警察署や拘置所で身柄を拘束されている犯罪の被疑者や被告人に、弁護士が会って話をすることを「接見」という。接見は通常、弁護士が警察署などに出向いて行われるが、離島や遠隔地など、交通の便が良くない場所では困難なことがある。そこで、遠隔地の警察署に留置された被疑者・被告人に、弁護士が電話で連絡する「電話接見」という制度がいま、試行されている。
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この電話接見は、2007年の試行開始以来、少しずつ対象の範囲が拡大され、2014年末までに9道県の41警察署で試行された。ところが、共同通信の報道によると、利用のされかたに地域差があり、41署のうち14署では一度も利用がなかったのだという。
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なぜ、こうしたバラツキが生じるのだろうか。実は、電話接見という制度は、そんなにニーズがないということなのか。日弁連の刑事拘禁制度改革実現本部の事務局長代行を務める水野英樹弁護士に話を聞いた。
「そもそも、現在試行されている制度は、第三者に聞かれないという保障がなく、『電話連絡』に過ぎません。警察署や拘置所で面と向かってやり取りする『接見』の代わりにはなりません」
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このように水野弁護士は切り出した。いま試行されている「電話接見」のシステムに問題があるという指摘だが、どういうことだろうか。
「刑事事件の被疑者には、誰にも会話内容を知られずに、弁護人と直接やり取りができる権利(秘密交通権)が認められています。これは、刑事訴訟法の39条にも明記されている権利ですが、今回の『電話連絡』は、この刑事訴訟法39条が定める権利ではないものとして、試行されています。
弁護士が電話をかける際には、アクセスポイントとして指定された警察署に出向き、遠隔地の被疑者に電話をかけることになります。ただ、警察署の電話をかける場所は、密閉された空間ではないため、職員に話を聞かれる可能性が否定できません」
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秘密性に問題があるために、弁護士が利用をためらうという事情がありそうだが、水野弁護士はさらに、電話接見の利用が進まない原因として「使い勝手の悪さ」をあげる。
「わざわざ警察に出向かなければなりませんし、前日までに予約しておく必要があるため、急ぎの連絡には使えません。また、1回につき15分間しか話せないため、会話内容がごく単純なものに限られてしまうのです」
それにしても、試行した41署の3分の1で「1度も利用されていない」というのは、利用者が少なくないか。どういう理由だろうか。
「1度も使われたことがない警察署があるのは、めったに事件が起きない小さな署も含まれているからでしょう。2007年の試行開始から、じわじわと対象が広がってきていますが、対象となっている警察署はごく一部なのです」
ただ、試行したうちの3分の2の警察署では、電話接見が活用されていた。弁護士から見ると、どんなメリットがあるのだろう。
「逮捕された直後の人に、必要最低限の話を伝えるために活用することを考えています。
逮捕された直後の被疑者は、取り調べに対して黙っている権利(黙秘権)や秘密交通権などについて、十分な説明を受けているとは限りません。外部との連絡手段を絶たれた被疑者にとっては、自分の持っている権利について説明を受け、『いついつまでに弁護士が来る』といったことを知ることができる意義は、非常に大きいのです。
もし逮捕などで混乱した被疑者が、事実と違うことをしゃべり、それが調書に残ってしまえば、その後の展開に大きな悪影響が出てしまいます。
もう一つは、事件に直接関係しない細々とした話をするために、わざわざ現地に行かなくても済むということです。逮捕されると、外界との連絡は大きく制限されるため、弁護士が連絡をとりつがなくてはいけないことがよくあります。
被疑者の仕事上の連絡や、『犬のえさやりをどうする』といった、被疑者にとって重要だけれども事件とは関係ない身の回り・生活上の話をするために、弁護士がわざわざ遠隔地まで接見に行くのは負担が大きいですからね」
どうすれば、電話接見の制度を利用しやすくなるだろうか?
「まずは、『ニーズ』を調査したうえで、利用対象の警察署を増やすことでしょう。また、電話接見を希望する前日ではなく、せめて、その当日に予約ができるようにしてほしいと思います。
一度に話せる時間も、20分〜25分に増加してほしいですね。設備や人員などの問題で、いつでも電話連絡可能という対応が難しいのはわかりますが、少しずつでも運用を改善してほしいと考えています」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
水野 英樹(みずの・ひでき)弁護士
第二東京弁護士会所属(1990年弁護士登録) 1990年〜日弁連・刑事拘禁制度改革実現本部委員(旧名称:拘禁二法案対策本部)
事務所名:水野法律事務所
事務所URL:http://www.mizunolawoffice.sakura.ne.jp/
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