ラーメンズ・片桐仁からウサビッチまでーーザ・プーチンズ主催『全日本テルミンフェス』をレポート

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2015年09月17日 21:01  リアルサウンド

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写真『全日本テルミンフェス』
『全日本テルミンフェス』

 9月13日、ザ・プーチンズ主催の『全日本テルミンフェス』が、祭囃子でにぎわう吉祥寺の街で開催された。テルミンといえば、ロシア生まれの電子楽器。一般的にはクラシックのイメージが強いだろうが、今回はポピュラーミュージックのミュージシャンも集めたフェスということで、顔ぶれもかなりカオスな状態に。街角マチコ(テルミン)、街角マチオ(ギター)、川島さる太郎(プログラミング。しかし街角マチコと同時にステージに現れることは決してないのでパペット疑惑がある)からなるザ・プーチンズは、はたしてどんなフェスを実現させる気なのか? それを確かめるべくメイン会場のRock Joint GBに向かった。


(参考:POPこそがBiSの直系にして本流だーーカミヤサキ活動休止発表のUNITワンマンを観た


 開演と同時に現れたザ・プーチンズの街角マチコと街角マチオは、「主催者でーす」と唐突にふたりで歌って挨拶。


 続いて「全日本テルミンフェス」の名誉会長であるラーメンズの片桐仁が登場。30年前に書いたという作文「将来の夢」を朗読すると、最後は「テルミン弾きになりたい」と書かれており、片桐仁は「夢破れてお笑い芸人になりました」と笑わせた。さらに夫人も登場し、片桐仁がマトリョミン(マトリョーシカ型テルミン)、夫人がテルミンで演奏したのは、フォルクローレの「コンドルは飛んでいく」。「全日本テルミンフェス」は、ロシアと南米が日本で接続された開会宣言とともに幕を開けた。


 ザ・プーチンズの川島さる太郎(やはりパペットに見える)がスクリーンに登場し、オムトン&佐藤沙恵を紹介。「まぁ佐藤沙恵は街角マチコさんなんですけどね」とバラした後に、彼女たちの演奏がスタートした。佐藤沙恵は、日本を代表するテルミン奏者・竹内正実に師事したテルミン奏者だ。片桐仁夫妻との出会いも、カルチャーセンターでの佐藤沙恵のテルミン教室だったという。オムトン&佐藤沙恵は、テルミン、マリンバ、キーボード/トライアングル、ドラムという編成。クラシックや現代音楽、ときにラウンジ・ミュージックも横断しながら躍動感のある演奏を聴かせた。さらに「テルミン音頭」、そして竹内正実による穏やかで美しい楽曲と、対照的な2曲も続けて演奏してみせた。最後はオムトンのふたりがマリンバを連弾。


 yes, mama ok?は、5人編成で登場。ヴォーカルとギターの金剛地武志のほか、べース、ドラム、コーラスふたりという編成。ドラムはスカートの澤部渡だ。街角マチオからの推薦文の要旨は、「yes, mama ok?は渋谷系のレジェンドです。聴く者を20年前の渋谷に連れ去ります。しかし今が2015年と気づくと、聴く者を涙させるのです」というもの。yes, mama ok?による力強いロック・ナンバーやポップ・ナンバーは、まさに2015年を生きるフィジカルな演奏だった。MCで「テルミン奏者はいないけどね」と言っていると、「電波さん」と呼ばれる女性テルミン奏者が銀のマントをまとってステージに登場。ボサノヴァの楽曲とミディアム・ナンバーで響くテルミンは艶やかだった。最後は3ピースのみによるバラードの演奏。金剛地武志の伸びの良い歌声による熱唱で締めくくった。


 濱田佳奈子によるテルミン公開レッスンでは、天井に頭をぶつけつつウサビッチの「プーチン」が生徒として現れた。着ぐるみの手なのに、いきなり音階を練習させられ、さらに楽曲の演奏までこなした。ウサビッチの中に入っているのは街角マチコなのではないか……と邪推したほどだ。


 そして、日本を代表するテルミン奏者である竹内正実のステージ。フロアにもテルミン愛好家が集まり、登場前から驚くほどの熱気を感じさせた。この日はテルミン合奏として、まず2台のテルミンとキーボードにより演奏が行われた。1曲ごとに奏者たちが深く一礼すると、テルミン奏者は次第に増えていき、テルミンのハーモニーはさらに厚くなっていく。最終的には、計6台に増えたテルミンとキーボードが演奏。格調高くも、テルミン独特の音の揺らぎは聴く者の心を穏やかにさせないものがあった。またMCでは、佐藤沙恵が主宰するテルミン教室「テルミン大学」のテーマが重奏ということで、10人ほどで一斉に同じMCを言うというユーモラスな演出もあった。


