ちょっとヤバい「タバコモザイクウイルス」が発電所の効率UPに貢献するかも

1

2015年04月04日 11:30  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

19世紀のアメリカにおいて重要な農産物であったタバコを脅かしたウイルス『タバコモザイクウイルス』の意外な活用法が開発された。発電所をより安全に、ビルの冷却や暖房をより効率よく、さらに電子機器をよりパワフルにするのに貢献するというのだ。アメリカのドレクセル大学の研究者が発表した。

どうやって熱交換の効率を上げるか

同大学のマシュー・マッカーシー博士らは、沸騰、蒸発、凝縮といった液体の相転移に注目した研究を行っていた。これらは現代社会の様々な面で活用されている。蒸気タービンは発電所に使われているし、蒸留は水の浄化として信頼されている方法のひとつだ。また、冷房などにおいても潜熱の利用は欠かせない。

したがって、この相転移による熱交換の効率を少しでも向上させることができれば、社会が受けるメリットは大きいと考えたのだ。

熱交換の効率改善のためにマッカーシー博士らが注目したのは、液体と接触する熱交換器の表面だった。液体を沸騰させると、臨界熱流束(CHF)という状態が発生する。鍋で水を沸騰させると泡が発生するが、その発生した蒸気の泡がうまく液体に追い出されることができない状態のことだ。

このCHFが発生すると、蒸気(気体)が熱源と液体のあいだの熱交換を邪魔するので、液体に熱が伝わりにくくなる。そうすると熱交換器の表面温度が急激に上がり、“バーンアウト”という状況が起こる。CHFとバーンアウトが起こると、ふたたび熱交換器の表面に水を触れさせることは困難になる。熱交換器の破壊につながるし、熱交換の効率は大幅に下がる。

マッカーシー博士らのチームは、このCHFの発生をふせぐか、または遅らせるために、熱交換器の表面をナノ構造物でコーティングすることを考えた。蒸気が発生してもナノ構造体のなかにすみやかに液体を引き込むことで熱交換の効率を上げようというものだ。

これは、速乾性のスポーツウェアにヒントを得たものだ。毛細管現象などによって水を吸い込む作用を使って、CHFの発生を防ごうという考え方だ。そして、そのコーティングに使うナノ構造体として、冒頭に上げたタバコモザイクウイルスに白羽の矢が立ったのである。


動画を別画面で再生する

ウイルスが表面コーティングを行う

『タバコモザイクウイルス』は、シンプルな一本鎖RNAを持つウイルスだ。実はマッカーシー博士は、メリーランド大学での研究者時代にバッテリーの電極のナノ構造体に使って以来、この“タバコモザイクウイルス部隊”を活用していた。そして独自に遺伝子操作をした『タバコモザイクウイルス』も育てている。

TMV01

彼独自の『タバコモザイクウイルス』は、様々なものと化学的に結合する性質を持っている。たとえば、ステンレスやアルミ、銅、金、シリコン、ポリマー等と結合することができるのだ。そして、対象物と結合した『タバコモザイクウイルス』は、その表面に強固なヒゲ状のナノ構造体の層を形成する。コーティングには電力も動力も熱も、特別な設備も必要ないという。

一度コーティングされたら、そのウイルスは不活性になる。そしてマッカーシー博士いうところの“金属の芝生”を形成するのだ。この“芝生”が毛細管現象を起こして、熱交換器表面に蒸気が発生しても液体を引き込み、液体に熱を伝え続けることで熱交換効率を向上させる。そうやってCHFの発生を遅らせることができるのだという。

予備テストにおいては、このコーティングを施した表面では、CHFの発生が240%も増加した。これはCHFが発生するまでの最大熱交換比が、コーティング前の表面と比べて3倍にもなったことを意味するという。さらに、沸騰工程においてもこの“金属の芝生”コーティングが、コーティング前のものと比べて3倍の効率を示す結果が得られた。

沸騰における熱交換の原理の研究というだけでなく、この技術は将来の新しい熱交換器の設計や高性能な熱管理システムに適用することもできます。あるいは、ウイルスによって自律形成されるナノ構造体によって、低コストで既存のシステムをより効率のよいものに改良することもできるでしょう。

とマッカーシー博士はいっている。

エネルギー効率を高めるソリューションは熱交換器の表面という意外なところにも存在していたようだ。ひょっとすると将来の熱交換器はみんなウイルスの手助けで製造されるようになるのかもしれない。

このニュースに関するつぶやき

  • ヤバいね!��(��ū)
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

前日のランキングへ

ニュース設定