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大掃除に追われ、帰省先の義実家でも気が休まらない思いをしているのに、気がつけば夫はスマホを片手にリラックス中ーー。そんな家庭は珍しくなさそうですが、スマホ中毒も行き過ぎれば、その配偶者は、離婚を考えるまで追い詰められることもあるようです。
弁護士ドットコムの法律相談に、「食事中も、風呂に入っても、トイレの中でも手放さない」ほどの「スマホ中毒」の夫をもつ妻から相談が寄せられました。
「二人でいるときも、常にスマホの画面ばかり眺めていて、共同生活をする意味がわからなくなってきました」といい、放置される虚しさから離婚を考えているそうです。
妻は、夫の「スマホ中毒」を理由に離婚できるのか。峯岸孝浩弁護士に詳細な解説をしていただきました。
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A. スマホだけでは理由として認められない
裁判で離婚が認められるためには、民法770条1項で定められた次の5つの「離婚原因」のいずれかに該当する必要があります。
(1)不貞行為
(2)悪意の遺棄
(3)3年以上の生死不明
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(4)強度の精神病で回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由
スマホを眺めてばかりの夫は、まず、(1)(3)(4)は該当しないでしょう。
また、(2)の「悪意の遺棄」とは、夫婦の同居義務や扶助義務を一方的に放棄することですが、夫はご相談者と同居はしていますし、生活費を渡さないというわけでもないようですので、該当しないでしょう。
可能性があるとすれば、(5)「その他婚姻を継続し難い重大な事由」ですね。
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具体的には、暴力や虐待がある、性交できない、異常な性癖がある、親族と仲が悪い、浪費癖がある、性格の不一致など、さまざまな要因があります。
ご相談者の夫は、夫婦の会話よりもスマホが大好きなようなので、該当する可能性があるとすれば「性格の不一致」でしょう。
これは夫か妻の一方が「性格があわない」と考えれば、離婚できるということではありません。なぜなら、性格が合わないとしても、夫婦の努力により円満な関係を築ける可能性があるからです。
性格が合わないことに加えて、別の事情がないと「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められることは厳しいでしょう。
ご相談者のケースでは、夫はスマホの操作ばかりして会話をしないとのことですから、ご相談者が不満を感じるのは当然です。
しかしながら、夫は、不倫をしたわけでも、暴力をふるったわけでもありません。適当に相槌を打ってはいますが、積極的に無視をしているわけでもないようです。
したがって、現時点での状況では、裁判所が離婚を認めてくれるほどの「性格の不一致」に該当するとまではいえず、裁判所が離婚理由として認める可能性は低いと思います。
ご相談者が本当に離婚したいのであれば、別居をするなど、他の事情が必要でしょう。別居に踏み切れないのであれば、夫と真剣に話し合うことにより円満な夫婦関係を築けるよう、こころみたほうがよいかもしれません。
【取材協力弁護士】
峯岸 孝浩(みねぎし・たかひろ)弁護士
埼玉弁護士会所属。武蔵浦和法律事務所代表。平成27年度埼玉弁護士会執行部 調査局顧問。市民の相談から地元企業の相談まで幅広く対応し、地域に密着した活動を続け日々奮闘中。
事務所名:武蔵浦和法律事務所
事務所URL:http://www.msu-law.com/
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