免許を手放さない「81歳姑」どうしたら運転を止めさせられる? 【小町の法律相談】

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2016年01月15日 07:51  弁護士ドットコム

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「今月81歳で、免許証更新をした姑。正直、事故を心配しています」ーー。そんな書き出しで、YomiuriOnline「小町の法律相談」に、嫁の立場のトピ主から相談がよせられました。


トピ主の心配は「本人もですが、万一他人様をはねたら」という点です。「任意保険に加入していますが、75歳以上の高齢者は対人賠償3000万まで」。そこで、働き盛りの世代をはねて「3000万円以上の補償が必要な事故をおこした場合」、支払い能力がない姑にかわり、同居の家族や血縁者に支払い義務が生じるのか、と悩んでいる様子です。


姑は家族が何を言っても、聞く耳をもちません。


レスには、近親者や知人が高齢者の車にはねられたという方からの実体験が複数寄せられました。知人が80代の高齢女性の車にはねられ、重度の後遺症が残ったという方からは「(知人は)まだ、50代。この先の30年の生活を加害者とその家族が償うのは当然です」とも。


いっぽう、同じような悩みをもつ方から、「全く同じ思いをしています。87歳の舅が、運転をやめません」、「本当に皆どうしてるんでしょう、この問題」の共感の声も寄せられました。


皆さん、高齢の親世代を説得するのに、大変な苦労をしているようです。老いた親の運転をやめさせるため、どんな説得が効果的なのでしょうか。


高橋 裕也弁護士に聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「80代姑の車の運転が心配です」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/1029/737249.htm)


A. 高橋弁護士の回答「家族が損害賠償責任を負う可能性も」


道路交通法103条では、「認知症であることが判明したとき」には免許の取消し、免許の効力の停止ができるとされています。


現行の制度では、75歳以上で免許を更新する場合には「認知機能検査」を受けることとされています。しかし「認知症の恐れがある」と判定されても、過去に特定の違反行為がなければ医師の診断を受ける必要がなく、認知症が見過ごされて免許証の更新が行われる可能性があります。


改正道路交通法(平成27年6月11日成立)では、「認知症の恐れがある」と判定されると医師の診断が義務づけられることになり、認知症の高齢者が自動車の運転を続けることのないよう法改正が行われています(現時点ではまだ施行されていません)。


では、どのように「運転を止めて欲しい」と、説得ができるのでしょうか。


認知症の高齢者の運転による交通事故が大きな問題になっており、頻繁に法改正が行われるなど、社会全体がこの問題に取り組んでいるのです。高齢の親に対しても、こうした法改正の動きを説明することは、「自分だけの問題ではない」との理解につながり、説得材料となるのではないかと考えます。


また、親が交通事故の加害者となった場合、家族が損害賠償責任を負う可能性があります。


まず、親が家族の所有する自動車を運転しているのであれば、家族が「運行供用者責任」により損害賠償責任を負うことが考えられます。


遠方で暮らしている子どもでも、「運行供用者責任」により高額の賠償責任を負わされる可能性があるのです。


また、親が認知症等で責任能力がない(民法713条)とされた場合に、同居する家族が民法714条1項により監督義務者として責任を追及される可能性があります。


例えば、親が認知症で運転を繰り返しているのを知りながら、特に対応をせずに放置していたということであれば、同居する家族が監督義務を果たしていなかったとして民法714条1項により損害賠償責任を負う可能性があるといえます。


認知症の男性が徘徊し線路内に侵入した列車事故で、同居する妻に民法714条1項の責任を認めた名古屋高裁の判決がありますが(最高裁で判断が変更される可能性があります)、認知症で運転を繰り返していたということであれば、同居の家族に責任が認められる可能性は高いといえます。


高齢者に自動車の運転をしないよう説得するのは難しいですし、多くの方が悩まれている問題でもあります。


しかし、事故を起こすと家族も損害賠償責任を負う可能性があり、被害者だけでなく家族の生活も破壊しかねないことを説明することも、説得材料の一つになるのではないかと考えます。


なお、対人賠償金額3000万円の保険というのは余りに不安ですので、運転中止の説得が難しいようであれば、早急に対人賠償無制限の保険に加入させるべきです。




【取材協力弁護士】
高橋 裕也(たかはし・ゆうや)弁護士
京都大学卒。平成19年に弁護士登録。大阪弁護士会交通事故委員会に所属。交通事故事件を中心として弁護士業務を行っております。
自転車事故にも力を入れており、自転車事故の専門サイトを開設いたしました(http://jitenshajiko-sodan.com/)。

事務所名:西宮原法律事務所
事務所URL:http://nishimiyahara-law.com/


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  • 両手首から先を切り落とす。のは、舌切り雀みたいで残酷だから、お抱えの運転手付きのリムジンをプレゼントする。
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