デルがIT史上最高額でEMCを買う狙い

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2015年10月13日 16:51  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

 パソコンメーカーのデルは、大量のデータを扱うためのデータストレージ・メーカー、EMCを670億ドルで買収することで同意した。IT業界史上最大の買収だ。


 デルのCEOマイケル・デルはEMCの会長に就任し、世界最大の統合型IT企業を創設することになる。


 ビジネス専門チャンネルCNBCによると、IT業界の買収におけるこれまでの最高額は、アメリカの半導体メーカー、アバゴ・テクノロジーが今年5月にライバル企業のブロードコムに提示した370億ドル。だが、アバゴとブロードコムの交渉はまだ最終合意に至っていない。


 デルは2015年の7〜9月期、1,010万台以上のパソコンを出荷し、レノボとヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ世界第3位になった。しかし、パソコン需要の縮小で、2015年4〜6月期の出荷台数は9.5%減少し、ほぼ2年ぶりに大きく落ち込んだ。


法人向けソリューションへ進出


 当然のことながらデルは、新分野への進出を狙っていた。その点、EMCはデータストレージで19.2%のシェアを握る世界のリーディング企業。傘下には、クラウドと仮想化サービスに特化した子会社ヴイエムウェアもある。


 今回の買収で新会社は「法人向けソリューションの一大勢力」になる、とデルは言う。「次世代IT市場で最も重要な分野で成長が狙える」


 今回の買収には、いわゆる「ゴーショップ(Go-shop)」条項が含まれている。この条項は、EMCが他社からの買収提案を検討して他社との取引がまとまった場合に、デルに違約金を支払うというもの。だが対抗案が出る可能性は低い、とロイターは報じている。


 米市場調査のテクノロジービジネスリサーチ調査部のバイスプレジデント、スチュアート・ウィリアムズは、今回の買収は「IT業界の巨大企業2社」がさらなるスケールメリットを求めて統合する一例であり、デルがより広い市場で勝負できるようにするためのものだという。「デルは小企業から中堅企業にかけて非常に強く、EMCは大企業に強い」と、ウィリアムズは言う。


 IT産業の分析を行う調査会社フォレスターリサーチでリサーチディレクターを務めるグレン・オドネルは、今回の買収が確認される以前から、EMCの買収によって、デルは統合型IT分野の重要なプレイヤーになるだろうと述べていた。サーバーからストレージ、端末やソフトウエアまでを一括して提供するサービスだ。


「デルとEMCの合併は、HPにとって深刻な脅威となるだろう。デルの大きな弱点はストレージ部門だったが、EMCと結びつくと、HPやシスコシステムズ、IBM、あるいは最近成長著しい華為技術(ファーウェイ)と競うために必要な、フルラインの製品ポートフォリオをもつことになる」




コナー・ギャフィー


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