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玉ねぎは、熱を通すと驚くほど甘くコクが出て料理をおいしくする。しかし焦がさずにきれいに仕上げるのは根気のいる仕事だ。写真は、兵庫県・淡路島産の玉ねぎを飴色に仕上げた『オニオン・キャラメリゼ』。便利でおいしいだけではない。商品づくりを通じて、社会の様々な問題を解決する力を秘めた“魔法”の調味料だ。
開発したのは株式会社プラスリジョン。代表の福井佑実子氏は福祉コンサルタントと農林水産省6次産業化プランナーの肩書きをあわせ持つ。『リジョン(融合)』をテーマに、異分野を横断するネットワークを活かした事業創出やコンサルティングに携わっている。
農産物は同じ条件で栽培しても、工業製品のように全く同じ大きさや形にはならない。生産者からすれば規格外品として出荷できず、消費者にとっても食べられるものが廃棄されるのは忍びないことだ。有効利用できればよいのだが、現代し利便性や効率を追求してきた結果、生産から消費にいたるまでの関係が分断され融通が利かない。
『オニオン・キャラメリゼ』は、土作りからこだわった有機栽培玉ねぎの規格外品を活用し、塩分&油、添加物等を一切使わず甘みとコク引き出している。糖分や塩分を制限している人にも安心して使え、健康や環境にも配慮し、新たな価値を創造した商品だ。
さらに就労や社会参加が難しい人たちの自立支援のために生まれた商品でもある。製造過程で、玉ねぎを飴色になるまで根気のいる作業を担当するのは、自閉症等の発達障害や精神障害のある人たちだ。障害のある人たちの特性を見極め、彼らに理解できるプロセスや環境を整えれば、十分に能力が発揮できる。
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特に発達障害のある人たちは、耳より目で学び理解したり、細かい点に集中する人が多い。「生産現場では、細かい点に注意を払い、コツコツと間違いなく作業をこなす能力が高く、障害が“ない”だけでなく、優位性さえあるんです」と、語る福井氏。
高い品質や安全基準が求められる食品業界で、彼らの能力が発揮できる職場づくりを、株式会社プラスリジョンがサポートし、商品の売上は直接彼らの賃金へと還元され、自立に役立つしくみとなっている。
異なる分野を“つなぐ”ことで、従来では難しかった障壁を越える突破口が見えてくる。そのような新たなモデルを生みだすことは力技に思えるが、福井氏の場合はそうではないように思える。
というのは今後のビジョンを尋ねると、「日本は人口が減り、これまでの働き方や生き方も見直される時代になるでしょう。畑から食卓まで、様々な立場、個性の人がつながって多様性を認めあい“優しさ”で支えあっている。そんなオーガニックなサイクルを感じられる“場”をつくりたいのです。」という答えがかえってきたからだ。
社会の様々な問題は、根元をたどれば、“つながり”を失ったことからお互いを思いやる“優しさ”や“想像力”の欠如によることが多いものだ。『オニオン・キャラメリゼ』のような“優しさ”を礎としたビジネスモデルがなりたつ社会になれば、日本の未来にも希望がもてそうだ。
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