巧みな「うそメール」で高齢者から金を巻き上げる 「サクラサイト」被害者が増加中

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2015年03月28日 12:21  弁護士ドットコム

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占い師や迷子を探す親に扮した「サクラ」が、巧みなやりとりで「カモ」をその気にさせ、利用料をまきあげるーー。そんな「サクラサイト」に、高齢者たちが迷い込んでいる。こうした詐欺的サイトは「異性との出会い」をエサにするだけではなく、さまざまなシチュエーションを偽装した「うそメール」をきっかけに言葉巧みに高齢者をサイトへといざなっているのだという。


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●高齢者からの相談は被害が高額に・・・


サクラにだまされ、2000万円もの利用料を支払った男性(50代)が、出会い系サイトの運営会社を訴えた事件がある。東京高裁は2013年、このサイトが「詐欺にあたる」と認め、弁護士費用を含む約2234万円の支払いを運営会社に命じた。



この男性の弁護団に加わった石渡幸子弁護士は、最近の傾向として「サクラサイトに関する相談件数は減少しているものの、高齢者からの相談は、ここ数年で増えているように思います」と話す。



「被害時期が数年前だったり、被害に遭った期間が長いケースもあるため、『最近突出して高齢被害者が増えた』というものではありませんが、高齢者の相談は、被害金額が高額であるため、印象に残りやすいように思います。



2010年ごろまで、高齢者からの「サクラサイト被害」の相談の経験はありませんでした。ところが、ここ数年、60代から70代の被害者の相談も受けるようになっているのです」



どうして増えてきたのだろうか? 理由の1つは、高齢者でもインターネットを利用する人が増えたことで「アドレスが流出するなどして、出会い系サイトから勧誘を受ける機会が増えているのではないか」と、石渡弁護士はみている。



「会社の元同僚やゴルフ仲間との連絡にメールを利用している方も増えていますし、競馬や株や旅行をはじめ、さまざまな情報収集のためにウェブサイトの閲覧をされています」



サクラサイト被害の相談が増えた理由として、もう1つ指摘できるそうだ。



「サクラサイト被害が『詐欺被害である』という認識が広がったため、『だまされた』と気づいたときに相談へ向かいやすくなったのも、一因かと思います」



●増える「対戦型」と「占い・鑑定型」


かつて、サクラサイトといえば、「芸能人からの直接メール」や「セレブ夫人からの資金提供話」などの身の上相談から始まるパターンが多かった。石渡弁護士によれば、最近の傾向として、次のような型が増えている。



「1つめは『対戦型』。劇場型と言われるように、最近のサクラサイトでは、複数のサクラが登場するパターンが多いのですが、その中で有料ゲームでのやりとりを強いるものが目につきます。これは、被害者を対戦型ゲームに参加をさせる形式となっていますが、被害者以外の参加者は『サクラ』なのです。



2つめが『占い・鑑定型』。占い師や鑑定士からメールが届き、被害者は占いや運勢鑑定のつもりで、メールの送受信を始めます。そのうち、『運気が落ちた』や『オーラが消えている』など不安をあおるようなことを言われ、『庭のはっぱを取ってきて太陽にかざして』『黄色の服を身に着けて』など、いろいろな指示がメールで届くようになります。



被害者は、指示通りの行動をした証拠写真をメールで返信したり、呪文と言われた単語を何回も返信させられます。しかし、これも要するに『有料のメール送受信』を頻繁に行わせて、被害者からポイント料の名目で高額の利用料を奪おうとするものなのです」



このような詐欺を行う側は、被害を隠ぺいするための対策も抜かりないようだ。



「アドレス交換を実際にさせたり、電話で話をさせるなど、詐欺とわかりにくくするための偽装工作がされるケースもあります。そのようにしながら、結局は連絡がつかなくなるパターンが多いです。また、弁護士対策なのか、やり取りの最中でメールをすべて消去させていく手口も増えています」



●人の役に立ちたいという心が裏目に出ることも・・・

 


石渡弁護士は、印象に残っている被害事例として「離れた場所に住む息子に連絡を取るため、メールを始めたばかりの女性のケース」をあげる。



「その女性は、メールアドレスを名前と単純な数字にしていたせいか、『間違いメール』がよく届いていたんです。見知らぬ相手から『アドレス変わりました』などと連絡がくるたびに、いちいち『間違いですよ』『私ではありません』と返信をしていたそうです。



