超音波を利用!MITが薬物吸収を早める新テクノロジーを開発

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2015年10月28日 10:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

またひとつ最先端の技術によって、医療の可能性が拡大し、患者にとってよりストレスのない治療が実現することになるのかもしれない。先日マサチューセッツ工科大学の研究者らが、「超音波」を用いて胃腸管の患部へと素早く薬を届ける方法を発表した。このアプローチは潰瘍性大腸炎や炎症性腸疾患といった、胃腸の病気に苦しむ人への薬物投与を容易にするという。

課題解決のため吸収スピードが速い方法を模索

論文は10月に刊行された、学術専門誌『Science Translational Medicine』誌に掲載された。論文の筆者のひとりで、MITにあるがん専門の研究施設Koch Institute for Integrative Cancer Researchの研究員であるGiovanni Traverso氏は「私たちは薬の投与の仕方を変えたのではない。私たちが変えたのは、処方のために(器具が体内に)とどまる必要のある時間だ」と話している。

現時点では、さきほど例示したような胃腸系の疾患の治療には、浣腸が用いられるのが一般的だ。薬が吸収されるためには何時間も浣腸器を維持しなければならないが、当然のことながら軟便・下痢を伴う患者にとって非常に難しいと言える。こうした課題を乗り越えるために、研究チームはもっと吸収スピードが速い方法を模索し続けたという。そうしてたどり着いたのが今回の発表は、治療や研究技術の改善を可能にするなど、臨床面でも研究面でも非常に価値があるそうだ。

「空洞現象」が薬物伝達の質を高める

論文の筆者のひとり、Koch Instituteの教授・Robert Langer氏は、30年にわたり薬物伝達の質を高めるために超音波を利用する可能性を調査してきたという。1995年には『Science』誌で、超音波が肌を通して薬を伝達することを報告したが、今回まで胃腸管については研究がなされていなかった。

超音波は「空洞現象(キャビテーション)」として知られるメカニズムによって薬物伝達を改良する。空洞現象とは、液体の流れの中で圧力差によって空洞(泡)が発生する物理現象のことを指す。超音波の放射を受けた液体は極めて小さな泡を形成し、この泡が破裂し「マイクロジェット」と呼ばれる作用を生むことで組織内へと通り抜け薬物を押し込むという仕組みなのだ。

すでにマウスやブタを対象に実施した実験では、超音波によって吸収速度が高まり、大腸炎の治療に効果があるという結果が出ているという。

このアプローチが最初のターゲットとしているのは胃腸の炎症系疾患だが、結腸癌や胃腸管の感染症にも用いられる可能性があるという。現在、研究チームはいくつかの追加テストを行い、超音波機器を最適化するなど人間にテストする準備を進めているとのことだ。今後の研究の発展と、現場での応用を待ちたいところだ。

http://news.mit.edu/2015/ultrasound-drug-delivery-inflammatory-bowel-disease-1021

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