異才・幾原邦彦監督が放った問題作『輪るピングドラム』。1995年に某教団がおこした、某事件をオマージュにするという、社会的タブーを犯した衝撃作。何話見ても、本筋が見えないミステリアスなストーリーが魅力です。
【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】
簡潔にいいますと、いらなくなった子どもを消す「こどもブロイラー」がある世界、そしてそんな世界をぶっ壊すためにテロを起こした「ピングフォース」と、振り回される子どもたちのお話なのです(少々語弊あり)。
今回ご紹介する「荻野目苹果」(おぎのめりんご)は、櫻花御苑女子高等学校に通う16歳。両親は離婚しており母親と二人暮らし。得意料理はカレーです。明るく元気で性格もよい優等生で顔も結構可愛い方、しかし胸はちょっと残念・・・そんな女の子です。
■カレーにはりんごが付きもの。りんごは宇宙そのもの
子どもとは思えないほど人格者だった、姉の桃果が亡くなった日に生まれたため、自分を「桃果の生まれ変わり」と信じ、毎日頑張って“いい子”をやっています。桃果の月命日は、桃果の好物であるカレーを食べる「カレーの日」としていた荻野目家。カレーを喜ぶ苹果を見て、桃果を思い涙する母。そして苹果の誕生日を祝おうとしない母をなじる父・・・。
離婚してからは、父の代わりに桃果の幼馴染の多蕗がカレーの日に荻野目家に通うようになります。自分の誕生日に、亡き姉の友人が招待される現実を、苹果はおかしく思うことはありません。それが自然なのだから。苹果が桃果と一つになれば問題は解決し、不仲な両親は元に戻り、すべてがうまくいくと信じている、とっても健気な女の子なのです。父は再婚し、母は「カレーの日」を忘れてしまう始末なのに・・・。
■一見、本格的ストーカー。その実態は・・・!?
苹果は、池袋でビルによじ登ってツバメの巣の写真を撮り、バードウォッチングが趣味の多蕗に見せ、その後、多蕗宅の床下に忍び込み盗聴します。挙句の果てには床下に住みます・・・。プリンセス・オブ・ザ・クリスタルいわく、「脳みそど腐れゲロ豚ビッチ」な行動ですが、実は苹果は、たいして多蕗を好きではありません。「桃果の好きな人」が「多蕗」だったから好きなのです。「多蕗の気を引くために、彼の好きな『ツバメ』の巣の写真をとった」というわけではなく、桃果の書いた未来日記に「池袋でツバメの巣の写真をとって多蕗くんに見せたらおどろいていた」と書いてあったから実行したまでなのです。ストークも盗聴も、未来日記の通りに実行し、「プロジェクトM(マタニティ)」を実現するための手段にすぎないのです。
■強く優しくたくましく
話が暗く複雑になるにつれ、桃果の影や、多蕗への疑似恋愛感情を脱ぎ捨てた苹果は、アグレッシブに戦い輝き、視聴者にとっての安らぎにさえなります。絶対神のように勝手なことを言うプリンセス・オブ・クリスタルに対し、自力で手錠を外し、逆さ吊り状態から攻撃をしかけるなど、実は力強くとても行動的なのです。プロジェクトを成功させるために、晶馬を引きずり奮闘する姿は、ストーカーなのになぜか応援したくなるのです。
自分を守り、支えてくれた晶馬に対する気持ちに気付き、「愛による死を見ずから選択」する強さ。桃果の真似をしなくても、桃果と同じ行動をする姿を見ていると、彼女の幸せを祈らずにはいられません。ストーカーですが。
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★記者:藤原ユウ(キャラペディア公式ライター)
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