死に至ることも マダニ感染症の対策

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2015年05月19日 18:01  JIJICO

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マダニに咬まれることにより感染するSFTSとは?


SFTSは、日本では昨年初めて確認された新規ウイルス感染症で、一般的なウイルス感染症状に加え、出血したときに血液を固まらせて止血させる作用のある血小板が減少する疾患です。症状は発熱、全身倦怠感、下痢、嘔吐など消化器症状で、重症化し、死亡することもあります。


ウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染します。このため、患者の多くはマダニの活動期である春から秋にかけて発生しています。患者の咳(飛沫感染)や、周りの空気(空気感染)から感染しないので、SFTS患者のそばに寄っても感染はしません。マダニ感染症の被害は西日本だけでしたが、2014年3月、厚生労働省研究班の調査で、SFTSウイルスを保有するマダニは全国に広がっていることが判明しました。


全てのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではない


マダニと、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するダニとでは全く種類が異なります。マダニ類は、固い外皮に覆われた比較的大型のダニで、主に森林や草地等の屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。日本でも、いくつかのマダニ種からSFTSウイルスの遺伝子が検出されていますが、実際にヒトへの感染に関与しているかについては、まだわかっていません。


さらに、同じ種類のマダニでも、全てのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではありません。ですから、マダニに咬まれたからといってすぐに慌てる必要はありません。まず、マダニを取り払うことが重要ですが、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりする恐れがあるので注意が必要です。黒いとげが残ってしまったらそれを取り払い、熱や消化器症状が出たら内科を受診してください。


マダニに咬まれないようにするために


何よりマダニに咬まれないようにすることが重要です。特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、肌の露出を少なくすることが大切です。シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れることも重要でしょう。明るい色の服を着ると、マダニが着いたのがわかりやすいかもしれません。服の上から用いるダニ用虫除け剤も、補助的な効果があります


また、屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認してください。特に、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部(髪の毛の中)などがポイントです。現在のところSFTSウイルスに対して有効なワクチンはありません。処置に困ったら、迷わず最寄りの医療機関や保健所に相談してください。



(大西 勝也・内科医)
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