コンピューターゲーム、特に暴力的内容を含むゲームは青少年の人格形成に悪影響を及ぼす可能性がある……。
家庭用ゲームが一般的になったここ数十年、日本でも繰り返し語られてきた“常識”だ。こうした説はセンセーショナルな少年犯罪の背景を解説する文脈で持ちだされることが多く、依然として大きな説得力を持っている。
ところが、先日アメリカで発表された研究から、こうした見方と対立する結果が得られたという。すなわち、暴力的なゲームを他人と協力してプレイすることは、攻撃的な振る舞いを起こしやすくするのではなく、むしろその逆の可能性があることだ。
他人との協力プレイは利他的行動を当たり前に感じさせる
テキサス・テック大学のメディア&コミュニケーション・カレッジでジャーナリズムと電子メディアの助教授を務めるJohn Velez氏は、ゲームで他人と協力してプレイすることの意味や、1人プレイや競い合う内容のゲームをプレイした場合との違いを研究。その結果、協力してプレイすることは、人を助けるのは貴重で、なおかつありふれた行為だとプレイヤーに考えさせる点において、有益さをもたらしうることが分かったという。
このほど、Velez氏と同僚たちは、暴力的な描写・内容のあるゲームをプレイする実験を行った2つの研究を『Communication Research』誌上で発表。どちらの研究でも、参加者はプレイ後、パートナーもしくは敵に対して音が大きく不快なノイズをだすという“攻撃的に振る舞う”機会を与えられた。
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その結果、片方の記事は、他人との協力プレイが、現実の世界での攻撃的な振る舞いという点で現れるとされる、暴力的なゲームの“ネガティブな影響”を取り除く可能性を示した。もうひとつの関連する研究では、暴力シーンのないゲームで手助けしてくれる他人と組んでプレイすることは、向社会的行動や援助行動を増やしたという。後者の傾向はチームメートだけでなく対戦相手に対しても見られたようだ。
手助けしてくれるチームメートから影響を受ける
研究チームは、暴力シーンのないゲームでチームメートのどのような振る舞いが後の向社会的行動に影響を及ぼすかについても研究し、『Computers in Human Behavior』誌のオンライン版で発表。実験では手助けしてくれる、また、してくれないチームメートのどちらかとスポーツゲームをプレイ後、パートナーおよび相手と『囚人のジレンマ』のゲームを行った。
結果的に、とりわけ助けてくれるチームメートとのプレイは、ソーシャルな状況下でハッキリとより他人を助ける傾向につながったという。いっぽう、この研究では、協力的にプレイする人が好意が返されることを期待をせずに、相手チームのメンバーを信頼する行動にでやすいことも分かった。Velez氏はこの結果が、プレイヤーがどのようにお互いに影響し合っているかを理解することの重要性を示している、と指摘した。
なお、この実験はプレイヤーが同じ部屋で一緒に座って行われたのに対し、先に紹介した2つのものはオンラインで繋がったチームメートや相手とともに行われた。両者を比較すると、興味深いことに全体として結果に違いはなかったとのことだ。
一般に信じられている説とは異なる結果を示した、今回の一連の研究。中立的な実験結果に基づく見解の重要性を教えてくれるとともに、ゲーム好きの人にとっては、改めてゲームの素晴らしさのひとつが再確認する結果になったのではないだろうか。
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