ある日、娘と公園ではぐれたという男性から『娘を探しています、助けて下さい』というメールが届きました。そのすぐ後、今度は知らない女の子から『お父さんとはぐれちゃった』と書いてあるメールを受信した被害者の女性は、女の子の居場所を最初の男性に連絡しました。



男性は、非常に感謝をして、謝礼を渡すと言い出します。そして、謝礼支払いの名目で複数回のやりとりをさせられ、高額の利用料を奪われました。出会い系サイトと知らずに、有料サイトでメールの送受信をさせられ続けたのです。



ちなみに、最初の『娘をさがしています』を始め、すべてがサクラサイトの勧誘メールであり、娘とはぐれた男性も、公園で父とはぐれた女の子もサクラであるという『劇場型』です」



出会い系サイトには、メールを返信するのにお金がかかり、メール交換の量が増えれば増えるほど、利用金額が増えていくタイプのものが少なくない。そのような仕組みを使って、高齢者から利用料をだましとっているのだ。



●「あなたが当選しました」というメールで勧誘


そのほか、「いつか宝くじが当たるといいな」と夢みている高齢者をターゲットにした詐欺もある。



「『あなたが当選しました』というメールが届く『当選型』と呼ばれるものです。『ロトナイン』『ドリームジャンボ9000万』など、宝くじと紛らわしい名称がついています。



これも『自分も当選しました!』という自称当選者や『あなたが手続きをしてくれれば、私たちももらえる』という自称当選グループ仲間が、複数連絡を寄越して被害者に当選手続きを強いてくるのです」



この当選型の場合も、手続きが有料で、無意味な返信を多数回させられ、さまざまな名目で課金されていくのだという。



一方、被害者の「人の役に立ちたい」という心につけこむケースもある。「元経理担当者」の被害者のもとに、自称「女性経営者」が「会社をたちあげたばかりなので、相談にのってください」というメールを送り、言葉巧みにすり寄った。



「被害者は『若者の手伝いができるなら』と返事を出して、相談に応じていました。すると、自称経営者からは『被害者の経理のアドバイスがあったおかげで、取引が成功した。あなたを社員か顧問としてお迎えしたい』という申し出が届くようになります。



その後、さまざまな口実で、メールをさせられ、結果的に100万円以上もの被害にあいました。これも出会い系サイトにメールで誘導されたケースです。このように、出会い系サイトとわからずに誘導され、被害にあうケースが多くあります」



●自分の親を被害者にさせないためには?


このように、さまざまなパターンで高齢者をワナにはめようとする「サクラサイト」。はたして、自分の親は大丈夫だろうかと不安になる人もいるだろう。私たちは、どんな対策がとれるのか。



「深夜や早朝といった、不自然な時間帯に携帯やパソコンをいじるようになったら、気をつけてください。また、コンビニで高額の決済をしたり、ATMで振込をしている痕跡がどこかにあったり、借金の申し込みをしていた場合は、要注意です。



だまされている最中は、詐欺にあっている事実を認めず、むしろ隠そうとしますから、ご家族の気づきが重要です」



最後に、石渡弁護士はこう指摘した。



「サクラサイト詐欺に遭う方の相当数は、自分で出会い系サイトに登録したわけではない、アドレスを盗まれた方々です。



『無料』と称する占いサイトやアルバイト応募サイト、懸賞サイトなどの中には、メールアドレスや個人情報を入手して、これらのデータを出会い系サイトの運営業者に売りつける『名簿屋』や『広告業者』が存在します。



うっかり無料サイトだと思って、不用意にアンケートに答えたり、アドレスを教えたりすることは、十分に気を付けて下さい」



石渡弁護士の所属する「クレジット・リース被害対策弁護団」HPはこちら。


http://credit-lease.com/



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
石渡 幸子(いしわたり・ゆきこ)弁護士
サクラサイト被害、リース被害や投資用マンション被害などを扱う専門集団クレジットリース被害対策弁護団に所属。サクラサイトチームで、サクラサイトの不法行為責任や役員責任を認めたフロンティア21事件などを扱う。
事務所名:土曜会法律事務所
事務所URL:http://doyoukai.info/



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