クルマのエンジンが壊れても止まるだけで済むが、単発の飛行機でエンジンが止まったらかなりピンチだ。そんな緊急事態を救うための予備動力装置を、スペインのマドリード・カルロス3世大学(UC3M)とAXTER Aerospace社の研究チームが発表した。UC3Mのウェブサイトで紹介されている。
エンジンが止まっても推力を確保
この研究が目標としているのは、定員が2〜4名で、重量750kgぐらいまでの軽飛行機の安全性を向上させることだ。
「私たちは、ガソリンエンジンのトラブルやガス欠による事故を防ぎ、人命を助けることを目的としています。毎年ヨーロッパとアメリカでは平均600件の事故があり、70名が亡くなり、2,400万ユーロもの損害が発生していることは無視できません」と、開発者のひとりミゲル・アンヘル・スアレス氏はいう。
この装置がどういうものかというと、プロペラを駆動するための電動モーターを追加するというものだ。メインのガソリンエンジンに問題が起きるとモーターが作動し、約20kmの航続距離を確保できる。それだけあればなんとか安全に着陸できるという。
ハイブリッド駆動も可能
この新しいシステムは、従来のガソリンエンジンに接続される電動モーター、高効率のリチウム・バッテリーと電子制御システムで構成される。また飛行中にバッテリーを充電する装置も含まれている。
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この電動モーターはかならずしも非常時だけに役立つものではない。自動車のハイブリッドシステムのように使うことも可能だ。たとえば、離陸時やそのほか必要なときに作動させれば、ガソリンエンジンの出力に40馬力ぶんを上乗せして使うことができるというわけだ。
このシステムはあらゆる軽飛行機に搭載できるという。新規の飛行機だけでなく、既存の飛行機にも装着可能だ。あるいはジャイロプレーンやグライダー、さらにはドローン等のUAV(無人航空機)にも適用できるという。
このUC3Mのニュース記事は、人命を守り事故による損害コストを減らすだけでなく、飛行機のオペレーションやメンテナンスのコストを下げ、燃料消費量を減らし、温室効果ガスを削減し、騒音公害をを減らすこともできる、と締めくくっているが、ちょっとそこまではいいすぎではないだろうか?
それなりの装置を付加するわけだから製造や導入、維持管理にだってコストがかかるはずだ。自動車のハイブリッドシステムは、減速時にエネルギーを回生するから燃費がよくなるのだが、飛行機でそういう効果は望めまい。
年間700件という事故の分母(フライト自体の総数)がわからないので、どれくらいエンジントラブルの危険性があるのかわからないが、万が一のときに頼れる動力があるというのは心強い。飛行機オーナーではないので、なかなか想像できないが、軽飛行機のオーナーはどう反応するだろうか?
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