ジャスティン・ビーバーがICPOを通じて「国際手配」 もし来日したら逮捕される?

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2015年04月22日 15:11  弁護士ドットコム

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カナダ出身の人気歌手ジャスティン・ビーバーさんが今年4月、アルゼンチンの裁判所から「国際手配」されたとして話題を呼んでいる。


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報道によると、ビーバーさんは2014年11月、60日以内にアルゼンチンの裁判所に出廷するよう命じられたが、無視。アルゼンチンの裁判所の書記官は、ICPO(国際刑事警察機構、インターポール)を通じて国際手配をしたと発表し、「姿を見せなかったので逮捕する。世界中どこにいてもだ」と述べたという。



ビーバーさんにかけられた疑いは、2年前のブエノスアイレスで、ボディーガードに命じて、ナイトクラブの外で待ち構えていたカメラマンのカメラなどを奪わせたというものだ。



ビーバーさんはICPOを通じて「国際手配」されているということだが、どういう意味なのだろうか? もしビーバーさんが来日したら、日本で逮捕される可能性があるのだろうか? 国際的な刑事手続きにくわしい中村勉弁護士に聞いた。



●インターポールとは?


「ICPOというと、漫画やフィクションでは『国際警察』というような描かれ方がしばしばされますが、ルパン三世の『銭形警部』のようにICPO自体が捜査や逮捕を行うということはありません。



ICPOには、日本を含む世界190カ国・地域が加盟しています。その役割は、あくまで加盟国間の連絡機関です。たとえば、犯罪捜査に関する各国間の連携・調整業務や、捜査情報の共有等の活動を行っています」



すると「国際手配」といっても、ICPOの職員が、容疑者を逮捕するために外国に出向いたりはしないわけだ。



「『国際手配』は、ICPOが各国に『容疑者を逮捕して』と依頼することです。



ICPOにできるのはそこまでで、実際の逮捕は、その国の警察官が、国内法に基づいて行うことになります。



各国にはそれぞれ国家主権があります。外国の組織が勝手に捜査を行うことは、主権侵害となってしまうため、許されないのです」



ビーバーさんは今後、どうなるのだろうか?



「今回のビーバーさんのケースで、アルゼンチン政府は、同氏の国際逮捕依頼をICPOの事務総局に申請したようです。



そうなると、『赤手配』と呼ばれる国際逮捕手配書が、ICPOから発行される可能性が出てきます」



仮に赤手配が出た後、ビーバーさんが来日したとしたら、日本の警察はビーバーさんを逮捕するのだろうか?



●赤手配書だけで逮捕はできない


「このICPOの『赤手配書』そのものに基づいて、日本の警察が即座にビーバーさんを逮捕できるかというと、答えは『ノー』です」



どうしてだろうか?



「ICPO加盟国の中には、ICPOの国際逮捕手配書そのものに基づいて、被疑者を逮捕できる国内ルールがある国もあります。



しかし、日本はそうではありません。日本の刑事訴訟法は、国際逮捕手配書自体に基づく逮捕を認めていません」



そうすると、日本ではビーバーさんを逮捕できない?



「日本では、被疑者を逮捕する場合には、裁判官の発付する令状が必要ですが、国際逮捕手配書はこの『令状』には当たりません。



国際逮捕手配書はあくまで、日本の警察に身柄拘束を要請、依頼する文書でしかなく、この国際逮捕手配書それ自体に基づいて、日本の警察官がビーバーさんを逮捕することはできないのです。



したがって、日本でビーバーさんを逮捕するためには、あらためて日本の裁判所が逮捕令状を出す必要があります」



中村弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中村 勉(なかむら・つとむ)弁護士
東京弁護士会所属。元東京地検特捜部検事。中央大学法学部卒、Columbia Law School卒(フルブライト留学生)、LL.M.(法学修士号)取得。
事務所名:弁護士法人中村国際刑事法律事務所
事務所URL:http://www.t-nakamura-law.com



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