ブラックホールの謎にも迫る!? NASAが宇宙で最も明るい銀河を発見

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2015年05月25日 07:20  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

考古学や天文学の常識は、やみくもに信じないほうがいい。研究が進むと簡単に変わるからだ。NASAが、“宇宙でもっとも明るく光り輝く銀河”を発見したと発表した。しかし、この発見は、それだけで終わるものではないようだ。NASAのウェブサイトではこの発見によって新たに出てきた謎が解説されている。

この銀河にはブラックホールがあるらしい

NASAが運用しているWISE(広域赤外線探査衛星)が、太陽の300兆倍以上の明るさで輝いている銀河を発見したという。これは、いままでのところ最も明るく光っている銀河で、WISEによって発見された新しい種類の天体『ELIRGs(extremely luminous infrared galaxies=極端に明るい赤外線天体)』に分類される。

「このまばゆい光は、この銀河のブラックホールからの噴出によって出てきているものかもしれません」と、この論文の筆頭執筆者であるNASAのジェット推進研究所のChao-Wei Tsai氏はいっている。

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この『WISE J224607.57-052635.0』と名づけられた明るい銀河には、巨大なブラックホールがあり、そのブラックホールがガスやその他の物質を強力に吸い込むために何百万度もの高温になり、高いエネルギーを持った可視光線や紫外線、X線を出しているのかもしれない。

そして、その光線が周囲のチリに当たることで、チリを温め、赤外線を放出させているのではないかという。

巨大すぎるブラックホールの謎

銀河の核に巨大なブラックホールがあることは珍しくない。しかし、宇宙のこれほど後方で、このような大きいものを見つけるのは珍しい。というのは、この銀河からの光は125億年かけて飛んで来ているので、天文学者が観察しているのは125億年前の状態である。それなのに、ブラックホールはすでに、太陽の数十億倍もの質量になっている。

宇宙の歴史138億年のうち、まだ10分の1ていどしか経過していない時期に、ブラックホールがそのサイズになっているというの不思議なのだ。

この新しい研究では、ブラックホールがこれほどの大きさに成長した理由として、3つの仮説を挙げている。

ひとつは、「もともと大きかった」というものだ。つまり、“ブラックホールの卵”の段階で、これまではありえないと思われていたほど大きかったという説だ。

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ほかのふたつは、ブラックホールの吸収能力の理論的な限界「エディントン限界」を超えるもの、あるいは“曲げる”ものだ。ブラックホールが周囲のものを吸い込むとき、ガスがブラックホールに落ちていくと高温になって光を放射するが、その光の圧力は落ち込んでいくガスをはね返す。そのため、ブラックホールが物質を吸収する速さには限界が生じるというのがこの理論である。

もしブラックホールが、なんらかの理由でこの限界を超えていたとしたら、とんでもないペースで巨大化することも可能だ。じっさいこれまでもいくつかのブラックホールがこの限界を超えたところが観測されたことはある。しかし、今回発見されたブラックホールのサイズだと、この限界を繰り返し繰り返し超えたことになる。

もうひとつは、このブラックホールが「エディントン限界」を“曲げる”というもの。このブラックホールが、これまでありえないほど“大食い”だというケースだ。たとえば、ブラックホールの自転が遅ければ、物質をあまりはね返さないので、速く回転するブラックホールよりも多量のものを吸い込むことができるという。

いずれにしろ、この手の『ELIRGs』のブラックホールは、長い期間にわたって、きわめて多量の物質を吸い込んでいるようだ。

この明るい銀河の謎を解くには、まだまだ研究が必要だ。研究チームは中心にあるブラックホールの質量を測定することを計画している。それによって、その天体の経歴がわかる。

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WISEが2010年にキャプチャーした全天の赤外線画像からは、そのほかにも奇妙な銀河が発見されている。従来よりも高い感度で宇宙を観測することで、以前は見つかっていなかった貴重な天体サンプルを見つけることができるのだ。

観測機器や観測方法の進歩によって、これからも新しい発見があるだろう。それによって宇宙の常識はまた変わっていくことになる。われわれの子どもや孫の世代は、宇宙に対して、またかなりちがった認識で接することになるのかもしれない。

余談だが、こんな宇宙の果ての不可思議な話題を、特に専門家でもない筆者がだいたい理解できるように書いているNASAのウェブサイトの記事のわかりやすさはたいしたものだと思う。

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