ヤマハとヤマハ発動機が取り組んでいる、制約に縛られることなくそれぞれの作法やアイデンティティでデザインを提案する『project AH A MAY(プロジェクトアーメイ)』。
楽器を手がけるヤマハと、バイクを手がけるヤマハ発動機がお互いの分野のデザインをするというこのプロジェクトから、これまでにない楽器2台とバイク2台が生まれた。これらは先日フランスで行われた『第9回サンテティエンヌ国際デザインビエンナーレ2015』にも出展された。
バイクのヤマハが手がけた楽器
ヤマハ発動機は、2人で演奏するマリンバ『FUJIN』と、球体のドラム『RAIJIN』を発表した。
『FUJIN』は、バイクでいうところのタンデム仕様。円形にマリンバの鍵盤を配置し、ひとりが鍵盤を回し、ひとりが演奏を担当するようになっている。見た目にスピード感があり、バイクの持つスピード感、疾走感が感じられる。
『RAIJIN』は、球体のフレーム内にドラムの各パーツが配置されたもの。通常のドラムセットとは異なる配置のため、これまでにないダイナミックな演奏が可能になる。
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楽器のヤマハが手がけたバイク
一方ヤマハは、計器類を排除したバイク『√(Root)』と、自走の際に充電が行える電動アシスト自転車『0±0(0 plus minus 0)』を発表。
『Root』は、ライダーの視界から計器類を排除し、風景と一体化できるデザインを採用。また、馬をモチーフとした流線型のデザインにすることで、自然と乗り物の一体感を目指している。
『0 plus minus 0』は電動アシスト自転車となっている。専用充電スタンドに設置してペダルを踏むことで充電。充電した電気を持ち出して、楽器をはじめとする電気を使用する機器で使用できる。自転車を通じて電気とポジティブに向き合うライフスタイルを実現する。
デザインの可能性を再確認できるプロジェクト
このプロジェクトは、幅広いプロダクトを開発するヤマハグループならではのもの。まったく異なるジャンルがクロスオーバーすることで、今までにはない新しい発想の製品が生まれるという、とても興味深いプロジェクトだ。
楽器もバイクも、デザインに関してはある程度のフォーマットがあるものだ。必要な機能を満たし、合理的なデザインを突き詰めると、同じようなデザインに落ち着くのは当然のこと。しかし、他ジャンルから見れば、まだまだデザインに関しては余地があるということを感じさせてくれるプロジェクトと言える。
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特に今回の2つの楽器に関しては、マリンバとドラムという既存の楽器であるにも関わらず、新しいジャンルの楽器のような印象。どちらもこれまでとは違う演奏方法が必要となるため、楽器の再発明と言ってもよいかもしれない。
このように、“既存のデザイン”を変えていくということは、製品そのものに新しいコンセプトが生まれる可能性を感じる。今後、どんなコンセプトデザインが飛び出すだろうか。『project AH A MAY』への期待は高まる一方だ。