再生可能エネルギー戦略はいばらの道か?ドイツ政府のウインドファーム建設巨額出資をEUが承認

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2015年04月25日 06:30  FUTURUS

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ドイツ政府が新たに洋上のウインドファームを建設するプロジェクトに300億ユーロ(約3兆8,000億円)を支援することを、欧州委員会が2015年4月16日に承認した。

ウインドファームとは陸や洋上に設置する集合型風力発電所のことで、今回のプロジェクトであれば洋上に多数の風力タービンが並ぶ。完成すればさぞ壮観だろう。

ドイツは現在、脱原発という茨の道を、進んでいるのだ。この姿から日本は学べることが多そうだ。単に真似るのではなく、むしろドイツとの違いに注目すべきであろう。

ドイツ政府の再生可能エネルギー政策

ドイツ政府が支援する今回の計画では、北海の洋上には17基、バルト海の洋上には3基の風力タービンを設置する。各風力発電所の発電範囲は252メガワットから688メガワットで、トータルでは7ギガワットまでの発電能力に至るという。

この計画では2019年末までに全ての風力タービンが発電を開始し、その結果として国立再生可能エネルギー行動計画(National Renewable Energy Action Plan)から与えられた2020年の再生可能エネルギーのシナリオである、年間再生可能電力の13%となる28テラワットを賄えることが期待されている。

欧州委員会はこのプロジェクトが、EUの環境やエネルギー目標に貢献し、不当に単一市場の競争を阻害せず、国家の援助が投資として必要なものに限定されている、ということなどを認めたのだ。

また、同時にこのプロジェクトがドイツの発電市場に新しい電力供給者が参入して、競争にプラスの効果をもたらすとも判断したようだ。

ドイツ政府が挑む脱原発への道は茨の道だ

ドイツ政府は福島原発事故直後の2011年6月になると、2022年までにドイツ国内の全ての原発を停止するという、非常に困難な決定を下した。それほど猶予はないはずだが。今回のウインドファーム計画もその一環とみられる。そして風力発電や太陽光発電に軸足をのせるべく、それらの発電割合を増やしている。

さて、どうなったか。

想像すれば分かることだが、風が止んだり強すぎると発電できない風力発電と、天候の悪化や日が沈めば発電できない太陽光発電という心細い発電方法で国内の電力を賄うには、かなりの技術革新と投資が必要だ。

その結果、電力供給が不安定になったため、それを安定させるために電力会社は、国内で安価に調達できる褐炭による火力発電を増加した。そして利益が出せない構造を作りだしてしまい、電力料金を上げざるを得なくなった。

そう、再生可能エネルギーを利用するには、火力発電などのバックアップが必要になるのだ。また、風力発電の送電網建設も、地元住民の原発は嫌だが送電網の工事も嫌という反対で進んでいないというから事態は深刻だ。特に南部での反対が強いらしい。その結果、北部で発電した電力を、近隣の他国に売らざるを得なくなっているからだ。

結局、ドイツの原発は今でも17基中9基は稼働している。過渡期とも捕らえられるが、これが現実だ。

ドイツの可能性と日本の困難さ

ところがドイツは、日本よりはまだ再生可能エネルギーに強引にでもシフトできる可能性が高い。

前述の通り、国内で安価な褐炭を手に入れることができるし、足りない電気は隣国から調達できる。逆に発電しすぎたら隣国に売れる。電気は発電したら即消費できなければ無駄な商品となるからだ。

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しかし、2018年にドイツは全ての国内炭鉱を閉鎖し、それ以降は輸入で賄うとしている。つまり、ドイツには、再生可能エネルギーが持つ不安定さや非力さなどを補うための手段として技術革新ではなく、国内の火力と原子力、そして近隣国からの電力の輸出入という手段が使えるのだ。

ドイツはこれらの手段で時間稼ぎしながら、再生可能エネルギーの施設増強や送電網の強化、高度な蓄電技術の開発などを進めることができるかもしれない。

さて、以上の様に条件が違いすぎるドイツから、日本は何を学べるだろうか。

このニュースに関するつぶやき

  • 日本でいい気になって作った風力発電がいかに惨憺たるものになっているのかもはっきり言ってくださいね
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