各メーカーの競争によって、自動車の安全性能は高まりつつある。障害物があれば自動的にブレーキがかかったり、レーンから外れかけたら自動的に補正してくれるなどの機能が標準搭載化に向かっているからだ。そのさらに先には自動運転システムも見えてきている。
しかし現在は、どれほど安全機能が搭載されようとも、飲酒運転による危険が日本だけでなく世界中で問題になっている。飲酒運転は、ドライバーだけでなく、他者を巻き込んでしまう悲惨なケースが多い。
このことは米国でも問題視されていたため、アメリカ運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は、ドライバーが飲酒した場合は車が動かなくなるシステムの開発に着手したと発表した。
その名も『DADSS』(Driver Alcohol Detection System for Safety:安全のためのアルコール検知システム)だ。『DADSS』を搭載した車は、ドライバーからアルコールが検出されれば、動かないのだ。どのようなシステムなのだろうか。
二重のアルコール検知システム
『DADSS』は二重にアルコールを検知する仕組みを持つことで、より安全性を高めようとしている。
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二重の検知システムとは、『BREATH-BASED SYSTEM(呼吸型アルコール検出システム)』と『TOUCH BASED SYSTEM(接触型アルコール検出システム)』のことだ。
まず『BREATH-BASED SYSTEM』では、ハンドルの裏側にセンサーが搭載されており、そのセンサーがドライバーの吐き出す息を吸引する。吸引された息からは、赤外線により二酸化炭素とアルコールが検出されて、その量が算出されるのだ。
そして、吐く息に含まれるアルコール成分が基準値を超えると、警告が表示される。
ちなみに『BREATH-BASED SYSTEM』はドライバーの呼吸だけを調べるため、助手席に座った人が飲酒していても反応はしないようにできている。
そしてもう一つの『TOUCH BASED SYSTEM』では、エンジンのスターターボタンにセンサーが組み込まれている。
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ドライバーが車を始動しようとしてスターターボタンに指で触れると、ボタンに組み込まれたセンサーが、指の中の血液中に含まれるアルコール濃度を瞬時で読み取るのだ。
こちらもアルコール濃度が基準値を超えると警告が表示され、当然車は動かなくなる。
標準搭載化が進む可能性がある
『DADSS』が飲酒運転を防ぐことはかなり期待されており、参加企業にはBMW、メルセデスベンツ、トヨタ、ホンダ、日産などの主要自動車メーカーが名を連ねている。
そしてNHTSAとしては、『DADSS』を5年位内に実用化・商業化したいとしている。
ただし、『DADSS』の装着は義務化する予定はなく、あくまで自動車メーカーやユーザーによる選択肢の一つとしたいという意向だ。
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それでも各自動車メーカーが安全性能の一つとして、自動ブレーキシステムなどと同様に標準搭載へ向かう可能性は高い。
危険であるにもかかわらず、飲酒運転がなくなる気配がない以上、このようなシステムによる防止策が必要とされていることは間違いないだろう。