 藤岡みなみ&ザ・モローンズは、ヒロヒロヤのシンセベースを街角マチオが絶賛する推薦文が読みあげられてからスタート。藤岡みなみを含むギター2人、シンセベース、ドラムという4人編成によるステージだ。ガレージ・パンクすら連想させるネロのギターも刺激的だった。そしてコーラスワークも安定している。ギターをおろしてハンドマイクのみでラップをする藤岡みなみもキュートだ。MCでは藤岡みなみが、世界で一番日本にテルミン奏者が多いことに触れつつ、「なんで(このフェスに)呼ばれたんだろうね?」と話す。そして、テルミンがないともう限界だということで、藤岡みなみがステージ上に置かれていた「スーパー電波くん人形」を手に。「スーパー電波くん人形」とは、テルミンがいないバンドでもテルミン奏者を呼べるという人形だ。すると、銀のマントをはおったテルミン奏者・クリテツが登場。藤岡みなみ&ザ・モローンズの演奏に、クリテツによるテルミンのソロも入ることになった。さらに藤岡みなみがテルミンを演奏するシーンも。最終的にクリテツとは3曲も共演した。


 大トリのザ・プーチンズの前のDJは、谷地村啓が担当。ザ・プーチンズの配信シングル「恋愛契約書」のサウンド・プロデューサーだ。いきなりフリッパーズ・ギターで始まり、氷川きよし、小田和正、山下達郎、木村カエラなどをテクニカルにノンストップで流していくDJだった。


 そして大トリは主催者のザ・プーチンズ。スクリーンの川島さる太郎が「ここで帰ってもいいんですよ?」と紹介した後に、ザ・プーチンズのライブは始まった。ステージには街角マチコしかおらず、重低音の響くトラックに合わせてテルミンを弾いていると、DJブースからサングラス姿の街角マチオが現れた。大雑把すぎるDJのイメージだ……。さらに「母さん、俺、主催するイベントでDJするんだ、登りつめたぜ……!」という母親へのメッセージが延々と流れされた。


 そして、「セイッ! 全日本! テルミンフェス!」のコール&レスポンスをしているうちに、不可解なほどの盛りあがりに。さらに、街角マチオが「僕のベイビー!」と狙いを定めた、何の罪もないファンをステージに上げ、ヘッドフォンを着けさせると、街角マチコの声で「DJにナンパされてるー、母さん、私登りつめたわ、しかも片桐仁さんの全日本テルミンフェス! サブカル好きで良かったわー」など、ステージに上げられた当事者の意向を完全に無視した音声が流された。ひどい……。しかし、このファンを巻き込んだ強引さこそザ・プーチンズのステージの真骨頂だ。


 会場の照明を自分たちで暗くしておいて「この世は闇だ」と嘆きつつ、「でも電波があれば大丈夫」と「デンパデンパ」の演奏を始めると、ふたりは暗闇の中で光るサングラスをつけて一気にEDM感を増していた。そう、本人たちの意向とは無関係に、テルミンとEDMがうっかり接続されてしまったのだ。さらに、街角マチオが大好きな中◯ヤ◯タ◯が枕元に立って提供してくれたというエレクトロ・ナンバー「ナニコレ」へ。この楽曲は、この設定でいつまでやれるのだろうか……。しかも、「ナニコレ」では街角マチコがステージを去ったので、もはやテルミンすら関係なかった。


 すると、「ナニコレ」が終わった瞬間に、大きなカツラをかぶった街角マチコが再登場し、「最後は私がひとりで締めたいと思います」と街角マチオをステージから排除。そして、12月のアルバム・リリース、年末のワンマンライブを発表した。最後はクールジャパンを意識したという「すしてるみん」。寿司とテルミンというクールジャパンすぎる組み合わせに、フロアの外国人たちがヒートアップしたのも必然だった。すると、街角マチオをはじめとする寿司に扮した男たちが登場し、さらには巨大な獅子舞も登場。会場から「ソイヤッ! ソイヤッ!」というお囃子が起きる中、獅子舞に頭から食われていく街角マチオ……。いつの間にか、やはり全身タイツの澤部渡がドラムを叩いていた。ドラッグを摂取して見た幻覚のようなステージを展開しながら、ザ・プーチンズのライブは終了した。


 寿司に興奮したファンの激しいアンコールに応え、再びスクリーンが上がると、脚立の上には全身タイツの街角マチオが倒れていた。「俺たちの作った『全日本テルミンフェス』が、こんな全身タイツで終わるなんて……痛い……共演者の視線が痛い……」というモノローグから奮起しての「シンデレラ」では、「玄米! 白米! 五穀米!」という米に執着したコール&レスポンスを起こし、ライブは幕を閉じた。


 楽器をメインにしたイベント自体は珍しくないだろうが、一般的な知名度はまだまだ低いテルミンを軸としながらも、チケットがソールド・アウトするほど多くの人々を集めることに成功した「全日本テルミンフェス」。テルミンとは関係ないアーティストが出演したり、そもそも当のザ・プーチンズですらテルミンを使わない楽曲があったりと、大胆なスタイルのフェスだった。そうした点も含めて、テルミンという楽器を普及させるための新たな方法論をザ・プーチンズが実践してみせた一大イベントだったと言えるだろう。(宗像明将)


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  • 仁さんと友達になれるなら私もテルミン習う!!このド田舎でテルミン習えるカルチャーセンターはどこですか?
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