日本最大級の太陽光発電所からみる「エネルギーの将来」

0

2015年04月25日 06:30  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

次世代の主要エネルギー源として注目を集めている太陽光発電。近年は1MW以上の出力規模を誇る“メガソーラー発電所”の建設・運営を手がける企業も増えている。

太陽光で発電するというシステムは、環境に優しく、一度設置してしまえばあとはメンテナンスを行うだけで長期間発電ができるというメリットがある。一方で、日中しか発電ができない、発電量が天候に左右される、出力規模を大きくするためには広大な敷地が必要といったデメリットがあるが、次世代エネルギーのなかでも歴史があり、比較的導入しやすいという面から、現在もっとも普及している次世代エネルギーだ。

設置パネル数は40万枚オーバー

そのなかでも、日本最大級の規模を誇るのが、SBエナジーが三井物産との合弁事業として建設中の『ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク』。場所は北海道安平町遠浅地区。敷地面積は約166ha(約166万平方メートル)。札幌ドーム約30個分、東京ディズニーランド約3個分という、数字だけではまったくもってピンとこないくらいの広大な敷地に、44万4,024枚のソーラーパネルを設置する。出力規模は約111MWで、年間予想発電量は約1億801万4,000kWh。一般家庭の約3万世帯分の年間電力消費量に匹敵する発電量を持つ。

150422Abira-01

SBエナジーは、合弁事業を含めこれまでに19ヶ所の太陽光発電所を建設。ソフトバンク苫東安平ソーラーパークを含め建設予定のものも含めると、26ヶ所となる。出力規模は2MWから20MWクラスのものが主流だが、111MWともなると、SBエナジーはもちろん、日本のメガソーラーとしても群を抜いた規模だ。

この巨大メガソーラーの建設は、2013年10月から着工。しかし、安平町との交渉はSBエナジーが設立された2011年10月から始まっていた。土地があまりにも広大なため、建設前の地質調査や工法の選択などで、かなり時間がかかったとのこと。

太陽光発電所の建設には、いろいろな条件が揃っている必要がある。SBエナジーの国内事業本部 地域貢献推進部マネージャーである浅野泰光氏はこう語る。

この地の魅力は、やはり土地の広さが一番です。規模的に日本最大級の太陽光発電所が建設できる土地を使わせていただけるのですから。また、北海道のなかでも安平町は日照がいいんです。冬でも晴れている日が多く、降雪も比較的少ない。これだけの平坦な土地で、日照がいいというのは、太陽光発電に最適なんです

つまり、太陽光発電所の建設に適した広大な土地が借りられるという幸運に恵まれたということなのだ。

このような大規模の施設を建設するには、自治体の理解も必要だ。安平町の場合は、明治時代に夕張炭鉱から産出される石炭を運ぶための鉄道の主要路線として栄えたという歴史があり、昔からエネルギーと関わりがある町。また、太陽光発電所建設予定地の隣接地には北海道電力の南早来変電所があり、地域としても受け入れやすい環境があったため、比較的スムーズに話が進んだようだ。

雪国ならではのパネル設置の工夫とは

150422Abira-03

安平町に建設中のソフトバンク苫東安平ソーラーパークを訪れた。ソーラーパネルの供給と施工を担当するのは東芝だ。これまで東芝グループとして300ヶ所以上の太陽光発電システムの建設を手がけてきた同社だが、166haもの広大な土地、しかも北海道という寒冷地での建設は新たなチャレンジとなった。

150422Abira-04

まず、設置するパネルの角度。通常の太陽光発電所であれば、一番太陽光を受けやすい角度、10度ほどで設置する。しかし、積雪の恐れがある北海道ではパネル上に雪が積もってしまうため、ここでは30度で設置。また、架台の高さも積雪を考慮し地面からパネルの下辺までを1mと高くしている。

