月探査の「秘密兵器」?人間が居住できる移動式シェルター

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2015年06月20日 09:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

1960年代から70年代にかけて実施されたアメリカ航空宇宙局(NASA)による『アポロ計画』は、全6回の有人月面着陸に成功。計画には莫大な予算が投入されが投入され、のべ12人の宇宙飛行士が月面に着陸したが、月面活動を行った時間をすべて合計しても3日と6時間に過ぎないという。

このように宇宙飛行士は着陸船に備えられた生命維持装置から離れることができず、長時間の船外活動を行うことができないため、月の表面の探査が十分になされているとは言えないのが現状だ。そんななか、マサチューセッツ工科大学(MIT)の航空宇宙科学のエンジニアたちが、近い将来の月面探索に向けた斬新なコンセプトデザインを発表し、宇宙・科学ファンの大きな注目を集めている。

 軽く、パッケージ可能で、膨脹式の“居住空間”

国際宇宙航行アカデミーが刊行する『Acta Astronautica』誌に掲載された論文で、研究チームは宇宙飛行士による月面の船外活動の範囲、科学的な可能性、そして安全性をも向上させるコンセプトを発表。アイデアは単なる空想ではなく、実際の月面環境の条件を基に過去のデータや計算式を駆使し、実現可能性が担保された科学的根拠のあるものとして提出された。

そのアイデアとは、具体的には、軽く、パッケージ可能で、膨脹式の“居住空間”だ。この移動式住居は、月面車に積載できるようデザインされ、膨張式ポッドで2人の宇宙飛行士が一泊するのに十分なシステムを備えている。

体が日光で焼け焦げるのを防ぐ反射シールドをはじめ、酸素、水、食料を供給するライフサポート・システム、居住スペース内の気温調節機能、二酸化炭素の排出機構、そしてシェルターの電源供給や月面車のチャージを可能にする太陽電池パネルなどを搭載。これらすべてをパッケージしても重さは124kg、体積は594リットル程度と、重い冷蔵庫のようなサイズ感なのだ。

MIT 月 テント MIT 月 テント

到達可能な距離は倍に?月の新たな発見が秘められたエリアへ

1台の月面車を利用していたアポロ計画時代のミッションでは、故障時にクルーが自力で戻るために、着陸船から歩いて到達可能な範囲内でしか活動することができなかったそうだ。近い将来に想定される月面活動では、こうした制限をクリアすべく2台の車が使われると考えられている。今回のコンセプトは、このミッション計画のコンテキストで考案されたものだ。

このアイデアが可能になると、船外で1泊を過ごすことができるため、単純計算で到達可能な距離は倍になる。このことは、まだ見ぬ科学的発見が隠されている可能性を秘めた調査エリアの増加を意味し、例えば、最も目立つクレーターであり、月の歴史や進化を調べるカギとなると考えられているコペルニクスの探査も現実的になるかもしれない。

実現可能性が高く、未知の発見にアクセスするポテンシャルを十二分に秘めた今回のMITチームのコンセプト。近年アメリカやロシアをはじめとする国が月面基地計画を発表するも、計画の延期が目立つ現状を鑑みるに、実現可能性が高く意外と今後の月探査計画のカギなるのではないだろうか。

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