トヨタ・マツダの協業が意味するもの

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2015年05月25日 20:20  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

国内の自動車各社が重複した開発を避け、欧米勢に対抗すべく、いよいよ“内向き”の競争からオールジャパンで“外向き”の競争へと舵を切り始めた。

5月13日にはトヨタとマツダが“もっといいクルマづくり”を目指した包括提携を発表。両社はこれまでもハイブリッドシステムのライセンス供与や、マツダのメキシコ工場でのトヨタ車生産で業務提携している経緯がある。

今回の提携はさらに一歩踏み込んで協業体性を深めようというものだ。

相次ぐ国内自動各社の協力体制

2014年4月には国内自動車9社が日本自動車研究所などを交えて自動車用エンジンの高効率化、低排ガス化の課題を共同で解決することを目的とした自動車用内燃機関技術研究組合『AICE(アイス)』を設立している。

その翌月にはトヨタ、日産、ホンダ、三菱の4社によるPHV/PHEV、EV普及に向けた充電インフラ整備会社『NCS(日本充電サービス)』を設立。

新技術の開発やそれに伴うインフラ整備には膨大な費用が嵩むため、一社で全て賄うのではなくブランドを超えて協力関係を築くことで負担増を分担するという考え方だ。一つ方向性を読み間違えば企業にとって膨大なリスクが伴うだけにもはや協業は必要不可欠といえる。

ちなみに今回のトヨタとマツダの提携拡大でも資本関係にまでは及ばないことを両社が示唆している。こうした協業の動きがどんどん活発になって来ている背景には近々欧米で強化される環境規制への対応がある。

カリフォルニア州の環境規制「ZEV」対応が引き金に

中でもカリフォルニア州では一定台数以上自動車を販売するメーカーはその販売台数に応じて一定比率をZEVにしなければならないと定めている。

『ZEV(Zero Emission Vehicle)』は排出ガスを一切ださない『EV』や『FCV』のことで、未達のメーカーは罰金を払うか、超過達成するメーカーから『ZEV』クレジット(排出枠)を購入しなければならない。

とはいえ、『EV』や『FCV』のみで規制をクリアすることは難しいため、『PHV』や『HV』などの排ガスが極めてクリーンな車両などを組み入れることも許容されている。

事実、トヨタは「プリウス(HV)』により、これまでEVメーカーのテスラに次ぐ量のクレジットを売り続けて来た経緯がある。ただ2017年からは『HV』が『ZEV』の対象から外されるため、状況が一変する。

TOYOTA_MAZDA

そうしたなか、マツダはこれまで販売台数の観点でZEV規制の対象外だったが、2018年以降は中規模のメーカーとしてダイムラー、VW、BMWなどと共に対象となる見通しとなった。

これまでガソリンエンジンやディーゼルエンジンの高効率化で低燃費を実現した『SKYACTIV』をウリにしてきた同社ではあるが、規制クリアには新たな技術開発を伴い、それには多くの開発期間と膨大な研究費が必要となる。

既にトヨタから『HV』のライセンス供与を受けている同社としては『ZEV』対象の『PHV』や『FCV』をラインナップするトヨタとの提携枠を拡大して技術供与を受けるのが最も確実という訳だ。

両社は今回の発表で公にしていないものの、これこそがマツダがトヨタとの提携枠を拡大する最大の理由とみられている。

「PHV」・「FCV」の拡販に繋がる提携

トヨタにとってもマツダへの『PHV』システムの供与で販売台数が伸びれば量産効果でコストダウンが図れ、ゆくゆくは『FCV』の普及拡大にも繋がる。

さらにはマツダが持つ高効率なディーゼルエンジンをラインナップに採り入れることも可能になる。

かくして先進技術を誇る日本の両メーカーがコラボすることで、欧米勢に対抗する更なる技術革新が期待できる状況になってきた。

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