アレを使って「人工光合成」!? 米科学者が継続的エネルギーを生み出す研究を発表

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2015年05月01日 06:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

化石燃料ってなんなんだろう? エネルギー問題にかかわる最新の研究を見ていると少し認識が変わってくる。水と二酸化炭素から酸素と燃料を作ることができれば、化石燃料でさえサステイナブル・エネルギーだといえる気がしてくるからだ。

もし大規模な光合成が可能になれば、地球環境問題へのアプローチは、また大きく変わるかもしれない。そんな研究をバークレー国立研究所の研究者らが発表した。

人工光合成でアセテートを作りだす

ローレンス・バークレー国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校の科学者たちが発表したのは、二酸化炭素を回収し、太陽エネルギーを使って、生分解性のプラスティックや調剤薬や液体燃料を作りだしてしまうというシステムだ。

人工光合成にあたるこのシステムの、根本的な考えかたそのものは特に新しくもないといえるだろう。問題はその方法や効率である。

このシステムでは、半導体のナノワイヤーとバクテリアを使って人工光合成を行う。しかし植物の光合成とちがうところは、二酸化炭素と水から炭水化物を作りだすのではなく、アセテートを作りだすという点だ。アセテートは、現代の生合成でもっともよく使われる材料である。

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材料化学と生物学の融合

このシステムは材料化学と生物学を融合させた技術が使われているという。“ナノワイヤーの森”には『Sporomusa ovata』という二酸化炭素を還元する酵素を作りだす嫌酸素性のバクテリアを棲みつかせる。ナノワイヤーの列が嫌酸素性のバクテリアを守るので、排気管ガスの中でもバクテリアは生き延びることができる。

筆者もこの分野の専門ではないので完全には理解できていないが、以下のような反応が起こるらしい。

太陽の光を吸収すると、シリコンと酸化チタンのナノワイヤーに光励起によって電子と正孔が形成され、別のスペクトルの太陽光を吸収する。そこでシリコンにでてきた光励起電子がバクテリアに渡されて二酸化炭素を還元する。いっぽう酸化チタンに形成された正孔が、酸素を作りだすために水分子を分解する。

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このバクテリア『S.ovata』は、さまざまな化学製品の原料となるアセテートを作るのに、非常に優秀な触媒になるという。さらに『S.ovata』によって作られたアセテートを化学製品へと合成するプロセスには、遺伝子操作された大腸菌が使われる。

このシステムの成功のカギは、太陽光の吸収効率と、触媒作用というふたつの要求を、ナノワイヤーとバクテリアのハイブリッド技術によって、うまく分離させたことにあるという。この手法によってバークレーのチームは、太陽光を模した光を使った200時間の実験で、最大0.38%の太陽エネルギー変換効率を達成したと発表している。これは、植物の葉とほぼ同じだという。

私たちは、この方法が人工光合成の分野における大きな飛躍だと信じています。私たちのシステムは、化学製品や燃料を、地中深くから採掘するのではなく、まったく新しい方法で生成できるようにする可能性を持っています。石油化学工業を根本から変えるかもしれないのです

と、この研究のリーダーのひとりであるPeidong Yang氏はいう。研究チームは現在”太陽エネルギーの変換効率3%”という第2世代のシステム開発に取り組んでいる。

「コストを抑えつつ10%の効率を実現することができれば、商業的に成功する技術になります」ともYang氏は説明する。

10%という変換効率が実現する日が来るのだろうか? もしこういった技術が実用化されれば、人間は温室効果ガスをエネルギー源にすることも可能になる。

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