ブーム再燃か?軽オープンスポーツカー ホンダS660人気の理由

9

2015年07月04日 19:20  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

今再び、スポーツカー・オープンカーに注目が集まっている。ミニバンやコンパクトカー、背高軽自動車が席巻した日本の自動車社会に今、何が起きているのだろうか?

画一化した乗用車

日本車はふと見渡せば、5ドアの乗用車ばかりとなっている。軽自動車からコンパクトカー、ミニバンに至るまで、ほとんどの乗用車が後部ドアとリアハッチバックを持つ5ドアのフロントエンジン、フロントドライブ(FF)だ。大きさやデザイン、定員は多少異なれど、まさに大同小異。いくら便利、コスパ最強といえど、40代・50代にとって、憧れはいつの時代もスポーツカー。子供が成長して自由な時間が得られるようになった今、セカンドカーとして維持費が安い軽自動車のスポーツカーに熱いまなざしが注がれるのも当然の成り行きだ。

ビート以来!ホンダの軽ミッドシップオープン S660

beat

1991年に登場したビートは名車の呼び声が高い。当時オールアルミボディを世界に先駆けて実現したNSXを開発したホンダが、精魂こめて作った軽自動車がビートだからだ。ノンターボながら3連スロットルボディを装着するなど高回転化技術をつぎこみ、軽自動車の自主規制上限となる64馬力を達成。アクセルペダルに呼応して敏感に反応する後輪は人々のハートを震わせた。

s660

その実質的な後継となるのが4月にデビューしたS660である。ホンダのSシリーズの系譜は古く、S500/600/800まで遡り、これも後輪駆動で高回転・高出力エンジンを搭載したオープン・クーペモデルだ。

背高軽自動車とは一線を画す走り

S660はエンジンをN-WGN、N-BOX、N-ONEといったホンダNシリーズと共用するがターボを小型化し高レスポンスを実現、それをミッドシップに搭載し後輪を駆動するMRである。重心は低く、フロントが軽いために俊敏な身のこなしが可能で、重心が高くユラユラしがちな背高軽自動車とは次元が違うコーナリングを見せつける。

s660

またこの高性能を安全で裏打ちするために、4輪ディスクブレーキの採用、ハイグリップタイヤ、アドバンネオバの極太サイズを標準装備する。

現代車らしくスピンを抑制する車両安定装置、VSAが装備されるがさらに俊敏さを演出するためのギミック、アジャイル・ハンドリング・アシストを軽自動車として初めて装備し、コーナリング時前輪の内側にブレーキを少しだけかけて、曲がりにくいアンダーステアを解消する。これらの電子制御のおかげで、どんな技量のドライバーでも、ミニバンや背高軽自動車から乗り換えたとしても違和感なく、安全に速く走ることができる。

その技術力の高さに、さすがF1に復帰したホンダだけのことはある、と唸らされることだろう。

爽快なオープンエアー

忘れてはならないのは、このS660がオープンカーであるということだ。ルーフはあの名門ロータス社のエリーゼと同じ仕組みのロールトップを採用。脱着には毎回シートから降り、数分かけて行う必要がある。

s660

電動や片手で開閉できるオープンカーがある現代ではあるが、古き良きスポーツカーに乗るための儀式、と考え手間というよりもこれを愉しみにするのが正解だ。

s660

巻き取ったロールトップはフロントボンネット内にある小さなトランクにピッタリ収納することができる。ただし収納した場合、トランクはロールトップで一杯になるために手荷物は入れられなくなることを覚えておく必要があるだろう。

シンプルなオーディオと用意されないビルトインナビ

センターコンソールは非常にシンプルだ。エアコンを操作するボタンが配置されるだけで、最近流行りの大型ディスプレイは埋め込まれていない。上級グレードのαにはセンターディスプレイが装備されるが、Gメーターやオーディオの表示の他HDMI入力によるディスプレイとなっている。ベーシックグレードのβにはこれは装備されないが、逆にデザインとしてはすっきりした印象となる。

s660

このディスプレイ、マルチメディアインターフェースに慣れた我々にとっていささかシンプルすぎるように感じるが、実は逆に注目に値する。というのもスマホに慣れた我々にとって、自動車に装備されるマルチメディアインターフェースは往々にしてオールドファッションかつ、プロプライエタリーなインターフェースで決して使いやすいとは言えないからだ。