また、作業面でも従来とは違う部分があるようだ。

広大な敷地での作業ということで、現場の管理には細心の注意を払っています。ピーク時には450人の作業員がいるため、管理者を30人ほど配置しています

こう語るのは施工を担当する、東芝の電力流通システム事業部フィールド・建設技術部太陽光発電システム担当の福本章氏だ。

泥炭地ということで地盤が軟弱なため、地盤を改良して強度を高めています。また、通常より杭を長くして、その周りをコンクリートで固めるといった工夫もしています

とも福本氏は説明した。

また、1月から3月中旬までは休工期間にするなど、積雪地域ならではの施工管理を実践しているそうだ。

実際に建設中の敷地内を案内してもらったが、あまりにも広く全貌をつかむことが難しい。この全体の施工管理をするというのは予想以上に苦労するだろう。

150422Abira-05

取材に訪れた3月下旬の時点で、すでに約35万枚のパネルの取り付けが完了。パネルのユニットごとにシリアルナンバーがあり、それをiPadで管理している。一方でまだ基礎工事をしている工区もあった。

工事自体は順調に進んでおり、このままいけば2015年6月には北海道電力との系統連系が始まり、送電テストを開始。12月には正式稼働となる予定だ。

太陽光発電所と地域との関係性

太陽光発電所の建設は、技術的な問題ももちろんだが、地域との関係性を築くことも重要なポイントだ。SBエナジーは、太陽光発電所の建設地域に対して、環境教育を提供することで地域貢献をしている。安平町では、地元の小学校にiPadを使って“未来のエネルギーを見つけよう”というテーマで授業を展開。これが地元の子どもたちにも大好評のようだ。

浅野氏は説明する。

ただ単に太陽光発電の仕組みを学ぶ普通の知識教育ではなく、子どもたちが主体的に創造的に未来のエネルギーを考えるプログラムになっています。子どもたちに身近なものから未来のエネルギーになりうるものを、五感で感じて見つけたものの写真をiPadで撮ってきてもらうのですが、人の笑顔や靴の臭いといったものが出てきて(笑)。ただ、我々が子どものころは太陽光や風などの身近なものからの発電がこれほど普及するなんて考えもしなかった。だから、いま子どもたちが身近なものでエネルギーになると考えたものは将来実現する可能性が多分にあると思っています

150422Abira-06

この授業は2014年度に2回行われ、すでに2015年度も決定している。

安平町もこのソーラーパークには大きな期待を寄せる。安平町のまちづくり推進課主幹、渡邉匡人氏はこう語る。

契約期間は20年。SBエナジーと長い付き合いになりますので、安平町としても連携しながらいろいろやっていきたいと考えています。環境教育はもちろんですが、観光資源としても活用していきたい。安平町には4つの地域がありますが、その主要な観光スポットとして組み込ませていただいて。完成後には見学会などもできるようにしたいなと思っています。そこで、地元の人が説明員として働けるようになれば、地域の雇用活性化にもなります

現在、安平町の各所に道の駅を建設する計画(追分地区)があり、遠浅地区の観光回遊資源に『ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク』も観光スポットの1つとしてその計画に含まれている。問題は、広大な敷地を一望できるスポットを探すこと。これも安平町とSBエナジーが協力して考えていくことになるだろう。ソーラーパークが完成してからも、両者の良好な関係性は続いていくはずだ。

次世代エネルギーの未来は“エネルギーのベストミックス”

次世代エネルギーの代表のように語られる太陽光発電だが、SBエナジーはもっと先を見据えている。

我々としては、“エネルギーのベストミックスを追求する”という目標を掲げています。現在太陽光と風力を行っていますが、地熱もバイオも水素も宇宙も、可能性のある次世代エネルギーはすべて視野に入れている状態。そして、それらを組み合わせて日本に適したエネルギー供給のあり方を作り上げていきたいと考えています

と浅野氏は語った。

自然を利用したエネルギーは、国内で自給自足が可能となる。石油などは中東の政治情勢によって価格が上下するために、不安定な面が多い。それを日本国内でまかなえることができるようになれば、安定したエネルギー供給につながる。

150422Abira-07

そのためには、太陽光だけでは足りない。風力やバイオエネルギー、水素、洋上風力、波力、そして宇宙太陽光発電。あらゆる可能性を組み合わせていく必要がある。

日本最大級のメガソーラーが、最適解ではない。しかし、これから数十年の間、“エネルギーのベストミックス”のターニングポイントになることは間違いないだろう。

    ニュース設定