iPhoneからiCarへ?アップルが電気自動車を開発する理由

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2015年03月20日 11:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

これまで、コンピュータの分野で数々のイノベーションを起こしてきたアップル。この次に狙っているのは自動車と噂されている。アップルが破壊的イノベーションを巻き起こすのか、そのとき既存自動車メーカーはどう対応するのか。これまでの情報を元に、考察してみたい。

なぜアップルが自動車産業に参入するのか?

そもそも、アップルが自動車産業に参入するということ自体が一見飛躍のようにみえる。これまでの業務範囲はアップル・コンピュータから始まって、『Macintosh』、『iPod』などいずれもコンピュータを使ったものだったからだ。

ところが、いつしかアップルの社名からコンピュータの文字が消えている。それは『iPhone』を発表し、スマートフォン市場に参入した2007年のことだった。冷静に考えればパーツ自体はそれまでのPCからキーボードを除いた構成で、大枠で“コンピュータ”であるといってもいいだろう。

しかし、オンラインでソフトウェアを販売するサービス『 iTunes Store』や、のちに出るクラウドサービス『 iCloud』を含めて考えると、ハードウェアを想起させるコンピュータという言葉はすでにオールドファッションであったといえなくもない。

そこで、コンピュータを名乗るのをやめたわけだ。IT業界から自動車業界に転身した人で有名人といえば、テスラモーターズのイーロン・マスク氏だ。学生時代から“インターネット”、“クリーン・エネルギー”、“宇宙”の分野で活躍したいと考えており、オンライン決済プラットフォーム『Paypal』を立ち上げるなどITサービスを展開したあと、電気自動車専業メーカーのテスラに注力している。

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ITと自動車、一見無関係にみえるこの両者であるが、すでに自動車のほとんどの部品は電子パーツと通信で構成されており、走るコンピュータといっても過言ではない。唯一残ったのがエンジンとガソリンタンクであるが、EVではモーターとバッテリーに代わるので、すべて電子機器で構成できる。しかも、自動運転技術などますますコンピュータの割合は増えていく。

『アップル・タイタン計画』とは

2020年頃、アップルはEVを発売することを目標としたのが『タイタン計画』である。数百人規模の研究者、開発者を必要とするプロジェクトのため、自動車メーカー、バッテリーメーカーからヘッドハンティングするなど、かなりアクティブに採用を進めており、特にバッテリーメーカー・A123 Systemsからの引き抜きは訴訟沙汰にもなっている。EVでのバッテリーはコアテクノロジーである。テスラではパナソニックと提携し、電池供給を安定的なものとした。

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アップルがどのように電池を調達するか興味は尽きないが、A123 Systemsの技術者を引き抜いていることから、他社から供給を受けるのではなく、自前で立ち上げる可能性も高い。

こういった流れから、2015年3月10日に開かれたアップルの株主総会では「テスラを買収してもらいたい」という意見が出たほどである。膨大な投資をかけて行うよりも、買収のほうが安くつくのであればそれも一つの手であるからだ。

果たしてEVが主流になるのか?

地球温暖化排出ガスゼロのEVは環境対応車として最適だ。しかし、今の課題はその航続距離の短さと、充電スポットの整備が追いついていないことである。航続距離は搭載するバッテリーの性能、そして容量で決定づけられるが、エネルギー密度が飛躍的に高まるイノベーティブなブレークスルーがない限り、大きく重いバッテリーを車体の腹に抱えるしかない。

2シーターの『テスラ・ロードスター』は運転席の真後ろに、セダンタイプのテスラモデルS、日産リーフ、BMW i3は床面をすべてバッテリーにあてている。航続距離を稼ぐには、このバッテリー容量を上げることだけがその手段だ。そのため502kmと長い航続距離を誇るテスラモデルSの車体が想像以上に巨大で、都内の狭い道は到底通りたくなくなるほどだ。

さらに問題なのは、充電スポットが限られること、そして充電には急速充電でも20〜30分、満充電には1〜2時間必要なことだ。これでは安心して自由にドライブにいくことができず、これが普及を妨げている障害のひとつとなっている。

PHVやFCVという選択肢

プラグインハイブリッド(PHV)であれば、そこまで大きなバッテリーを抱えなくても済む。近距離のコミューター用途としてはEV走行、週末の小旅行といったロングレンジではエンジンを併用することで効率の良い走行が可能だ。

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また、燃料に水素を使った燃料電池自動車(FCV)であれば、地球温暖化排出ガスゼロという点でEVと同様だが、1回満タンにすれば約600kmの航続距離を誇り、しかも充填には数分しかかからないという短かさが売りだ。

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こういった特徴から、トヨタではハイブリッド車とPHV、そしてFCVを、普及のタイムスパンと航続距離といったマトリックスからお互いに補完し合うものと位置付けている。

アップルのEVはイノベーティブか?

EVの課題はバッテリー、航続距離と充電時間にあると考えられる。ガソリン自動車に匹敵するためには400〜500kmのロングレンジの航続距離と、数分の充電時間でないと同等にはならない。しかしそれは“同じもの”を作ろうとした場合だ。もしかしたらアップルはこれまでやってきたように、モータリゼーションのライフスタイルも根幹から変えようとしているのかも知れない。

それまでポータブルカセットプレイヤー、CDプレイヤーで聴いていた音楽体験。自分のライブラリから持ち歩くものを選択して持っていく、というスタイルから、ライブラリまるごとHDDに全部格納して持ち歩く、そしてオンラインで音楽を購買して聴くなど、それまでの音楽ライフスタイルを打ち破ってきたアップル。常識を覆すことで、EVのデメリットが霧消してしまう可能性もあるだろう。

カーシェアと組み合わせて、iPhoneをかざすだけでいつでも利用できるEVが満充電の状態で貸し出しスポットに置いてあれば、ユーザーは充電を意識せずに自由に使うことができる。

アップルが何をしようとしているかまだわからないが、単なるEVメーカーになることはないだろう。必ずやサービスと組み合わせたものになるに違いない。今後の動きに期待したい。

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