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主翼の向きをみてほしい。水平ではなく上方に向いていることがわかるだろう。これはただの飛行機ではなく、オスプレイのように垂直離着陸が可能なVTOL機だ。ただし有人機ではない。NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発中のドローンだ。
電動の垂直離着陸機
NASAのラングレー研究所の技術者がこの機体を製作した。バッテリー駆動する10基のプロペラを持ち、遠隔操縦が可能な無人機だ。『Greased Lightning』または『GL-10』と名づけられたこの試作機は、10フィート(約3.05m)の長さの主翼を持ち、ヘリコプターのように垂直離着陸ができ、固定翼飛行機のように巡航することができる。
![gl-10_inflight](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/05/gl-10_inflight-690x388.jpg)
当初の目標は20フィート(約6.1m)の主翼を持つ、ディーゼルと電気のハイブリッド駆動の飛行機を開発することだったが、開発チームは、まずより小さい機体でテストを開始した。
重量2.3kgのシンプルなモデル、つづいて11.3kgのFRP製モデルなど、計12機の試作モデルが作られた。カーボンファイバーでできた重量24.9kgのこの『GL-10』もそのうちのひとつだ。
それぞれの試作機を使って、われわれはコスト削減のための技術的課題を知ることができました。試作機のいくつかはフライトコントロールシステムの設定を試す過程で着陸の失敗によって壊れてしまいました。しかし、そういった失敗によって新しい発見があり、また進歩することができているのです
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と、航空宇宙エンジニアのデイビッド・ノース氏はいう。
空中で飛行モード変換に成功
オスプレイもそうだが、垂直離着陸機は“ヘリコプター・モード”と“固定翼飛行機モード”の空中での切り替えが技術的に難しい。
しかしこの春、『GL-10』はNASAラングレー研究所から2時間ほど離れた軍用基地で、空中で垂直離陸モードから巡航モードに切り替え、さらに垂直着陸モードにもどすというテストに成功した。すでに5回の飛行において、その切り替えに成功しているという。
この『GL-10』には10基のプロペラがついているが、右の主翼についている4基、左の主翼についている4基、そしてテールについている2基はそれぞれ統合して制御される。そのため、操縦においては3つのエンジンを持つ機体と同様に扱えるという。
また、この『GL-10』の離着陸時の騒音は非常に静かで、開発者のひとりビル・フレデリック氏によれば「隣の家のエンジン式芝刈り機よりも音は小さい」という。この『GL-10』に関しては今後、空力効率のよさを証明するテストを行っていく予定になっている。
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垂直離着陸が可能で、飛行機のように巡航できる航空機は、小さい荷物の輸送、あるいは農業のための長時間の監視、測量などの用途に役立てることが期待される。また、よりスケールアップしたモデルも考えられるという。
現在主流のドローンはヘリコプタータイプだが、これは航続距離や連続飛行時間が短い。しかし、このようなVTOLタイプが実現すれば、離発着の場所は選ばないうえにより長距離の移動が可能になる。安全性の確保は絶対条件だが、よりドローンが実用的な用途に役立てられるようになるかもしれない。