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大阪府八尾市の市立大正中学校の運動会で9月下旬、1年から3年の男子生徒157人が参加した「組体操」の人間ピラミッドが崩れて、1年の男子生徒が骨折し、ほかの生徒5人が軽いケガを負う事故が起きた。ピラミッドは10段もあったという。
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報道によると、この中学校では2013年と2014年にも、運動会当日や練習中に「組体操」に参加した生徒計6人が骨折する事故が起きていた。校長は「ケガへの認識が甘かった。リスクの高い技に挑戦させてしまったことは、判断が誤っていたと反省している」と話したという。
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今回のように、生徒が四つんばいで積み重なって作る人間ピラミッドをはじめとして、学校の「組み体操」では、生徒がケガをする事故があいついで起きている。こうした事故が起きた場合、学校の法的責任はどうなるのか。西口竜司弁護士に聞いた。
「まずは、この事故でケガをされた生徒さんの回復を祈るばかりです」
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西口弁護士はこう話し始めた。今回のような事故が起きた場合、学校はどんな責任を負うのだろうか。
「学校の責任としては、大きくわけて、民事責任と刑事責任が考えられます。民事責任については、教員の『過失』の有無がポイントとなってきます。
今回の中学校では、昨年も一昨年も事故が起きているようですので、組体操の人間ピラミッドが崩れることについては、『予見可能性』があるといえます。教員は事故が発生しないように注意すべきだったので、注意義務もあります。
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したがって、学校が、事故が起きないようにするための注意義務を怠っていたならば、『過失』が認められる可能性があります。
なお、事故が起きたのは市立中学校ですので、国家賠償法が適用されて、教員個人ではなく学校側が、ケガをした生徒に対する損害賠償責任を負うことになります」
では、刑事責任はどうなるのだろうか。
「まず、刑事責任については、組体操を指導した教師や校長など、教員個人の責任が問題となります。そして、教員が業務上必要な注意を怠って、生徒をケガさせた場合、『業務上過失致傷罪』が成立します。こちらも『過失』が認められるかどうかが、ポイントとなります」
今回のケースで、「過失」は認められるのだろうか。
「これまで何度もメディアなどで、組体操のピラミッドの危険性が指摘されています。ピラミッドが危険である以上、教員は注意すべきでしたし、また必要以上に高いピラミッドにすべきではなかったと思います。
したがって、教員が必要な注意を怠ったとして、『業務上過失致傷罪』が成立する可能性はあるでしょう。ただ、一般的に、過失事故の場合、民事責任に比べ、刑事責任は認められるかどうかのハードルが高くなっているのが現状です。
学校生活に事故はつきものかもしれません。実際、私自身もスポーツ中に何度もケガをしました。しかし、事故が起こってからでは、取り返しがつかないこともあります。生徒の安全第一を考えて、運動会の種目編成をしてもらいたいと思います」
西口弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/
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