事務所
事務所URL:http://ikeda-lawoffice.com



このニュースに関するつぶやき

  • LGBTを誘発しやすい環境因子はある。軍隊、刑務所、宗教施設などの極度に異性との接触を制限する組織や、ドラッグの使用など。日本にはそれらの要素が少なかった。
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