上海モーターショーでトヨタが発表!世界初となる現地開発HV

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2015年05月17日 08:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

アジア地域における新車販売がグローバル販売の約17%を占めるトヨタ自動車。同社の場合、国内販売が約25%、米国販売が約30%を占めるなか、欧州販売(約9%)と比べてもその割合は決して小さくはない。

アジア地域最大の市場である中国新車市場で乗用車の6割弱を占めるのが『セダン』系であり、これに最近人気上昇傾向の『SUV』系が3割弱で続く。

またブランド別では約4割を占める中国ブランド車に次いでドイツ車のシェアが約2割と高く、これに日・米・韓国ブランド車がそれぞれ約1割前後のシェアを競っている構図となっている。

EV・PHV重視の中国にHVセダンを投入するワケ

トヨタはその中国で、先頃開催された上海モーターショー2015において『カローラ』と『レビン』の現地製ハイブリッドモデル(HV)を今秋以降に投入すると発表した。

TOYOTA_Uchiyamada

初代プリウス開発責任者でもある内山田会長は世界初となるHV現地開発について「“できること”ではなく“すべきこと”への挑戦」と説明している。


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では “新エネルギー車”である“EV”、“PHV”に補助金を付けて販売を奨励している中国にあえて“HV”を投入するのは何故なのだろうか?

HVは中国の大気汚染解消に最適

実はその背景にトヨタの巧みなマーケティング戦略が潜んでいる。中国では『PM2.5』問題が取り沙汰されているように、大気汚染が深刻化しているのは周知のとおりだが、その原因は工場が吐きだす排煙とクルマの排気ガスが主とされている。

その背景として中国で販売されているクルマには、勿論排気ガス浄化装置が付いているものの、使用しているガソリンの質が非常に低く、大気汚染対策が一向に進んでいないのが現状だ。

業を煮やした中国政府がクルマの電動化に大きく舵を切ったが、価格が高すぎて庶民の手が届かないことや、充電インフラ整備が進まないことから販売はあいかわらず低調な状況が続いているという。

そこで、トヨタは外部充電を必要とせず、ガソリン消費量を減らせるHVの拡販チャンスだと考えた。なにせ、大国の中国で大気汚染の改善に向けたEV・PHVの普及には時間がかかり過ぎる。

政情に配慮しながら車両価格も引き下げる

しかし日本からHVを輸出する形では、以前に反日感情の高まりで販売店が大きな被害を受けた経緯もあり、再燃しないとも限らない。

これらの状況を勘案して、トヨタは世界初となる研究段階から生産に至るまで一貫した現地開発に打ってでるべく、2010年11月に6億8,900万米ドルを投じて江蘇省に研究開発センターを開設、翌年4月から稼動させた。

これはまさに、現地に密着した中国人による中国人のための“もっといいクルマづくり”ともいえるもので、結果的に開発コストや生産コストの低減に大きく寄与する。

TOYOTA_Levin_HEV

これまでのような車両組立てだけの現地化ではなく、HVの中枢となる駆動用2次バッテリーやインバーター、トランスアクスルまでも現地開発・生産することで車両価格の引き下げが期待できる。

HV購入補助金が追い風に

しかも、大気汚染の早期解消を急ぐ中国政府がHVにも補助金を付ける方向で動いている。

かくしてトヨタは絶妙のタイミングを見計らって現地製のカローラとレビンHVモデルを中国市場へ投入、世界販売台数で背後に迫るVWに対してアドバンテージを維持しようという訳だ。

こうしたトヨタの読みが的中するかどうか、今後の動向を注視したい。

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