教師が「学級通信」で生徒全員の「受験校」を知らせた・・・プライバシー侵害では?

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2015年02月06日 12:21  弁護士ドットコム

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神奈川県大和市は2月4日、市立中学校で3年生の担任をしている男性教諭(50代)が、学級通信にクラスの生徒全員の「受験高校」を記載していたと発表した。


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同市によると、学級通信は、担任教諭が作成する保護者向けの文書で、日々の生徒の様子や学校行事の報告が記載されている。男性教諭は2月2日、受験高校を記載した学級通信をクラスの生徒37人に配布したが、翌日、保護者から「不適切だ」との指摘が学校にあった。学級通信は、学校側がすべて回収済みだという。



教諭は「(受験校の情報を)共有することで、みんなで受験を乗り切ろうと思った」と話しているというが、クラスの中には「自分の受験校を他人に知られたくない」と考えていた生徒がいるかもしれない。学級通信に生徒の受験校を記載する行為は、法的に問題ないのだろか。個人情報の問題にくわしい佃克彦弁護士に聞いた。



●受験校は「知られたくない情報」か?


「今回のケースでは、生徒の受験校を学級通信に記載したことが、プライバシー侵害にあたるかどうかが問題になります」



佃弁護士はこのように述べる。どんな情報が「プライバシー」にあたるのだろう。



「何がプライバシーかは、『一般人の感受性を基準にして、公開を欲しない事柄かどうか』という観点から判断されます。要は、知られたくない情報かどうかです。そのような情報を公開してしまうと、プライバシー侵害だということになります」



どの高校を受けるかは、プライバシー情報にあたるのだろうか。



「今回の学級通信には、クラス全員の受験校が記載されていたということです。つまり、これを見れば、『誰がこれからどの学校を受験しようとしているのか』が、はっきり分かることになります。



これから受験をしようという生徒の立場に立った場合、『志望校に合格するかどうか』はよく分からない状況です」



たしかに、受験生は、合格するかどうか不安を抱えながら、必死に勉強しているのだろう。



「そうした状況では、自分がどの学校を受験するかについて、多くの人に知らせたくはないという気持ちの子が結構いるのではないでしょうか。何を隠そう私自身、高校受験のとき、親しい友人にしか第一志望校を教えていませんでした。



となると、一般的な生徒の心情としては、『これから受験する学校がどこか』は、『公開を欲しない事柄』にあたると思います。



したがって、生徒の受験校を載せた今回の学級通信は、生徒のプライバシーを侵害するものだったということになるでしょう」



佃弁護士は「『みんなで受験を乗り切ろうと思った』という先生の気持ちはありがたいですが、受験する生徒の微妙な気持ちに、もう少し思い至ってほしかったという気がします」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
佃 克彦(つくだ・かつひこ)弁護士
1964年東京生まれ 早稲田大学法学部卒業。1993年弁護士登録(東京弁護士会)
著書 「名誉毀損の法律実務〔第2版〕」、「プライバシー権・肖像権の法律実務〔第2版〕」
主な経歴 日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長、東京弁護士会綱紀委員会委員長、最高裁判所司法研修所教官
事務所名:恵古・佃法律事務所



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