日常の動作を行うのに大切な「関節軟骨」
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歩いたり、しゃがんだり・・・何気ない日常動作でも負担がかかる関節。膝や肘などの関節には、骨と骨が接する箇所にクッションの役割を果たす「関節軟骨」という組織があり、日常の動作をなめらかに行うのに役立っています。
しかし、この関節軟骨、長年の負担ですり減ってしまったり、交通事故など怪我によって損傷してしまうと、クッション性が弱まり、スムーズに動かせなくなるほか、動かしたときに痛みを感じるようになることがあります。その治療法のひとつに、軟骨細胞を損傷部に移植する方法がありましたが、高品質で十分な量の軟骨細胞を用意するのは難しく、数を増やそうとすると安全性が得られないなどの問題がありました。
そこで、京都大学の妻木範行iPS細胞研究所(CiRA)教授、山下晃弘同研究員らの研究グループは、ヒトiPS細胞から軟骨組織を作製。マウスやミニブタへ移植して、その安全性を確認しました。
マウスやミニブタを用いた研究で生着、安全性を確認
これまで、ヒトiPS細胞から軟骨細胞を分化誘導する培養方法は報告されていましたが、安全性の高い軟骨組織の作製まではいたっていませんでした。今回の研究では、まずはヒトiPS細胞を用いて培養した軟骨細胞から軟骨組織を作製し、免疫不全のマウスやミニブタへと移植。すると、ミニブタの生体内の軟骨と融合して一か月間にわたり生着し、損傷部を支えることができたのです。また、マウスの研究で腫瘍の形成や転移が認められなかったことから、その安全性と品質も確かめることができました。
この発見は、iPS細胞を用いた関節軟骨損傷の治療法開発へと向けた研究の重要な一歩といえます。今回は、研究用の試薬を使った検査ですが、今後は人への臨床応用を目指して、有効性や安全性の確認などの研究が重ねられる予定です。(笹田久美子)
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