長女はパパっ子、次女はママっ子…熾烈な争いの末に「親権がバラバラ」になる可能性は?

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2016年03月10日 06:52  弁護士ドットコム

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子どものいる夫婦が離婚する際に、大きな問題になるのが「親権」です。


両親がともに親権を希望した場合、複数の子どもがいる家庭では、時に子どもの親権を分けるという選択肢が浮上することもあるようです。


弁護士ドットコムの法律相談には、「五歳の長女はパパっ子、三歳の次女はママっ子です」という方から「スムーズな離婚のためにも親権をバラバラにすべきですか?」という相談が寄せられました。父母が親権を希望しており、離婚の話が進まなくなっているそうです。そこで、生活をはやく安定させるためにも、親権を分けた方が良いのではないかと考えています。


親権を分けることは可能なのでしょうか? 大熊 裕司弁護士に詳細な解説をしていただきました。


A. 夫婦で合意すればバラバラもOK。裁判離婚では、通常認められません


親権を決める際は、父母の話し合いか、もしくは調停、家庭裁判所で行われる離婚訴訟で決めることになります。


父母が合意すれば、兄弟姉妹で親権をバラバラにすることができます。一方、離婚訴訟で親権を決める場合は、家庭裁判所が兄弟姉妹でバラバラに親権を指定することは通常ありません。兄弟姉妹はともに成長するのが好ましいと考えられているからです(「きょうだい不分離の原則」)。しかし、父母の別居中から別々に育てられ、その監護状況に問題がなかったといえるような場合は、親権者が別々に指定されることはあります。


親権をめぐっては、離婚の際、父母間で熾烈な争いが繰り広げられることが少なくありません。親権をバラバラにし、父母それぞれが親権を持つ形が実現することで、お互いに非難応酬が繰り広げられる離婚裁判を回避できるでしょう。


ただし、デメリットも忘れてはいけません。父母の対立が激しい場合、兄弟姉妹の交流も自由にできなくなります。また、生活環境が異なる場合は、成長と共に、兄弟とは思えないほどの価値観の違いが生じることも考えられます。


「兄弟姉妹どうしで面会交流をすればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし面会交流はあくまでも、親子間の交流を前提とした取決めです。法律上、兄弟姉妹同士で面会交流を求めることは想定されていません。


しかし、健やかに成長するためには、親子間だけではなく、離れて暮らす兄弟姉妹との交流も大事です。夫婦間での暴力や子への虐待など特別な事情がない限りは、できるだけ自由な形の面会ルールが望ましいでしょう。


ご相談者のようなケースでは、離婚訴訟で親権者を決定する場合、「きょうだい不分離の原則」から、父母が親権を分け合うという結論にはならない可能性が高いです。


しかし、親権を取るのが難しい事案の場合、可能であれば夫婦間の話し合いで親権を決めて協議離婚をする方向で考えてみてはいかがでしょうか。仮に、夫婦間の話し合いが整わない場合でも、面会交流について、「兄弟姉妹同士の面会交流を認めてほしい」などと相手方に譲歩を求めることもあり得るとは思います。




【取材協力弁護士】
大熊 裕司(おおくま・ゆうじ)弁護士
第一東京弁護士会所属弁護士。家事事件、消費者問題、知的財産関係、インターネット問題(ネット上の名誉毀損、誹謗中傷対策など)を中心に扱っている。
事務所名:虎ノ門法律特許事務所
事務所URL:http://www.toranomon-law.jp/


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