NASAが報じた冥王星の真の姿

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2015年07月23日 19:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

2015年夏現在、発売されている宇宙の図鑑を見ても、冥王星のことはあまり詳しく書いてない。だってほとんどわからなかったから。しかしこの7月、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機『ニュー・ホライズンズ』が冥王星に最接近し、謎に包まれていた冥王星の姿が次々と明らかになってきた。

「惑星」から外された冥王星

冥王星はかつては太陽系の惑星に含まれていた。しかし、2006年8月末に“惑星”があらためて明確に定義され、冥王星は惑星から外されてしまった。

JAXAのウェブサイトによれば、1992年以降、冥王星と同じような天体が似たような場所に次々と発見され、その数は1,000個を超えるに至った。さらに2003年には冥王星より大きな直径を持つ天体エリスが発見されたこともあって、惑星の定義のひとつ『その軌道周辺で圧倒的に大きく、他の同じような大きさの天体が存在しないもの』にあてはまらなくなったのだという。

冥王星が“惑星”から“準惑星”に格下げされたのは、ニュー・ホライズンズが打ち上げられて約半年後というのだから皮肉なものだ。もっとも、冥王星が準惑星になってしまったからといって、学術的な価値が大きく下がってしまうようなことはない。惑星か準惑星かというのは、あくまでも呼びかたの話だからだ。

2006年に打ち上げられたニュー・ホライズンズは、足かけ9年の歳月をかけて冥王星に到着した。JAXAのウェブサイトによれば、この時期をのがすと、木星の重力を利用した加速(フライバイ)ができず、冥王星自身も太陽から遠ざかって大気が凍結するために観測が不可能になり、次のチャンスは200年先になってしまうことなどから、このタイミングで探査機が送られたのだという。

Pluto01

ニューホライズンズは、

赤外線や紫外線などを捉える7種類の観測機器で大気や地形のほか、最大の衛星『カロン』について詳しく調べることになっており、謎の多い『冥王星』について新たな発見が得られることが期待されています。冥王星軌道の通過後は、さらにエッジワース・カイパーベルト内の別の太陽系外縁天体を探査、20年頃太陽系を脱出する予定です

という(JAXAウェブサイトより)。

未知の原因による活発な地質活動

そして、これからの分析でわかるであろうことも多いが、とりあえずまっさきに送られてきた表面の画像等からわかったことがNASAのウェブサイトで紹介されている。

まず冥王星表面のハート形に明るく見える地形が話題になったが、その近くの赤道近辺の地域には、氷に覆われた地表からそびえる3,500m級の山脈が確認された。

これらの山々は形成されてから1億年も経過していないと見られるという。45〜46億年といわれる太陽系の歴史からすれば、ほんの最近だ。この冥王星の表面のほんの1%にすぎないエリアでは現在でも地質的な活動が行われていることを示唆している。

「これは、私たちがこれまで太陽系のなかで見てきたなかでも、もっとも若い地表にあたります」とNASAのチームの一員であるジェフ・ムーア氏はいう。

Pluto02

また、同様に氷に覆われた星ではあるものの、大きい惑星のまわりを回る衛星とは異なって、冥王星は自分よりずっと大きい母星の重力による影響で熱を発生するようなことはない。したがって、この山岳的地形を形成するためには、なにか別の作用が働いていると考えられる。

「氷に覆われた星における地質活動のエネルギー源を考え直す必要があるでしょう」と研究者のひとりジョン・スペンサー氏はいう。

また、冥王星の衛星である『カロン』も、若々しくバラエティに富んだ地表を持っていることがわかった。科学者たちは明らかにクレーターが少ないことに驚いているという。1,000kmにわたるひとつづきの崖と谷の存在は、星の内部の地質的活動で生じた地殻の亀裂であることを示唆している。

さらに、ニュー・ホライズンズは、冥王星系のその他の衛星、ニクス、ヒドラ、ステュクス、ケルベロスなども観測している。43×33kmしかないヒドラのいびつな形も、今回送られた画像で明らかになった。

ヒドラの表面は水の氷によって覆われている可能性があるとことも観測されている。今後の画像によって、これらの冥王星の衛星が数十億年前にどのようにして形成されたかを推測する手がかりが見つかるかもしれない。

ニュー・ホライズンズの分光器によるデータが、冥王星の氷った表面にある豊富なメタンの氷と、地域によるちがいを明らかにしてくれるという。

ニュー・ホライズンズが送ってきた冥王星の情報は、まだ手はじめにすぎない。このあとさまざまな情報から分析が行われるはずだ。すでに送られてきたデータからも新たな謎が生じているが、これから明らかになる情報から、新しい事実の発見もあるだろう。宇宙にはまだあまりにも謎が多い。しかし、それらは続々と明らかになってきている。

このニュースに関するつぶやき

  • 共通重心が惑星外になるくらい相互の質量比が近い冥王星とカロンなんだから、小なりとは言え潮汐力が惑星表面に影響してるんじゃね? 質量比で地球よりずっと小さい月でさえ地球に影響を与えるんだし。
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