東京都のHIV 感染者、過去最高の現実

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2015年04月19日 10:00  JIJICO

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日本を含む東アジアでHIV感染者増加が止まらず


近年、世界的にはエイズの感染拡大防止策と啓発活動が効果を上げ、その感染者数は劇的に減少してきました。しかし、わが国を含む東アジアでは例外的に感染者の増加が止まりません。


先日、東京都は平成26年のHIV感染者とエイズ患者の新規報告数を発表しました。それによると、前年と比べてHIV感染者は56件増え、特に20代のHIV感染者が148件と、昨年より45件増えて過去最高となりました。


発症すれば決して治ることのない感染症


ご存知の通り、エイズはHIV (human immunodeficiency virus:ヒト免疫不全ウイルス) に感染し、数年から10年の無症状期を経て発症し、徐々に免疫力を低下させます。やがて、普通の人では滅多にかからない日和見感染症や悪性腫瘍を引き起こします。


最近、治療薬の開発が進んで長期に生存できるようになったとはいえ、一旦発症すれば決して治ることのない感染症です。このまま若者の感染拡大が続けば、将来日本のエイズ患者増加に歯止めがかからなくなります。


教育や啓発に取り組むことが重要


東京都の報告書を詳しく見れば、新たに見つかったHIV感染者とエイズ患者の合計512件の内、日本国籍が90.6%、男性が96.9%、同性間性的接触が72.9%を占めています。一方、異性間性的接触が昨年より27件増え、静脈注射による感染も4件あります。


HIV感染者は20〜30代、エイズ患者は30〜40代に多く見られます。今回の東京都の傾向が他の地域にも当てはまるかどうかは、もっと幅広い情報収集と分析が必要ですが、引き続き学校や保健所で、性感染症の予防や禁止薬物についての教育や啓発に取り組むことの重要性はいうまでもありません。


HIV感染者の療養だけでなく、理解と支援の醸成が求められる


例えHIVに感染してもエイズを発症する前に治療を開始すれば、それだけ健康上のメリットは大きいといわれています。日本では多くの自治体が無料でHIV検査を行っていますので、もし感染が疑われるようであれば、早めに検査を受けましょう。


自らの感染の有無を知り、HIV感染者は可能な限り早期に治療を開始することが大切です。そして、HIV感染者の療養のみならず、仕事や生活に対する理解と支援の醸成が、今わが国の社会全体に求められています。



(古家 敬三・医学博士)

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