神奈川県横須賀市で、倒壊の恐れがある所有者不明の「空き家」を行政代執行で取り壊す作業が始まった。今年5月に全面施行された「空き家対策特別措置法」に基づく措置で、特措法に基づく取り壊しは全国初とみられる。
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日本経済新聞の報道によれば、2012年10月、周辺住民から「屋根が落ちてきそうで危険だ」などの苦情が寄せられ、外壁も含めて倒壊の恐れがあったことから「特定空き家」と判断したそうだ。
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「特定空き家」とはどのような状況をさすのだろうか。また今後、このような取り壊しは増えていくのだろうか。NPO法人「京都町並み保存協議会」代表理事で、空き家問題に取り組んでいる中島宏樹弁護士に聞いた。
中島弁護士によれば「特定空き家」とは、次のような特定の状態にある空き家を指す。
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・(そのまま放置すれば)倒壊等、著しく保安上危険となるおそれがある
・(そのまま放置すれば)著しく衛生上有害となるおそれがある
・適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている
・その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切
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具体的には「屋根が抜けている、ゴミが不法投棄されている、庭木が伸び放題で隣地にはみ出している空き家」などがあげられると、中島弁護士は指摘する。
「特定空き家については、順次、改善の助言や指導、勧告、命令がなされ、それでも改善されない場合は、行政代執行の方法により強制的に解体がなされます。その際の費用は、最終的には所有者負担となります」
今回の取り壊しの根拠となった「空き家対策特別措置法」について、中島弁護士はどのように評価しているのだろうか。
「全国各地で制定されていた空き家条例を法律化し、国として、空き家問題の解消に向けた積極的な姿勢を明らかにしたところに意義があります。
2013年の時点で、全国で820万戸が空き家となっており、空き家率は13.5%にも上っています。しかも、今がピークではありません。一説によると、2033年には、空き家率は30%以上になるとも指摘されています。
空き家率が右肩上がりの現状においては、横須賀市の物件と同様に、行政が強制的に解体に踏み切らざるを得ない物件は増加していくものと思われます」
さらに中島弁護士は、これまで空き家問題に取り組んできた経験から「解体だけでは問題は解決しない」とも指摘する。
「空き家問題の解消は、空き家を取り壊すところにあるのではなく、空き家を有効活用するところにあると考えます。
新築着工件数が高水準で推移している反面、空き家の活用は経済的理由などにより思うように進んでいません。こうした現状を踏まえると、空き家の改修、空き家の売買、空き家の賃貸などについての公的補助を充実していくことが求められると思います」
空き家問題については、多角的なアプローチが求められている。
(弁護士ドットコムニュース)
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