水素リーダー都市の福岡で「下水で走る」エコカー登場か

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2015年03月29日 17:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

街は下水を排出する。その下水で走るエコカーがあったらどうだろう。街で暮らす人と車がエネルギーでつながっている感覚になるかもしれない。

以前FUTURUSでは燃料電池自動車(FCV)のまとめ記事の中で、下水汚泥から水素を作り出し、FCVに充填しようという福岡市の取り組みについて触れた。今回はその内容をより詳しくお伝えする。

水素社会というと壮大かもしれないが、水素エネルギーとみなさんの街との距離感がなくなってくるのではないだろうか。

下水処理場が地産地消エネルギーの供給地に

下水処理の工程では下水バイオガスが発生している。実はその多くは有効利用されているのだが、約3割が未利用のままだという。日本全国の未利用分が有効利用されれば、製造される水素の試算量は年間で約1.3億Nm3にもなり、期待は大きい。

下水バイオガスから水素を作り出す流れは、次の3ステップに大きく分けられる。

(1)下水バイオガスから二酸化炭素を除去して高濃度メタンガスを回収

(2)メタンと水蒸気の反応で水素を製

(3)吸着剤で二酸化炭素を除去して高純度水素を精製

これらのステップを担う装置を既存の下水処理施設に設置し、水素ステーションをつなげる。そうすると遠くから資源を持ってこなくても地産地消のエネルギーをFCVに供給できるのだ。

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二酸化炭素は地域の農業で有効活用

水素を作るステップのなかで、“二酸化炭素を除去”するとお伝えした。その二酸化炭素はどうするのか。福岡市の取り組みでは、二酸化炭素を液化して回収する設備が導入されているそうだ。

この二酸化炭素は地域のハウス栽培施設に届けられ、農業に活用される。農業ではハウス栽培のために二酸化炭素を購入することもあるが、ここでは二酸化炭素も地産地消されることになる。

結果、このシステムは温室効果ガスの排出量よりも吸収量の方が多くなる“カーボンポジティブ”なものとなる。両者が同量になることを指す“カーボンニュートラル”よりもさらに低い環境負荷で水素を安定的に供給することが可能になるのだ。

福岡から全国へ

今回ご紹介した取り組みは国の実証事業だ。下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)のなかで選定された産官学連携のプロジェクトで、『水素リーダー都市プロジェクト』と呼ばれる。

産官学の役割分担では福岡市が用地とバイオガスを提供する。そして九州大学と三菱化工機株式会社が水素の製造技術面を、豊田通商株式会社が事業化を担当するという。地域農家も含めると産学官民が連携するかたちとなる。

水素製造はこの春から実際に開始するという。この実証実験が実用化されれば、他の下水処理場にも水素ステーションが作られ、現在トヨタが販売するMIRAIといったFCVがより普及しやすくなるかもしれない。みなさんが街の下水で車を走らせるようになる頃には、水素社会はわたしたちのより身近なものになっているだろう。

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