脳に埋め込んだデバイスから直接薬が投与できる!?

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2015年07月22日 20:40  FUTURUS

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FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

薬の投与というのは、飲んだり注射したりするものがほとんどだ。頭痛とか、腹痛とか、どこか特定の部位に利かせたい場合でも、とりあえず薬は全身に巡ってしまう。あらためて考えてみると、よくそんなことで大丈夫だな、と思う。

しかし、今回ワシントン大学セントルイスの研究チームが発表した技術はちがう。頭部に埋め込んだワイヤレスデバイスから、脳の狙った部位に、直接薬を供給したり、光で刺激を与えるというものだ。同大学のウェブサイトで報じられている。

薬と光で脳を刺激する

このデバイスは髪の毛ほどの太さしかなく、脳に埋め込むことができ、リモートコントロールで薬剤を投与できるという。現時点ではマウスによる実験が行われたにすぎないが、いずれは、人間の頭痛や鬱病やてんかん、そのほかの神経系の不調による疾病の治療に使えるのではないかと期待されている。

この研究はまた、薬学上の大きな進歩であると同時に、光遺伝学(オプトジェネティクス)の基礎研究にも役立つ。光遺伝学というのは、個々の脳細胞を光に対して敏感に反応するようにしておき、光の照射で狙った部位の脳細胞を活性化させるという手法だという。

研究者のひとりMichael R.Bruchas博士は、

将来的には、光で活性化することができる治療薬を製造することができるようになるでしょう。そして、このような小さい埋め込み型デバイスで脳の特定の部位に薬を投与し、必要に応じて光を照射してその薬を活性化させることが、理論的には可能なはずです。この手法により特定の部位に絞った治療が可能になり、副作用を少なくすることができると思われます

と話す。

脳以外にも使える可能性がある

これまで、動物実験で薬や酵素やそのほかの化合物を脳に供給するために行われていたのは、チューブを接続する方法で、患者(被験者)の活動を大きく制約するものだった。しかし、今回発表されたのは、4つの薬剤を収めることができる薬室を備えているワイヤレスデバイスだ。薬剤と光によって脳細胞を活性化させるというまったく新しい手法をとっている。

研究チームのWoong Jeong博士によれば、デバイスは小さな配管とポンプを埋め込むものだが、それは脳組織と同じように柔らかい素材でできているので、脳のなかに長期間とどまっても、炎症を引き起こしたり神経に損傷を与える心配はないという。研究者たちは、同じような、さらに柔軟性の高いデバイスを使えば、脳以外の身体のさまざまな器官にもこの方法を適用できると考えている。現時点では薬室は4つしか備えていないが、将来的にはカラープリンターのインクカートリッジのような仕組みを採り入れることで、継続して薬剤を供給できるようにしたいという。

微細なデバイスを作る技術の進歩によって、人間の身体に埋め込むタイプの医療機器が今後はどんどん増えていきそうだ。通信技術の進歩、あるいは非接触式の充電技術なども、そういったテクノロジーを支えているのだろう。

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