AT, DCT, AMT, CVT。自動変速トランスミッションのいろいろ。

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2015年07月20日 20:30  FUTURUS

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FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

スズキの新しい軽自動車、アルトが話題だ。理由はデザインがAudiで手腕を振るった和田智氏が担当しており、唯一無二の存在感をアピールしていること、そしてもう一つは軽量化とシンプルなオートマチックトランスミッションを採用することで、燃費を飛躍的に向上させた点だ。今回は昨今のオートマチックトランスミッションのトレンドについて振り返ってみたい。

マニュアルトランスミッション(MT)

まずなぜトランスミッションが必要なのかを改めて考えよう。エンジンはピストンの往復運動を回転運動に変換しているためアイドリング回転数があり、毎分500〜1000回転程度常に回転させておく必要がある。それ以下の回転数となるとエンジンストライキ(エンスト)を起こし止まってしまうためだ。そのために停止中はエンジンを駆動系から切り離す必要がある、それがクラッチだ。

クラッチを切ることでエンジンがアイドリングしていても車は駆動されない。

次にエンジンには許容回転数、いわゆるレブリミットが存在する。一般的なエンジンでは5000〜7000回転程度であるが、もしもギアが1速しかない場合はこの最大許容回転数で速度が頭打ちになってしまう。そのため速度を出すためにギアを複数用意し、低速では低いギアを、高速では高いギアを利用する。このギアチェンジの際もクラッチを切り離し、接続することでスムースにギアチェンジすることができる。

http://www.honda.co.jp/factbook/auto/s2000/199904/019.html

昔は4〜5速、現在では6速が主流で、一部7速が用意されている。

トルクコンバーター式オートマチック(AT)

古くからあるオートマチックといえば、トルコン式である。これはまったく構造がマニュアルと異なり、クラッチの代わりにトルクコンバーターと呼ばれる、羽根車を2つ向かい合わせて、粘度の高いフルードで包み、羽根車の回すというものだ。クラッチのように明確に切ったりつないだりということはなく、エンジンがアイドリング状態でも常に駆動しているために前に進もう力が働く。これがクリープ現象である。そのために停止させるときはずっとブレーキをかけておく必要がある。

当初は2〜3速、その後オーバードライブと呼ばれる4速が導入された。現在では小型車でも6速、プレミアムカーでは8速まで用意されている。

http://www.aisin-aw.co.jp/products/drivetrain/lineup/index.html

無段変速機(CVT)

http://www.honda.co.jp/tech/auto/cvt/topic3/

比較的日本で流行しているのがCVTである。CVTはギアではなく金属ベルトを2つのプーリーにかけて、プーリーの径を変更することでギア比を無段階に変更する。構造的にはスクーターの変速機に近く、ベルトの耐久性の問題から当初小排気量のエンジンから採用されはじめた。利点としては最適な回転数を常に保つことができるため、エンジンの出力をいかしつつ、燃費を向上させることができることだ。また変速ショックもほぼ皆無で、滑らかな乗り味となる。

しかしながら無段階ではあるが、変速レシオに限りがあること、ベルトは潤滑をさせつつ滑らないようにセッティングする必要があり少なからず滑りが生じることや、プーリーを制御する油圧ポンプはエンジン出力からとるために、必ずしも効率がいいとはいえない側面がある。またエンジン回転数と速度が必ずしも比例しないCVTはいつの間にかにすごい速度が出ていた、ということもありがちだ。

デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)


動画を別画面で再生する

ヨーロッパメーカーが力を入れているのがDCTである。ATと違いMTと同じくクラッチを装備するが、2つクラッチを用意、それぞれギアを1-3-5速と2-4-6速の組に分け、シフトチェンジ先のギアをあらかじめスタンバイすることで瞬時に切り替えることができるもの。DCTはMTと同様のダイレクト感溢れるフィーリングがスポーツカーに最適であり、VWグループのAudi、ランボリギーにからポルシェ、フェラーリといったメーカーの最新車種は例外なくこのタイプといっていい。導入初期は低速時の半クラッチでギクシャクするといった動きもみられたが、今では洗練されている。

ATの復権

ATは当初トルクコンバーターによるロスや、ギア数がマニュアルよりも少ないことから最適なギア比を選べず、燃費が悪いデメリットがあった。しかし現在ではロックアップと呼ばれ入力軸と出力軸を直結する領域を拡大、ギアを多段化することで燃費向上、変速時間もコンマ数秒と高速化、DCTと同等レベルにまでもってきたことでスポーツ性もアップしている。

自動変速マニュアルトランスミッション(AMT)

AT, DCT, AMT, CVT。自動変速トランスミッションのいろいろ。

http://www.suzuki.co.jp/car/technology/ags/

アルトが採用しているのはオートギアシフト(AGS)と呼ぶ、マニュアルトランスミッションのシフトチェンジ、クラッチ操作を自動化したAMTである。構造がシンプルで通常のATやCVTと比較して軽量コンパクト、駆動効率がマニュアル同様いいために燃費向上に有効な仕組みである。他車種では VW UP!や スマートでも採用されている他、アルファロメオのセレスピードやフェラーリのF1マチック、BMWのSMGなど、マニュアル車をベースに自動化するのに最適な手法だ。

それぞれの持ち味、ドライブフィール

自動変速トランスミッションはそれぞれの仕組みに応じた持ち味、メリット・デメリットが存在する。そのため一概にこれがベスト、と言い切れない。採用するクルマの方向性やユーザーの使い方によって向き不向きが生じる。これまでCVTを多く採用してきた日本メーカーだが、最近ではフィットではDCTを導入、デミオではトルコン式ATに変更している。

自動変速とはいっても最終的には人間が操作するものであるため、燃費だけではなく実際のドライブ・フィーリングも大事だ。AMTは燃費向上やダイレクト感溢れる加速フィールがよいが、クラッチ操作を車側で行うために、クラッチを切ったときに加速が途切れ、その感触が違和感、空走感につながったり、シフトのタイミングがずれるような印象を持ちやすい。

クルマはどうしてもデザインやエンジンに目がいきがちだが、トランスミッションのマッチングでかなり印象が変わる。その点も注目してクルマ選びを楽しんでほしい。

このニュースに関するつぶやき

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