その理由の一つに、クルマの買い換えサイクルと、スマホの買い換えサイクルのミスマッチがある。クルマは買ってから通常5年、気に入れば10年使うこともあるだろう。また最近はモデルチェンジサイクルが再び長くなっており、こういったスポーツカーは10年近く生産することも珍しくない。

その場合ビルトインのオーディオナビは大幅に刷新されることは稀だ。ホンダS2000の場合10年近く生産されたが、ビルトインナビは最後まで初期のDVDナビのまま、通信ナビの草分け的存在となるホンダ・インターナビは装備されなかった。また日産GT-Rも毎年改良が施されるものの、デビューから7年以上経過したオーディオ・ナビについては手つかずのままだという。

スマホナビへのシフト

S660がビルトインナビを装備しなかった理由は大きくわけて2つあるだろう。1つは開発コストの面、もう一つは将来性の面。前述したようにスポーツカーのモデルライフは長く、仮に8年としてもその間スマホは進化している。逆に考えてみよう、8年前、スマホはどうだったのかと。

スマホの元祖となる8年前に iPhoneが誕生している。そして毎年マイナーモデルチェンジ、2年に1度はフルモデルチェンジされ、その機能や性能はウナギのぼりだ。一方操作性、ユーザーインターフェースは一貫性をもっており迷うことなく使うことができる。

ホンダはスマホ用のインターナビ・ポケットを開発、ホンダユーザーへ提供している。いわゆるスマホナビだが、その基本性能はビルトインナビと共通、ホストと通信することでプローブカーにより得られたビッグデータを利用、渋滞をリアルタイムに回避することができる。その性能、確からしさは折り紙つきだ。

ホンダはS660専用のビルトインナビを開発しない代わりに、スマホナビの利用でコストと将来性の課題をクリアしたのだ。

スマホナビの限界とOBD2の利用

通信機能が最初からサポートされるスマホナビはビッグデータ時代にはピッタリのソリューションだ。しかし弱点がないわけではない。それは自車位置の特定がスマホのGPSを利用するために、トンネル内や高速道路の高架下の道の場合に不正確になるためだ。

GPSレーダー探知機でも同様の問題を抱えているが、ユピテルではOBD2端子を使うことで自車位置の正確性をあげ、トンネル内のオービスにも対応している。

OBD2端子とは1996年以降アメリカで販売する新車に装備が義務付けられたデータリンクコネクターであり、車両故障診断から燃費、エンジン負荷データなど様々な情報を得られる。最近ではこのOBD2端子を利用した読み取り装置があり、WiFiやBluetoothでスマホと通信することで、スマホで車両情報を表示、追加メーター代わりにすることもできる。

PLX devicesが開発している最新のkiwi3ではドングル状となりすっきりと接続。アプリはApple Watchに対応、腕時計上にメーターを表示することが可能だ。

これにスマホナビが対応すればトンネル内であっても自車位置の特定が正確になる。もちろん最新車種であるS660にOBD2端子は装備されており、運転席ダッシュボード下左側にある。

s660

意外と長寿な軽スポーツカー

趣味性の高いスポーツカー、特に軽自動車は維持費が安いこともあってセカンドカーとしてマニアが手放さずに保持する例が多い。今もバブル期にABCトリオと言われたマツダ(オートザム)AZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノが20年たった現在も元気に走り回っている。ワンオーナーものも多く、親から子へ譲られるケースも多い。

今後ハイブリッドからEV、そしてFCVと自動車のエネルギーソースは変化していく時代だ。そんななか、メインの自動車はハイブリッドにしても、最後の内燃機関として軽スポーツカーを選ぶのもひとつの楽しみである。維持費は安く、燃費もよく、なにより場所をとらないのは美点だ。セカンドカーであればトランクが小さい、幌の脱着が面倒といったデメリットも気にならない。

そういった状況を反映してか、ホンダS660は大人気で今から注文しても来年の納車となるという。気になる人は早めにディーラーを訪ねてみるのがよいだろう。

このニュースに関するつぶやき

  • そろそろ1600ccクラスのスポーツタイプを出して欲しいんだよね。CR-Xのような面白いクルマをね。
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

ランキングトレンド

前日のランキングへ

ニュース設定